犬への思いやり
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第一章
犬への思いやり
シフォンはゴールデンレッドリバーの雌犬だ、東崎家に来て六年経つ。家の娘である里奈より一歳上なので彼女からしてみれば姉の様な存在だ。
里奈もそれがわかっていて黒髪を左右で赤いリボンで縛ってまとめたはっきりした大きな目という容姿で言うのだった。
「シフォンって私のお姉ちゃんなのよね」
「ああ、そうだぞ」
「シフォンも家族だからね」
父の元も母の美沙も笑顔で答えた、見れば父は茶色がかった髪の毛をスポーツ刈りにしていて細面で優しい顔立ちで背は一七〇程で痩せている。母は茶色がかった髪の毛を肩の長さでシャトーにしていて穏やかな顔立ちで一五九程の背でスタイルがいい。二人で国道沿いで電気店を経営している。売れ行きは結構以上によくて忙しい。
「里奈から見ればお姉ちゃんよ」
「そうなるな」
「そうよね、お姉ちゃんだから」
そのシフォンを見て言った。
「いつも私の傍にいてくれるのね」
「そうよ、だからね」
それでとだ、母は娘に話した。
「里奈もシフォンの傍にね」
「いてあげないと駄目ね」
「特にシフォンが困っている時はね」
その時はというのだ。
「絶対にね」
「傍にいてあげて」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「シフォンが困らない様にしてあげてね」
「わかったわ」
里奈は母の言葉ににこりと笑って答えた、そして実際にだった。
里奈はいつもシフォンの傍にいた、家にいる時はいつもそうしていた。シフォンは優しく穏やかでしかも賢い犬だったので里奈にも優しく接していた。
だがシフォンは気の弱い一面もあった、それで散歩の時にだ。
他の犬に吠えられるとすぐに怖がった、だがそんな時に。
里奈はシフォンと散歩の時もいつも一緒なので父や母がリードを曳いている彼女のところに来て触って言った。
「大丈夫よ、シフォン」
「クゥン?」
「私がいるからね」
触りつつ優しい声をかけるのだった。
「だからね」
「そうよ、シフォン」
この時は母がリードを持っていたがその母が言った。
「里奈がいるからね」
「私がいるからなのね」
「ええ、シフォンもね」
里奈にも言った。
「大丈夫よ」
「私が傍にいたら」
「そう、怖い犬に吠えられても」
それでもとだ、今度はシフォンに言った。
「里奈がいたらね」
「私がシフォンの傍にいるから」
「それで護ってあげているからね」
だからだというのだ。
「シフォンも大丈夫よ」
「シフォン、私がいるからね」
里奈はシフォンにまた優しい声をかけた。
「安心してね」
「ワン」
シフォンも頷いた、そうしてだった。
シフォンは散歩の時いつも他の犬に吠えられても里奈に優しい声をかけてもらって撫でてもらって落ち着いた。
そしてこの時もだった。
「シフォン、狂犬病の注射に行こうか」
「クゥン・・・・・・」
シフォンは父の言葉に怯えた声で応えた、実は注射も嫌いなのだ。父はそのシフォンを見て困った顔になった。
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