八条学園騒動記
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第五百八十六話 服と見せかけてその十四
「確かに屑だな」
「そうよね」
「俺も今思った」
「私が言って」
「そう言うしかない、しかしそれでいて義理人情に篤くてだ」
「人間味はあったのね」
「そうだった」
実際にというのだ。
「あれでな」
「そうだったのね」
「だから確かに働かないで遊びと喧嘩ばかりの暮らしは屑だがな」
「人間としてはなのね」
「悪人ではなかったらしい」
「言うなら侠客か」
フックはここまで聞いて述べた。
「勝海舟の親父さんは」
「そうだったみたいだな」
「そういうことか、それでその人共俺達はだな」
「間違いなくな」
絶対にというのだ。
「何人か束になっても敵わない」
「そんな人か」
「俺達もな」
それこそというのだ。
「勝てなかった」
「そうなんだな」
「多分フォルスタッフ卿にもな」
彼にもというのだ。
「勝てなかった」
「あの人にもか」
「かなり太っているが」
「武芸は備わっていてか」
「やはり身体は頑丈だったからな」
それ故にというのだ。
「そうだ」
「そう思うと俺達は弱いんだな」
「体格はいいけれどな、だが栄養はな」
こちらはというのだ。
「いいからな」
「そうなんだな」
「ああ、その分は有利だ」
「栄養があるとその分動けるからな」
こう言ってだ、マチアはここでだった。
作業に移った、洗濯籠も動かしてその他のこともした。そうしてそのうえで開演までの最後の調整を済ませた。開演はあと数分を切った。
服と見せかけて 完
2020・9・2
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