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のろけっぱなし

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第二章

「それが当然でな」
「恩にも感じないんですね」
「猫は唯我独尊なんだよ」
「だからそうなんですね」
「困った奴だよ、けれど一緒にいて癒されてな」
「いいんですね」
「猫はいいぜ」
 三浦は最後までこう言った、そしてだった。
 彼はずっとのろけっぱなしで話をした、それでだった。
 この時だけでなく何かあると愛猫の話をした、ある時妻と旅行に行くことになったが三野にこのことも話した。
「問題はムーでな」
「旅行に連れて行くんですか?」
「ホテルがペット不可でな」
 それでというのだ。
「駄目なんだよ」
「それはまた」
「だからな」
 それでというのだ。
「俺の実家に預けることにしたよ」
「旅行の間は」
「親父とお袋が面倒見てくれるって快諾してくれたよ」
「よかったですね」
「前もそうだったけれどな」
 前の旅行の時もというのだ。
「けれどな」
「それでもですか」
「やれやれだよ、暫くムーと離れるからな」
「そのことが残念ですか」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「ムー前俺が実家に預けた時もうその瞬間に親父とお袋に懐いてな」
 そうしてというのだ。
「俺達が戻って来るからなって言っても庭で蝶々と遊んでいて」
「気にしていなかったんですか」
「もう自分で楽しんでいたよ」
「そこも猫らしいですね」
「やれやれだよ、しかしな」
 それでもとだ、三浦は明るく笑って話した。
「家に戻る時はちゃんと懐いてくれるからな」
「よかったですか」
「ああ、本当にな」
「それは何よりですね」
「だから今回もな」
「実家の方に預けますか」
「そうするな」
 こう言ってムーを実際に実家に預けて夫婦で旅行に行った、そうして帰ると三浦は三野に旅行の話よりも猫の話をした。
 そんな中三浦は会社で沈んでいた、それでだった。
 三野にその沈んだ顔で語った。
「ムーの奴が家出した」
「えっ、どうしてですか?」
「わからないよ、奥さんと休日買いものに出て帰って玄関の扉開けたらな」
 その時にというのだ。
「もうな」
「脱走したんですか」
「扉開けたらその前に座っていて」
 そしてというのだ。
「すぐに出て行ったよ」
「それは大変ですね」
「すぐにチラシ作って配ってな、ツイッターとかでもな」
「捜索願出してますか」
「ああ、けれどな」 
 三浦は沈みかつ不安に満ちた顔で述べた。
「そうしてもな」
「見付かっていないですか」
「昨日はな」
「そうですか、早く見付かるといいですね」
「家の近所探したけれどな」 
 それでもというのだ。
「まだな」
「じゃあ早くですね」
「そのことを願うな」
 三浦はこの日ずっと沈んでいて会話もなかった、そうした日が三日程続いたが。
 四日後の朝彼は三野の満面の笑顔で話した。 
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