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おっちょこちょいのかよちゃん

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73 二人で楽しめた時

 
前書き
《前回》
 三河口を暴行する彼の兄・三河口響を止めようとするかよ子達。異世界の道具を使用する事に躊躇うが、奏子が武装の能力(ちから)を行使して皆を守り、彼女に異能の能力(ちから)が宿っている事を皆は知る。騒動を収めた後、響は叔母・叔父と行動する事になり、三河口の提案で藤木と笹山を奏子に引率させ、かよ子や三河口達・残りのメンバーで行動する事にしたのだった!! 

 
 かよ子達は文化祭巡りを再開した。
「ミカワ、俺達は妹達を捜すよ」
「ああ、いいよ」
 濃藤はかよ子達と別れた。
「はて、皆はいろいろ楽しんだのかな?」
「ああ、ゲームとかもいろいろ楽しんだぜ」
「んじゃ、体育館でそろそろ演劇部が演劇をやるからそれを見に行ってみようか」
「うん!」
 皆は体育館へと向かった。その時だった。
「いやあ~、最高の演奏だったな」
「俺も興奮したぜ!」
「そっか、俺も音楽好きだからね」
「あ!」
 かよ子は再会に驚いた。すみ子達隣町の小学校の面々だった。すみ子の兄も彼女達と合流できたようだ。
「かよちゃん達・・・!」
「おう、やっぱりお前らも来てたか!」
「ああ、すみ子に誘われてな。文化祭ってのは結構楽しいものだよな」
「今、俺達は軽音楽部のコンサートを聞いてきたとこだったよ。すげえ会場が盛り上がってたぜ!」
 山口は感想を述べる。
「次にやるのは演劇部だけど、見てくかい?」
 すみ子の兄が聞く。
「ああ、俺達も丁度その気分だったんだ。君達はどうする?」
 三河口はすみ子達に聞く。
「オイラ達はちょっと外の空気を吸いたくなったんでまた模擬店の方をまわるでやんす」
「そっか、んじゃ、またな」
 かよ子達は体育館へと入り、すみ子達は模擬店のコーナーへと向かった。

 奏子の引率により藤木は笹山と少し楽しめると思うとホッとした。一方の笹山はかよ子達と別々の行動になるのは少し寂しかったが近所に住む奏子と一緒に周遊できるのは嬉しかった。
「校内のゲームのコーナーとか展示のコーナーとかは殆ど楽しんだのよね?」
「うん。男子達はサッカーや野球のゲームとかやったし、ヨーヨー釣りもやったわ」
「それじゃあ、なんか作り物とかやってみない?美術部は絵の展示もやってるけど、別の場所では粘度でいろんなものを作るコーナーもやってたわよ」
「いいね、藤木君、そこ行こうよ」
「う、うん、いいよ」
 藤木は笹山と二人で粘土作りができると思うと楽しくなった。入った一年生の教室では粘土で好きなものが作る事ができるのだ。中には美術部が飾ってある粘土の作品が並んでいた。犬や猫、人形、自動車や電車などの試作品が並んでいた。
「やあ、粘土で何か作ってみるかい?」
 美術部の男子生徒が問いかけた。
「はい、お願いします!」
「ぼ、僕も!」
 二人は粘土を作る手順を男子生徒から聞いて作成を始めた。
「粘土やってるとなんか図工の授業みたいだよね」
「え・・・、あ、うん・・・」
 藤木は途中で笹山が話しかけられて戸惑ったが、少し嬉しくもあった。
「何作ろうか?」
「う、うん・・・」
 二人は粘土作りで少し迷いながらも楽しんだ。笹山は猫を作ることにしたが、藤木はなぜか笹山ばかりを見ながら作っていた。
「藤木君、何、私ばっかり見て・・・」
「あ、いや、その、実は・・・」
 二人の作る様子を見ながら奏子は推測する。
「藤木君はもしかしてかず子ちゃんを作ろうとしてるんじゃないの?」
「え・・・!?」
「え、そうなの!?」
 笹山も驚いた。
「実は・・・。そうなんだ・・・。なるべく綺麗に作るよ!」
「ありがとう、楽しみにしてるわ」
「いやあ、ははは・・・」
 奏子はやはりこの男子は笹山が好きなんだと改めて感じるのであった。形作りが終わると、次に色塗りを行う。
「藤木君、結構上手にできたわね」
 奏子は藤木が笹山の顔そっくりの形の粘土に感想を述べた。色塗りをしたその粘土は本人そっくりだた。
「ありがとう。藤木君、嬉しいわ」
「あ、うん、笹山さんの猫もとても可愛いよ」
「ありがとう」
 笹山もまた照れた。二人はそれを美術部の生徒に手渡す。
「お疲れ様。二、三十分で乾くからその時にまた来てね」
「はい」
 奏子達は教室を出ると案内を続ける。
「今度どこ行ってみる?」
「そうね・・・」
「体育館で演劇部が演劇始まるから観てみない?」
「うん、行きたい!藤木君、どうかな?」
 笹山は藤木に確認をとる。
「うん、いいよ」
(笹山さんと演劇観る・・・。まるで本当のデートだな)
 藤木は浮かれた。やはりこの文化祭に来てよかったと思った。夏休みに出会った安藤りえという女子に恋していた時期もあったが、好きな女子とここまで親密になれるなんて藤木にとってはこの上ない幸運だった。

 体育館の館内にはパイプいすが置かれており、観客席と化していた。かよ子達もそのパイプ椅子に着席する。
「あのステージの方で吹奏楽部がコンサートやったり、合唱部が合唱披露したり、大道芸部がマジックや独楽回しやジャグリングなどいろいろやってるんだよ」
 三河口が説明した。
「凄いわあ!」
 少ししてかよ子は遠くの方に奏子や藤木、笹山、そして笹山の両親も館内に入って来た事に気付いた。
「あ、笹山さん達もいるわあ!呼びましょうかあ?」
 冬田は提案した。
「いいや、やめといたほうがいい。藤木君にとっては笹山さんと一緒にいられるチャンスなんだから俺達が関わると彼の気分を壊すことになるよ」
 三河口が制した。
「は、はあい・・・」
(ま、いいわあ。私はこうして大野君といられるんだからあ・・・)
 冬田は大野と文化祭を楽しむだけでも十分満足だった。
(でも、藤木君、笹山さんと何か楽しそう・・・)
 かよ子は藤木がようやく文化祭を楽しめているのではないかと感じるのであった。
「お、演劇が始まるぜ」
 皆は劇の観賞に浸った。

 演劇が終わり、かよ子達は体育館を出る。
「ああ、面白かったね」
「ああ、俺も演劇部の演劇を見るのが好きでね、去年も楽しみにして観たんだ」
 三河口は奏子を呼ぶ。
「奏子ちゃん」
「三河口君・・・。今年も観てたんだね」
「うん、ところで二人の調子はどうかな?」
「二人って?」
「かず子ちゃんと藤木君の事だよ」
「ああ、上手くやってたわ・・・」
「なら、二人にも楽しい一時を過ごせた訳って事か・・・。ん・・・!?」
 その時、三河口の表情が急に変わった。
「お、お兄ちゃん、どうしたの?」
 かよ子は三河口を不審に思い、質問する。
「急に胸騒ぎがしてきた・・・、もしかしたら・・・!!」
「俺もしてきたぜ・・・!!」
 杉山も胸騒ぎを感じた。
(もしかして、まさか・・・)
 その違和感からかよ子は何の事が分からない訳がなかった。

 石松はエレーヌと共に「敵」を捜す。
「どちらに潜んでおろう・・・」
「でも、確かにこの地にいることは確か・・・」

 すみ子は胸騒ぎが始まった。
「はあ、はあ・・・」
「すみ子、どうしたんだ?」
「あ、あいつらが来ている・・・!!」
「あいつらって・・・、まさか・・・!!」
「まさか、赤軍や異世界の人間か・・・!?」
「間違いないな」
 一緒にいるすみ子の兄もそう答えた。彼にも見聞の能力が備わっているのだ。

「まさか、やっぱり来てるの!?」
 かよ子はそわそわした。
「ああ、この文化祭を荒らしながら君の杖とかを奪いに来たのかもしれんぞ!」
 その時だった。
「やはり、お主らもこの祭り事におられたか」
「も。森の石松!?」
「大変だ、皆の衆!『敵』がこの地に現れた!!」
「何だと!?」
 皆は驚きを隠さない訳にはいかなかった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「文化祭の緊急事態」
 かよ子達の前に現れた石松とエレーヌ。すみ子達と合流して「敵」の行方を追う事にしたかよ子達だが、その「敵」を発見したその時、とんでもない事が発生する・・・。 
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