戦国異伝供書
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第百九話 白から水色へその二
「こうして伊達殿と共にいる時は来るとは、いえ」
「もっと言えばですな」
「天下のお歴々と顔を見合わせるとは」
このことがというのだ。
「思いも寄りませんでした」
「左様ですか」
「はい」
こう言うのだった。
「そしてです」
「そのうえで、ですか」
「伊達殿のことも聞けるとは」
「面白い話になりますぞ」
政宗は笑って話した。
「それがしの話は」
「そう言われるとは」
羽柴は政宗の話に笑って返した。
「それはまた」
「楽しみだと」
「実に」
そうだというのだ。
「そうさせて頂きます」
「それでは包み離さずです」
「話して頂けますか」
「それがしのことを」
そうするというのだ。
「今より」
「では」
家康も言ってきた。
「伊達殿も茶をどうですか」
「茶を飲みつつですな」
「お話をされては」
「ですな、話しますと」
「どうしてもですな」
「喉が渇きます」
そうなるからだというのだ。
「ですから」
「それは有り難き心遣い」
政宗も笑顔で話した。
「さすれば」
「これよりですな」
「茶を頂き」
そのうえでというのだ。
「お話をさせて頂きます」
「それでは」
家康も応えた、そうしてだった。
政宗に茶を差し出した、すると政宗もその茶を手に取った。そのうえで茶を飲みつつ自身のこれまでのことを話した。
物心ついたころにはもうだった。
梵天丸は自分の右目のことがわかっていた、他の者は両目が見えるが。
自分は見えない、それで周りに問うた。
「何故わしの右目は見えぬ」
「そのことは」
「何と申し上げるべきか」
「一体」
「申してみよ」
傍にいる者達に告げた。
「何でもな」
「そうしていいのですか」
「我等が」
「恐れ多いですが」
「確かにわしは伊達家の跡継ぎ」
このことはもうわかっていた、幼いながら。そうして右目に刀の鍔を眼帯にしているその顔で言うのだった。
「だが言うべきことはだ」
「言えと」
「そう言われますか」
「そうじゃ、何でもじゃ」
それこそというのだ。
「申してみよ」
「では」
「若様がそう言われるなら」
「それでは」
「何でもな」
こう言って家臣達に言わせた、すると彼等は畏まって話した。
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