刑事の父の変化
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第二章
「風呂に入れてやる」
「そうするんだ」
「ああ、今からな。それで家の中にな」
「今日はだね」
「置いてやるからな」
「そうするんだ」
「ああ、それで今日一日どうするか考える」
犬をどうするかをというのだ。
「けれど保健所はな」
「送らないんだ」
「それは止める」
このことは選択肢から外した、そしてだった。
まずは犬を風呂に入れてだった、それから。
毛布を出してその上で寝かせた、犬は風呂に入って気持ちよさそうにして毛布の上でも快適に寝た。その犬を見てだった。
妻は夫に言った。
「捨て犬かしら」
「そうかもな、人に慣れているしな」
「そうかも知れないわね」
「ああ、それでこの子をな」
「これからなのね」
「どうするかな」
このことをというのだ。
「じっくり考えるな」
「今晩ね」
「ああ、けれど保健所はな」
それはというのだ。
「ない、あと首輪もリードもないし小屋もないからな」
「お外には出さないのね」
「今夜は家の中だ」
そこに置くというのだ。
「犬小屋もないしな」
「そうするのね」
「ああ、そうする」
こう言ってだった、父は犬を家に置いた。
そして翌朝だった、一郎は。
犬を一瞥してから学校に向かった、その時に母に言った。
「人懐っこいね」
「ええ、吠えなくてね」
「勿論噛んだりしないで」
「私達にも初対面の時から」
「尻尾振っていてきらきらした目で見ていたし」
「人懐っこい子なのは間違いないわ」
母もこう言った。
「この子はね」
「そうだよね」
「けれどうちで飼うかどうかは」
このことはというと。
「お父さん次第なのよね」
「お父さんがどう決めるかだね」
「ええ、ただお父さんって剣道以外趣味はなくて」
「完全に仕事人間だよね」
「悪人ではないけれど」
それでもというのだ。
「骨の髄まで警察官でしょ」
「刑事だしね」
「そんなお父さんがね」
家にいたら寝ているだけで何もしない様な人間だということもだ、母は頭の中で考えて息子に対して話した。
「犬を飼うとか」
「想像出来ないね」
「警察犬ならともかくね」
「その子絶対に違うしね」
中型犬で如何にものんびりしてそうだ、だから一郎もこう言った。
「それじゃあね」
「ええ、やっぱり里親探してね」
「引き取ってもらうのかな」
「そうなるかもね」
学校に行く息子にこう言った、そして息子もそうなるだろうと思った。
そう考えつつ学校に行って授業を受けて給食を食べて友達と遊んで家に帰った、もう里親募集に動いていると思ったが。
その日非番だった父は家に帰った息子に告げた。
「あの子飼うぞ、名前はベルにした」
「えっ、飼うんだ」
「お父さんが面倒を見る」
こう息子に言うのだった。
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