あつまれおおかみたちの森 ~南の島に流れ着いた俺が可愛いどうぶつたちとまったりスローライフを目指す話~
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地図を広げてみてみよう!(10/25追加)
前書き
船でたどり着いたなぞの島。トレバーは探検に、俺は船でお留守番。たぬきちからもらった地図なんかを眺めてみるのもこれはこれでおもしろいぞ!
島につく。良い具合に泊めれそうな地形があったのでそこで錨を降ろす。
「おい!しっかり見張っとけよジャップ!今度、船を沈めたらタダじゃおかねぇからな!」
コンテナの上でトレバーが怒鳴り散らすと、たぬきちから預かったザックを背負って船から降りて行った。
「人手を集めてこい」
とあの狸は言った。
運ぶ船を俺が動かすことになりその準備をしている間に、その「集め方」を教え、使う道具は全部トレバーに渡したらしい。ということで「人手集め」は全部トレバーに任せることにして、その間俺は船で待機である。
この待機中に出発前にたぬきちからもらったいくつかの紙の資料を広げる。その中にこの近海の地図があった。広げて船室の壁の掲示板に貼ってみる。それは辺り一帯の海域の様子を記したものと思われる。数十個近くの島が並んでいる。ただし、この島々が世界地図でいうところのどこなのか、判断できる手掛かりがない。フィリピン、ベトナムあたりのどこかの半島が少しでも載っていれば良かったのだがそれも無く、全くの青い海の中に島々が並んでいるだけというものだった。さらに奇妙なことに、載っている島の形が全て四角である。さらにその四角の島の並び方も恐ろしく規則的である。縦5、横5の計25個の四角が綺麗に等間隔で配置されている。これは絶対適当に書いた地図だよなぁ?と、その時は思った。
「人工島?」
ふと頭の中でそんなことがよぎった。南の海のど真ん中に四角く土を盛って、それを並べたということか?が、まぁその作業を考えると・・・凄い労力だ。コストも恐ろしくかかる。そして何より目的が分からない。やっぱりこの地図は大部雑に書いた絵じゃないかと思う。
さてもう一枚渡された紙の資料があった。これも広げてみる。こちらについて俺は何も知らないが、トレバーが出発前にたぬきちに二言三言、説明を受けていたようだ。広げてみるとそれはポスターと言って良いような大きさのもので、それを縦にして掲示板に貼ってみる。そこに書かれているものは・・・大きな三角。ポスター目いっぱいのサイズの三角がまずあって、その三角の中に横線が一定間隔で引かれている。そしてその横線で分けられたスペースに、動物たち顔の絵がいくつも書かれていた。
「ピラミッド?」
俺はぽつりと呟いた。これひょっとすると「ピラミッド型」の身分的な何かを表現している図ではないかとその時考えた。仮にそんな意味合いだとして、もう少ししっかり見てみる。そのピラミッドは8つ程の階層に分かれていて、確かに下の方が動物の数が多く、上に行く程少ない。全体で300から400位の顔がポスターに書かれているのだが、最上階に至っては20匹くらいしか描かれていない。
「あれ、コイツ」
その時、そのてっぺんのグループの中に眼鏡をかけた猫の絵があることに気づいた。昨日トレバーが勢い余って息の根を止めた一匹に、そんな奴がいたことをふと思い出した。瞬間、俺の頭にふとよぎる。
「あれは殺っちゃ不味い奴だった?」
何がどう不味いのか、今更不味いも何もないんじゃなかろうか。色々突っ込みどころはあるのだが、その時俺はそんなことを思った。ところがこの「不味い」ってのが自分で言っておきながら今一しっくりこないのだ。つまり、確かに殺しちゃ不味いんだろうが、じゃあそれは何故だ?と考えると答えが出てこないのだ。このピラミッドの上に行くほどエラくなる?いや見た感じあの眼鏡の猫が他のヤツより立場が上という感じはしなかったぞ。それにそもそも家自体が皆均等なサイズに出来ているあの村で、住んでいる連中の間に上下関係があるとも考えられない。どうも立場だの身分だのということではなさそうだ。となると能力の差か?しかしあの動物の連中にそれぞれ能力的な個体差があるとも思えない。みんな似た様なヨタヨタ走り、それほど知能があるとも思えない話し方。全員低いところでフラットだったような気がする。するとこのピラミッドは能力の序列ということでもないようだ。さらにこの表をよく見ると、ピラミッドの中くらいの階級でも似た様な猫がいる。さらにその下の方にもいる。動物の種類ごとに優劣があるというわけでもないらしい。
じゃあいよいよこれは何の序列なのだと考える。考えて俺の頭に一つの仮説がポンと出てきた。
「人身売買」
ふと、昔マレーシアへ密輸の仕事で行ったときのことを思い出した。そこで知り合った売春のブローカーの事務所を訪ねた時に似た様なものをそこで見た。その事務所で抱えていた売春婦は50人ほどいたと思うが、そいつらの名前がその事務所の壁にピラミッド状に貼られていたのだ。容姿、スタイル、年齢、病気の経歴、宗教的な縛りの有無。ブローカーに聞いたらそんなことを基準に、いわゆる上玉が一番上に来るように並べているのだという。当然、上に行けば行くほど、一晩を共にする客が支払う金も高くなる。よってブローカーのやることは極力ピラミッドの上に行けるような女をタダか安く捕まえてきて、そしてそれを高く売るということになる。今の俺には目の前のポスターに書かれた動物どもの優劣というものが何なのかわからない。しかし恐らくはこのブローカーの話と似た様な感じの物差しがあって、それで分けているということなのかもしれない。いずれにしろ禄でもない話ではあるが・・・。ただそうだとするとあの眼鏡の猫は相当高価な「商品」だったということになりそれを亡き者にしてしまった今、その埋め合わせとなるとこれは相当手間のかかりそうな話だなぁと思った。
まぁ、細かいことは戻ったらあの狸に聞けばいいかと考え、椅子にドカッと腰を下ろす。辛うじて手許にまだ残っていたタバコに火をつける。
二口吸ったところで、遠くからトレバーの声が聞こえた。
「帰ったぞぉ、コラぁ!」
船室からこの怒鳴るアメリカ人を遠目に見る。手にロープをもって何かを引きずって船まで戻ってきたようだ。操舵室から外に出て、タラップに向かいトレバーが引っ張ってきたものを見に行く。
近づいてロープの先に目をやる。
そこには殺したはずの例の眼鏡の猫がいた。
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