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氷の龍は世界最強

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異世界転移

 光が晴れたのと、雫が俺の袖を引っ張ったのはほぼ同時だった。
「・・・・・・蒼汰」
 皆には隠し、見たことがない景色の中、彼女は俺に不安の声で訴えてくる。
 しっかり者に見えて、彼女の中身は思春期の乙女だ。
「さて、ここは何処だろうな」
 俺はそう言いながら辺りを見渡す。
 どうやら、クラスメイト全員がここにいるらしい。
 あと、俺たちの教師の愛子先生もな。
 俺たち全員、なにが起こっているのか分からない。
 南雲だけはそうではないようだがな。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
 俺たちがいるのは台座のような場所。
 その下から言ってくる、自分の名を明かしたイシュタルといういけ好かない爺が笑顔を向けてきた。
 俺からしたら、いけ好かない爺さんだ。

 俺たちは10メートル以上ありそうなテーブルが幾つも並んだ大広間に通されていた。
 その際、誰もが言葉を交わさなかったのは現実と認識していないのだろう。
 あと、あのバカがクラスをまとめている。本来なら、愛子先生の仕事だが、それはそれ。これはこれだ。
 あと、男共の視線を釘付けにしたのは美少女メイドだ。俺からしたら、雫で見慣れているので問題ない。
 彼女たちは俺たちに給仕をするためにカートを押して入室する。
 俺たちの前にこの世界の飲み物と食べ物が置かれた。
 手配した後は速やかに出て行った。
「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 ふん。俺からしたら、子供だましだ。
 面倒いから寝かせてもらうとしよう。
 俺が寝ている間に話された内容はこうだ。

 この世界はトータスと呼ばれている。
 そして、トータスには大きく分けて3つの種族がある。人間族、魔人族、亜人族である。 その中で人族と魔人族が戦争し合っているらしい。
 そんな中、魔人族が魔物を使役する事態が発生した。
 そんな彼らに対して、戦争の道具である俺たちを呼んだようだ。
「あなた方を召喚したのは『エヒト様』です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という『救い』を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、『エヒト様』の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい」
 イシュタルはどこか恍惚とした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。
 以上だ。

 そんな中、俺は眠っていた。
 眠っている中、又もや、夢を見る。
 夢の中では、俺の前に氷の龍が冷気の暴風を伴って姿を現している。
 毎回、思うのだけど、寒波の暴風を出さないでほしい。
 寒いし。声が聞こえない。
「小僧・・・貴様が・・・我を・・・・・・」
 聞きたいんだけど、聞こえない。
 寒波が邪魔をしている。
 まるで、この寒波が力の奔流みたいに・・・水の奔流みたいに・・・押し寄せてくる。
 木霊する声に、俺は耳を傾けたい。
 傾けたいのに強烈な寒波の奔流が俺に押し寄せてくる。
 抜けようにも抜け出せずにいる。
 だから、声が聞こえない。

 その間に話は進んでいた。
 愛子先生が抗議したり、あのバカが勝手に皆を戦争に参加させようとまとめたりした。
 俺は雫に起こされる形で皆と一緒に部屋をあとにする。
 部屋をあとにした後、俺が座っていた席にあった飲み物はパキパキと表面に氷が張っていた。

 一方、トータスの空間にして別空間にある世界にて。
 その世界のある集会でこんなことが話し合っていた。
 その集会に集まっていたのは12人。
 本来、13人のところが12人しか集まっていない。
 つまり、1つは空席なのだ。
 来たるべき時、その席に座れる実力者が来るのを待って・・・・・・。
 なお、集会では、こんなことが話された。
「諸君は気づいているはず。現世にて。多数の人間が来訪した。これで現世そのものに多大な影響を及ばさないか。調査することとする」
「お言葉ですが、総隊長。それは平隊士に一任させるつもりですか?」
 金髪の女の子が質問する。
「いや、俺たち隊長格から派遣する」
 威風堂々としている青年男性が公言する。
 その公言に濡れ烏の長髪の男の娘が挙手する。
「だったら、俺が調査に向かいますよ。俺個人としても調べたいことがあるので・・・」
 供述すると男性は
「いいだろう。この一件は貴様に一任する。峻」
「分かりました、総隊長」
 ということがあった。

 後に、峻という少年と氷川蒼汰が『ホルアド』という街で出会うことになる。 
 

 
後書き
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