NO MORE
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第二章
私の誕生石の指輪を出してこう言ってきた。
「これね」
「それじゃあよね」
「返事を聞かせて欲しいけれど」
「これからもずっと一緒にいましょう」
これが私の返事だった。
「二人で」
「それじゃあだね」
「断る筈ないじゃない」
彼に微笑んで答えた。
「これまでも何年も一緒にいたのに」
「それじゃあね」
「ええ、これからは結婚のこともね」
「話していこうね」
「そうしましょう」
ロマンには少し遠いやり取りなのは交際が長くてもうあれこれ話す仲じゃないからだとやり取りをしながら思った、そうして。
私達は籍を入れて家族と親戚に友達そして会社の親しい人達を呼んで式も挙げた。ささやかな式もと思ったけれど結婚式場もお仕事になるからと二人で結婚式場にお願いをしてそちらで式も挙げた。私達は二人の生活に入った。
二人で新居のマンションに入って暮らしはじめた、すると彼は私にこんなことを言ってきた。
「この部屋いいね」
「ええ、何も不満がない位ね」
日当たりはいいし駅に近くてスーパーも傍にあって移動は楽で中は適度に広くて暮らしやすい、本当に何の不満もない素敵な部屋だった。
「いいわね」
「そうだね」
「ここにずっと。子供が出来たら狭くなるでしょうけれど」
「その時はその時だね」
「それまではね」
少なくともとだ、私は彼に仕事から帰って作った野菜炒めを出しながら彼に話した。
「ここに二人でずっといましょう」
「そうしようね」
「二人の間は。ただね」
「ただ?」
「いえ、今思ったけれど」
彼に考える顔になって話した。
「お家に住んでいると飽きないわね」
「そうだね、言われてみれば」
彼も私のその言葉に頷いてくれた。
「気に入ったお家はね」
「そうよね、けれどこれがデートスポットだと」
あの橋のことを思い出した、実はあの飽きたと言った時から行っていない。
「飽きるのに」
「気に入ったお家はね」
「飽きないわね。デートスポットは楽しむ場所で」
何故飽きるのか、私はこう考えて彼に話した。二人で部屋義でテーブルに向かい合って座って話をしている。
「楽しむだけだとね」
「飽きるんだね」
「けれどお家の中はくつろぐ、休む場所で」
「それだとだね」
「飽きないのね、だからね」
「お家はだね」
「気に入ったら余計にね」
彼に微笑んで話した。
「飽きないのね」
「そういうことだね」
「そうね、じゃあこれからもね」
「このお部屋でだね」
「くづろいでね」
そして休んでだ。
「暮らしていきましょう」
「楽しみながらね」
「ええ、それだけでなくね」
楽しみだけではやがては飽きてしまう、けれどその他にくつろいだり出来るなら飽きることはない。私は今そのことがわかった。
それで夫となった彼と一緒に晩ご飯を食べた、野菜炒め以外にもさっとお味噌汁も作ったけれど両方共よく出来ていた。それで心からほっとした。その気持ちが飽きることのないことはこのことからもよくわかった。
NO MORE 完
2020・5・10
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