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レーヴァティン

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第百七十七話 七尾城攻めその八

「食いに行く、そしてな」
「そうしてですね」
「善哉もだ、織田作之助を見に行く」
「どちらもあの人の縁のお店ですし」
「そうする」
「貴方は織田作之助もお好きですか」
「好きだ、ああした作風もだ」
 織田作之助のそれもというのだ、作家にはそれぞれの個性つまり作風があるものだが織田作之助も然りなのだ。
「好きだ」
「流れ流れてですね」
「最後は落ち着くそれがな」
「左様ですか」
「色々呼んできた、六白金星も競馬もな」
 どちらも織田作之助の作品である。
「そして夫婦善哉もな」
「代表作ですね」
「個人的にはニコ狆先生や猿飛佐助が好きだ」
「その二作は忍者ものですね」
「ニコ狆先生は放浪しないがな」
 織田作之助の作品の特徴である途中のそれがない、ただし煙草を吸うことであれこれ困って迷うことが精神的放浪かも知れない。
「面白いからな」
「お好きですね」
「文学は堅苦しく読むものではない」
 英雄はこうも言った。
「俺はそう思う」
「ではどうして読む」
 幸正もカレーを食べている、見ればお代わりをしている。
「一体」
「楽しんでだ」
 英雄は幸正に答えた。
「そうしてだ」
「読むものか」
「夫婦善哉も恋愛小説だな」
「頼りない男としっかりした女のな」
「そう読めばいい、織田作之助は大衆娯楽だ」
「そうなるか」
「森鴎外の雁は恋愛小説だ」
 それになるというのだ。
「武者小路実篤の作品の多くもだ」
「恋愛小説か」
「俺は谷崎潤一郎の作品の多くもそうだとみなしている」
 この作家の作品もというのだ。
「卍にしてもな」
「人妻の同性愛の作品だな」
「それもだ」
 カレーを食べつつ話す、シーフードカレーである為かルーの色が濃い。そしてシーフードは実は然程煮込まれていない。
「恋愛だな」
「何かと複雑な、だな」
「別に堅苦しいことはない」
 文学はというのだ。
「夏目漱石も恋愛小説が多いのではないか」
「月が奇麗ですねはアイラブユーか」
「そうした言葉も作ったしな」
「成程な、面白い考えだな」
「それで俺は文学はな」
「楽しんで読んでいるか」
「最近は泉鏡花をよく読むが」
 妖怪をよく出すことで有名な作家だ、尚個人としてはかなりの潔癖症で食事は常に火をよく通していた。
「あれはファンタジーだ」
「言われてみればそうでござるな」
 智は英雄の泉鏡花論に頷いた。
「泉鏡花は」
「そうだな」
「荒野聖にしても」
 代表作のこの作品もというのだ。
「そして天守物語も」
「人と異形の者の恋愛でもあってな」
「ファンタジーでござる」
「そうだ、学校の授業で使われていても」
「堅苦しくなくでござるな」
「読めばいい、芥川も中島敦もファンタジーが多い」
 そう呼ばれる作風の作品がというのだ。 
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