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魔法科高校の氷の異能者

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九重寺での鍛錬

 翌日。
 俺は朝早く、目を覚ます。
 真夜様いや母さんの話で寝る時間に遅れがあるも、いつも通りの時間に起きたな。
 とりあえず、朝ご飯を食わずに先に九重寺に向かうか。
 ひとまず、家に出て、司波家を見れば、達也と深雪も今から、九重寺に向かうどころだった。
「おはようございます、蒼汰くん」
「おはよう、蒼汰」
「おはよう、達也、深雪」
 俺は達也と深雪に挨拶をするも、まだ少し肌寒い。
 肌寒さなら問題ないが、寝起きの肌寒さは応えるな。
 俺は軽く、準備運動してから
「それじゃあ、行きますか」
「そうだな」
「はい」
 俺たちは九重寺まで向かうことにした。
 深雪はローラースケートを履いているが、俺と達也はジョギングスタイルで走っている。
 一歩一歩の歩幅が10メートル間隔。
 慣れないな。息が少々上がりそうだ。
 なお、移動には特殊な機械を使わない。
 全て、魔法のみで行われている。
 一歩ごとに魔法を発動しているので、息づきに大変苦労する。
 息継ぎに俺は上手だが、達也はそうとは言えない。
 疲労が滲み出ている。
 自分に厳しい。
 だからこそ、修行のしがいがあるのだろう。

 俺たちの目的地は家から車で10分の距離にある小高い丘のお寺だ。
 そこに住まう者たちは僧侶や和尚じゃない。修行僧というのが適切だろう。
 俺にとってみれば、まだまだ若い部類だなと思う。魔法師としての格は――。
 敷居が少しだけ高いが、俺たちは躊躇いなく入る。
 寺の門を潜ったところで、達也は手荒い歓迎を受けていた。
 いや、歓迎という名の稽古である。
 通い始めた当初は1人1人だったのに、今じゃあ、20人総出で相手をしている。
 その光景を俺と深雪は2人で本堂前の中庭で眺めていると、
「八雲さん。死角から忍び寄らないでください」
 俺は水を使役して、深雪に伸びる腕を握り締めた。
 突然の俺の行動に深雪は驚きを浮かべながら、振り返ると、そこに坊主頭の僧侶がいた。
「ハッハッハ! 流石だねぇ、蒼汰くん。バレバレだったか」
「隠すなら、もう少し、真面に隠してください」
「これはお厳しい」
 そう言い返して、俺は水の使役を止めた。
「おはようございます、八雲さん」
「おはようございます、先生」
「あぁ、おはよう、蒼汰くん、深雪くん」
 俺と深雪に八雲さんが挨拶を返した。
「ご無沙汰です」
「うん。零士さんは元気かい? あの人はそろそろ、ご高齢じゃなかったかい?」
「まだまだ、元気にしていますよ」
「もう引退しても良いんじゃないかい?」
「知りませんよ。父さんの考えなんて、まあ、でも、次期当主にするなら、姉さんでしょう。兄さんたちは碌でもない人たちですから」
 俺は呆れながら言葉を返す。
「それが、第一高校の制服かい?」
「はい、昨日が入学式でした」
「そうか・・・そうか・・・うん、良いね」
「今日は入学の報告をと存知まして・・・先生?」
「真新しい制服が初々しくて・・・清楚の中にも色気があって・・・」
「せ、先生?」
「まさにほころばんとする花の蕾」
 深雪は少々怖がりたじろぐ。
「そうこれは萌えだ! これは萌えだよ深雪くん!!」
 いい年こいて、何をしているんだよ。
 深雪。嫌な予感がするからといって、俺の背中に隠れるな。
 あと、達也。もう少しだけ殺気を殺しな。
「むっ!?」
 八雲さんは身体を反転させ、腰を落として、左腕をかざした。
 バシッと鈍い音を立てて、手刀が腕で防がれている。
「師匠、深雪が怯えていますので、少し落ち着いてもらえませんか?」
「やるねえ。達也くん。僕の背中を取るとは!」
 そこからは八雲さんと達也のご指導が始まった。
 ご指導が終わったあと、朝食をとることにした俺たち。彼がこんなことを漏らす。
「それにしても驚いたよ。古式最強の攻撃力を誇る火野家と古式最強の防御力を誇る氷川家の両名が第一高校に入学することになるとはね」
「古式最強の攻撃力ですか?」
「炎を扱うなら、火野家で学ぶのが僕たちの常識なんだよ」
「そうなのですか、蒼汰くん」
 深雪は俺に聞いてくる。
「確かに、愛桜の炎と熱は深海にいるかのように重く、天を焦がし、黄泉一切を灰燼に帰す」
「それって・・・・・・」
「つまり、骨まで残さないというわけだ。逆に俺たち氷川家は水と氷のエキスパート。俺は氷だが、姉さんは水を扱いこなす。今まで、傷一つも負っていない。全てを浄化し、洗い流す。それが姉さんの強さ」
「玲奈さんがそんなに凄いとは・・・・・・」
「しかも、氷川家の現当主、零士さんは最高位の古式魔法師。その血を引いている蒼汰くんと玲奈くんは若き日の彼を彷彿とさせる」
「まだまだ、父さんには及びませんよ」
「いや、現代のCADや術具を使わずに水を使役するだけでも凄いと思うよ」
 それって凄いことなのか。
 俺から見れば、普通なんだが――。
「深雪。そんなに凄いのか?」
「凄いですよ。蒼汰くんや玲奈さんがCADを使わずに魔法を行使できる。1度でもいいからやってみたいものです」
「確かに、俺も蒼汰や玲奈さんが普段から息をするように魔法を使えることに嫉妬したことがあるよ」
「そういうものなのか」
 2人に言われると、俺って結構変わっているようだな。
「俺って、機械に疎いと思われている?」
「俺と深雪はそうでなくても、周りからはそう思われているかもな」
「なんかショック」
 雑談をした。
 その後、学校に登校する準備をするため、俺たちは自宅に帰ることにした。 
 

 
後書き
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