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魔法科高校の氷の異能者

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知られざる真実を知る

 こうして、俺は入学した初日に風紀委員に在籍することが決まった。
 俺もこれにはビックリしているからな。
 ちなみに俺と姉さんの家は都内にある氷川名義の家だ。
 これは、氷川家と四葉家が用意した家だ。
 隣は司波家。つまり、達也と深雪の家だ。
 四葉家の血筋を守るのが、氷川家の最たるもの。
 何がなんでも守護するのが、四葉家との盟約である。
 なお、これは四葉の分家には知り得ていないことだ。
 司波家と氷川家は地下で通じている。
 地下通路を通して、往来している。
 俺は姉さんと一緒に帰った。

 家に帰り、着替えてからソファーに座る。
 ソファーに座りながら、壁際のディスプレイで映る人物と会話していた。
『入学おめでとう、蒼汰』
「ありがとうございます、父さん」
 ディスプレイに映っている相手は氷川家の現当主、氷川零士。
 古式魔法界では、最高位に立つ魔法師にして、俺と姉さんの実父だ。
『入学して間もないだろうが、お前たちに教えておかないといけないことがある』
「俺と姉さんにですか?」
 いったい、なにを隠していると言うんだ?
『これは、お前たちが高校生になったら、教えようと決めていた。心して聞いてくれ』
「分かりました」
「分かったよ。それでさっさと話してくれない?」
 俺は急かすように言うと
『急かすな。実は、お前たちは姉弟だが、()()が違う』
「は?」
「え?」
 母親が、違う。
「いったい、どういうことですか? 父さん?」
 俺は挙動不審に陥る。
『いきなり、このことを言われても信じられないことだろうが、事実だ。お前たちは四葉家に起きた災難を知っているな』
「大漢に連れてかれたという話ですか」
『そうだ。その事件の被害者が妻と四葉家の現当主だ。あの事件は私が若い頃、大漢へ向かい、彼女たちの心に傷つく前に助けた。だが、知っての通り、妻、小雪はトラウマとして男性に恐怖した』
 確かに、母さんは俺と父さん以外の男性には怖がっていたな。
 そのため、母さんの周りには女性が多い。
『心に傷つかなくても、辛い経験をした。小雪もそうだが、真夜殿もそれ相応の精神が窶れていた。そして、10年近く経ち、小雪は私の前に来た。それは執事から聞いたな?』
「はい。聞きました」
『実は、そこにはもう1人いた。真夜殿だ。彼女も姉である深夜殿との関係は取り戻せたが、結婚しなかった。彼女はあの時のことで多少なりともトラウマが出来ていた。そして――』
「もういいよ。父さん。つまり、こう言いたいんだろう。俺と姉さんのどちらかが真夜殿の子供だって言うんだろう」
 逸らしたいことだろうが、逃げてはいけないと思って、俺はそう言い放った。
 若干ながらも声は震えていたがな。
 父さんも俺の声が震えていたことに分かっていながら
『2人が私の前に来た時、決意した。私が2人を愛することを――。そして、その1年後、小雪と真夜殿がご懐妊なさった。お前たちの誕生日が近いのは同じ時間帯に生まれたからなんだ。玲奈が生まれたのが3月31日23時59分。蒼汰が生まれたのが4月1日0時1分』
「ほぼ同時だな」
「私と蒼汰が双子でもないのに年齢が同じなのはお母さん違いからね」
『その通りだ。そして、私と小雪との間に生まれた子供が玲奈。真夜殿との間に生まれた子供が蒼汰。お前だ』
 父さんから明かされた真実。
 それを聞かされて、俺はソファーに深々と座る。
 身体が一気に脱力した。
 知られざる真実を知り、今、受け止められる自信がなかった。
『いきなりのことで受け止めきれないだろう。だが、蒼汰。お前は真夜殿の愛をしかと受けながら育ってきたことだけは知ってくれ』
「今更、それを言っても言いたいが、どんな形であれ、真夜殿が俺にとって唯一、家族だからな」
 フッと息を吐いて言った。
『すまない。本当だったら、四葉家のもとですくすくと育てたかったが・・・・・・』
「兄さんたちや周りからの仕打ちから守るためだったんだろう」
「それなら、しょうがないわね。それなら、それで構いません。お父さんの精一杯の愛情なんでしょう」
 優しげな笑みを浮かべる俺と姉さん。
 これには、父さんも一杯食わされ、
『ありがとう。お前たちは前妻の息子たちとは違って、真っ当に育ってくれて・・・・・・』
「まあ、兄さんたちがいかれているのは前から分かっていたから」
「そうよね」
『まあ、お前たちに話すのは以上だ。それでは、玲奈、蒼汰。よくしっかり寝るのだぞ』
「お休み、父さん」
「お休みなさい、お父さん」
 別れの挨拶を交わして、今日は恙なく終えた。
――――――――――――――――――――――

 その日の夜。
 俺は壁面ディスプレイの前に立ち、ある人と会話をとることにした。
 その人物は四葉真夜。
 四葉家の現当主にして最強の魔法師の一角。そして、達也と深雪の叔母。俺の実母にあたる人だ。
「夜分遅く、申し訳ございません。真夜様」
『構いませんよ。蒼汰さん。まずは入学おめでとうございます』
「ありがとうございます。しばらくは深雪を優先に動きます」
『ええ、それで構いません。私のことより、深雪さんの命令を最優先にしてください』
「まあ、それもそうですが、俺としては()()()の言うこともしっかり聞きますよ」
 俺はここで真夜様のことを母さんと呼んだ。
 これには、真夜様もディスプレイ越しだが、ピシッと固まっている。
『今、なんと・・・・・・』
「母さんですよ。真夜様は俺の母さんなんでしょう?」
 俺が確認を取るよう話しかけるも、真夜様は固まり続けている。
『蒼汰さん。なにを仰っていますの。私に子供なんて――・・・』
「父さんが全て話してくれました。俺と姉さんが異母姉弟であることも」
 言い逃れさせない。逃げることは許さん感じで俺は言う。
 言質を取った感じで言ってくる俺。まるで、悪役だな。
 一方、真夜様は
『零士さん。どうして話すのですか・・・』
 苛まれている。
 「なんで話したんだ」って感じで――。
「父さんの口から聞いても、まだ受け入れられない。母さんも「本当にこれでいいのか」って葛藤しているのなら、正直に話したらどうですか?」
 俺はそう言うも真夜様は口を開けずにいる。
 彼女の脳裏になにが過ぎっているのか分からない。
 だけど、俺のことを本当に大事に思っているのなら、非情になりきれない。
 人間とはそういう生き物だ。
『本当に私が貴方のお母さんでいいのでしょうか?』
「いいも悪いも関係ありません。真夜様が俺のことを本当にどう思っているかです」
 俺もこんな時になに言っているんだろうと思う。
 もしかして、俺って優しい方なのか?
 だけど、先の俺の言葉がきっかけになったのか。真夜様の目尻から涙の滴が零れた。彼女は目尻の涙を拭ってから
『ええ、そうよ。蒼汰さんは私と零士さんの間に生まれた子供です』
「やはり、父さんが言っていたことには本当だったんですね」
『ええ、覚えていないでしょうけど、生まれた貴方を抱いたのは私。貴方の成長を近くで見ていたのは私だったのよ』
「えっ? そうなんですか?」
 意外な事実。
『貴方の修練は四葉と氷川共同で行われた。もちろん、達也さんと深雪さん、玲奈さんの修練も同じです』
「確かにそうでしたね。修練において、両家の監視下のもとで鍛えられていました」
『それには、零士さんの配慮がありました。成長する貴方を私の目が見届けるために・・・・・・』
「知らなかった。ちなみに四葉側は俺が母さんの子供なのは知っているんですか?」
『いいえ。知りませんよ。ですが、栄作伯父様、姉さんだけには見抜かれました。いくら隠しても顔に出てしまうのですね。昔、言われたのです、「私が蒼汰さんに見る目は母親の目だと」・・・・・・』
「親を経験している人だからこそ、気づけるポイントだったのかもしれませんね」
『そうですね。ですが、分家の人たちには知られておりませんし。氷川家との関係も話しておりません』
「当然でしょう。四葉家と第四研をあの土地に設置することを決めたのは俺たち氷川家なんですから。盟約に関しても四葉家と氷川家の書物に書き記し、口伝で継承するのが慣わし。しかも、その慣わしは両家の直系のみに開示されている」
 この慣わしは四葉と氷川の間に交された盟約。当時の四葉と氷川の当主が盟約を交わし、互いに遵守することが決められた。
「盟約のことに関しては達也も深雪も知らないこと。だが、四葉と氷川の関係性だけは知っているだけですからね」
『ええ。達也さんと深雪さんは姉さんの子。氷川家のことは知っていても、盟約のことに関しては知っていませんからね』
「まあ、それは別の機会で話すとして、俺の公表はいつになるんですか?」
『そうですね。早くて、夏近くに公表。遅くて、年末ですね』
「その時までに俺も準備しておきます」
『また、後日。それと、お休みなさい、蒼汰』
「お休み、母さん」
 と、俺は真夜様こと母さんの会話を済ませた。 
 

 
後書き
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