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戦国異伝供書

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第百八話 関東管領上杉家その十二

「やはりな」
「武器がよいと違いますな」
「それだけで」
「鉄砲を多く持っておれば」
「何でも織田家の槍は長く」
 氏康は今度は槍の話をした。
「弓やも刀も質がよくな」
「具足もよいですな」
「その様ですな」
「動きやすくかつ硬い」
「足軽の具足ですらその様ですな」
「そうなれば強い」 
 武具の質がよければというのだ。
「やはりな」
「ですな」
「それではですな」
「織田家は強い」
「そう言っていいですな」
「しかも優れた家臣の方々が多い」 
 このこともあるというのだ。
「織田家はな」
「はい、政も戦も出来る」
「そうした方が多いそうですな」
「まさに綺羅星の如くとか」
「七百二十万石の大身に相応しいまでの」
「弱い兵も優れた将が率いると強い」
 そうなるというのだ。
「だからな」
「だからですな」
「それで、ですな」
「織田家は侮れぬ」
「大身でありますし」
「そうじゃ、あの家がどう動くかで」
 織田家、この家がというのだ。
「天下は大きく変わるぞ」
「左様ですな」
「それではですな」
「関東にあっても」
「織田家のことは見ていきますな」
「そうしますな」
「是非な」
 まさにというのだ。
「その様にしていこうぞ」
「織田家とは戦わぬことがです」
 幻庵が言ってきた。
「やはり」
「一番よいですな」
「はい」
 まさにというのだ。
「あの家とは」
「やはり大きくなりました」
「こちらは六万ですが」
「相手は十八万ですな」
「三倍の兵力差があります」
「とても当家だけでは」
「勝てませぬ」
 兵の数だけを見てもというのだ。
「しかも優れた家臣の方々が揃い」
「鉄砲は多く」
「武具もよいとなると」
「勝てる相手ではないですな」
「ですから」
 それでというのだ。
「やはりです」
「当家としては」
「勝てぬので」
「戦わぬことですな」
「まずは、ですが戦うなら」
 その時はというと。
「我等もです」
「死力を尽くして戦う」
「そうしましょうぞ、勝てぬまでも」
 それでもというのだ。
「負けぬ様にです」
「すべきですな」
「家を残すことを第一に考え」
「そのうえで」
「戦いましょうぞ」
「負けぬ、そしてですな」
「家が残る様に」
 こう氏康に言うのだった。 
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