増えていく家族
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第三章
「ワンワン」
「ニャ~~ン」
そのウミとソラが玄関で甲斐を迎えた、そして。
裕子にもだ、尻尾を振って身体を摺り寄せてきた。裕子はその二匹を見て甲斐に対して笑顔で言った。
「人懐っこいのね」
「ええ、二人共。俺が帰りますと」
「いつもこうなのね」
「そうなんです」
「そうした子達ね」
「お陰で毎日楽しいです」
甲斐は笑って話した。
「本当に」
「それは何よりね」
ここで裕子は二匹の毛を見て言った。
「毛並みもいいし」
「そうですか?」
「かなりね、ブラッシングもしてるのね」
「はい、そうしています」
「そうね、それでしっかりと食べてよく運動してよく寝てるわね」
「だから毛並みもいいですか」
「いい暮らしをしていると」
それでというのだ。
「自然とね」
「ブラッシングだけでなくですね」
「毛並みもよくなるのよ」
「そうですか」
「そのこともわかるわ」
甲斐に対して笑顔で話した。
「本当にね」
「そうですか」
「二匹共本当に大事にしているわね」
「家族ですからね、後ね」
「後?」
「ソラの去勢もです」
これもというのだ。
「もう予約したんで」
「今度行って来るのね」
「そうします」
「いいのね、去勢していないと凄い価値がある子よ」
裕子はこのことをあえて話した。
「それでもなのね」
「高価とか特別とかいいですから」
「だからなのね」
「ソラはソラですから」
自分の家族だからだというのだ。
「そのままです」
「去勢してなの」
「一緒に暮らしていきます」
そのソラを見つつ話した。
「ウミとソラと。一人と二匹で」
「そうなのね、それじゃあね」
「それじゃあ?」
「この子達にまた会いに来ていいかしら」
裕子は甲斐に微笑んで尋ねた。
「そうしても」
「はい、どうぞ」
甲斐は裕子の申し出に快諾で応えた。
「何時でも来て下さい」
「それじゃあね」
裕子は笑顔で応えた、そしてだった。
実際に甲斐の家に行く様になり甲斐も彼女の家に行く様になって。
彼女の兄にも家族にもそして甲斐の実家の両親にもお互いが知られる様になってそうしてであった。
二人は結婚した、それでだった。
二人の間に息子が生まれて陸と名付けられた、陸はウミとソラそして両親に囲まれて育っていった。甲斐も裕子もその彼等を見て心から幸せを感じた。
増えていく家族 完
2020・9・25
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