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お世話な親切

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第三章

 そのうえでお互いが目に入ったがここでもだった。
 すぐにつん、と顔を背け合う。だが今の皆はその二人を見てこう囁き合った。
「さて、お昼ね」
「あの娘が何をしてくれるか」
「後は大国さん次第ね」
「頑張ってくれたらいいけれど」
「しっかりしてくれたらね」
「いいけれどね」
 こう話すのだった。彼等は今は尚に任せるしかなかった。 
 二人はそれぞれ茶室に向かう。だがその入り口で。
 お互いに出会ったがここでも無言で顔を背け合う。何故呼ばれたのかも聞き合わない。
 尚は茶室の中から二人を見ていた。そこでこう言うのだった。
「さて、見てなさいよ」
 つんと顔を背け合う二人を見ての言葉だった。そのうえで。
 二人を出迎える。二人は尚の顔を見てまずはこう言った。
「あれっ、尚ちゃんじゃない」
「どうしたのよ、一体」
「先輩の誰が呼んだの?」
「私ちょっと呼ばれたけれど」
「まずは茶室に入って」
 尚は自分にそれぞれ問う二人に微笑んでこう言った。
「お茶淹れるから」
「うん、それじゃあね」
「今からね」
 二人も尚のその言葉に頷き茶室に入った。だが先輩の誰もいなかった。
 いるのは尚を入れて三人だけだ、二人は茶室の中で向かい合って正座になりながら茶道の茶を淹れる尚にこう尋ねた。
「だから先輩は?」
「何処におられるの?」
「私達呼ばれたんだけれど」
「何処なの?」
「先輩?いないわよ」
 これが尚の二人の返答だった。
「誰もね」
「えっ、誰もいないって」
「どういうこと?」
「呼んだのは私だからね」 
 こう言ったのである。
「二人のクラスの皆に頼んでね」
「?それって一体」
「どういうことなのよ」
「あのね。二人共どうしてなのよ」
 尚は茶を淹れながら怪訝な顔で二人に問うた。
「今そんなに仲悪いのよ」
「津波ちゃんが悪いのよ」
「枝織ちゃんが悪いのよ」
 二人はそれぞれを指差して顔を顰めさせて言い合った。
「だって。私が折角注意してあげたのに」
「枝織ちゃん絶対に聞かないのよ」
「折角津波ちゃんの為を思って言ったのに」
「私だって折角そうしたのに」
「津波ちゃんかえって怒るから」
「枝織ちゃんって酷いのよ」
「お互いの為を思って?」
 尚は二人の言葉を聞いてまずは首を捻った。
 とりあえずお互いの為を思って注意し合ってこうなったのはわかった。しかしそれが具体的にはどういったものかはわかららない。
 それで茶を淹れながら二人に問うた。
「というか今二人共凄く雰囲気悪いけれど」
「だから。津波ちゃんが悪いの」
「枝織ちゃんのせいだから」
 またこう言い合う二人だった。実は尚は二人が話をせずに立ち去ったら無理にでも引きとめようと思っていた。茶室の入り口には二人のクラスメイト達がスタンバイしていて押し返そうとも待っている。
 そこまでしていたがそれでも二人がここで言い合ったのは幸いだった。それで尚もこのことにほっとしながら話を聞いていた。
「それでだけれど」
「うん、私悪くないから」
「私もよ」
「折角言ってあげたのに」
「本当に聞かないから」
「だから。二人共お互いに何を言ったのよ」
 尚は落ち着きを保って二人に問い返した。
「まずは枝織ちゃんから言って」
「体育の時間津波ちゃんのスパッツが下にずれてたの」
 ままにしてあることだ。体操服は身体を動かす為に着こなしが崩れる。
「それで下着が少し見えてたの。それで注意したら」
「そんなの恥ずかしいでしょ」
 津波は顔を真っ赤にして枝織に抗議する。 
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