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リュカ伝の外伝

作者:あちゃ
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天使とラブソングを……?(第3幕)

 
前書き
今回はシスター・フレアと
デール王の視点。 

 
(サンタローズ)
フレアSIDE

『し、してやられたぁぁぁぁぁ!(ブチッ)』
「何だ!?」
ウルフ君の絶叫が聞こえたと思ったら、突然通信が途絶えた。何事なのかしら?

「何かウルフが誰かに“してやられた”らしい(笑)」
「まぁ珍しい。リュー君以外に彼を制御できる人居るの?」
思い当たる人は一人だけ居ますけど……ポピーちゃんかな?

リュー君も同じ事を思ったのか、肩を竦めて可愛く笑う。
あぁもう! リュー君は格好いいし可愛いし、毎週火曜日は必ず来てくれるし、本当に最高!
「ところでフレアさん……」

真面目な表情に戻したリュー君は何かを聞きたそうにしている。
ウルフ君がバラしたあの事ね……
も~……何でバラしちゃうかなぁ?







「……なるほど。別に経営難って訳じゃないのね(笑)」
「経営も何も資金は王家が出してくれてるから……で、でもね、お金の問題じゃ無いのよ! リュー君には必要ないけども、一般人には神様って必要なの! だから……」

「解ってる(笑) 僕もあのオッサン(役立たず)の存在意義は知ってる」
私の必死の良い訳も、優しく笑いながら諭してくれるリュー君。
姉の様に慕ってくれる時もあれば、妹か娘の様に接する時もある……それが凄く嬉しい。

「でも今日はお預けだよ。やる事も出来たし、僕に秘密を作ってたからね(笑)」
あぅ~……折角リュー君が来たのに、お預けなんてぇ……
夕食ぐらい……と思い、上目遣いでチラッと見たが、優しく首を横に振って断られた。今夜は不貞寝だ。

「ああ、でも紙とペンを貸して。教会を建て直すのに必要だから」
「紙とペン? 別に構わないけど、それだけで教会を建て直せるの……って言うか、無茶はしちゃダメよ! 国際問題とかになったら困るんだからね」

「大丈夫、大丈夫! もうそんなの日常茶飯事だから(笑)」
「ちょ、ちょっとリュー君!」
リュー君は笑いながらとんでもない事を言い、教会に紙とペンを取りに向かった。



(サンタローズ:教会)

リュー君は教会に入り事務用の部屋へ入ると、A4サイズの紙を数枚とペンを手に取り、机に座って何かを書き始めた。
気になって書いてる内容を覗いてみる。

“嘆願書”?

一枚目には嘆願書と書いてあり、ヘンリー陛下宛に色々書き連ねていく。
余談だが、リュー君は字を書くのが凄く早いが、それでいて字が綺麗だ!
私があのスピードで書いたら、推理小説より難解な書が出来上がる。

娘のリュリュも遅いが字は綺麗だ。
あの()は料理以外は大抵の事が出来る。綺麗好きだし裁縫も上手だし……
何で嫁の貰い手が無いのだろうか……いやまぁ、理由は分かってるけど。

「フレアさん、ここにサインして」
才能と美貌を無駄にしている娘の事を考えてたら、リュー君からサインを要求された。
「この下の方で良い?」

サインを求められた用紙を見ると嘆願書という名の書類になっていた。
そして嘆願者は私。
その事を証明するサインを書く必要があるのだ。

受け取った書類にサインしようと私もペンを持つと、もう既に次の書類を書き始めるリュー君。
流石一代で小国を大国へと押し上げた人は仕事が早い。
次は何の書類なのだろうか……?

フレアSIDE END



(ラインハット:王座の間)
デールSIDE

日もかなり傾き、今日の仕事が終わったので兄と暫しの雑談をしていた所……
(バン!)「ヘンリー、この書類にサインしろ!」
と、リュカさんが突然現れた。

「うわっぷ……や、止めろ馬鹿!」
リュカさんは兄さんの顔面にサインさせたいらしき書類を押しつける。
それではサインはおろか、読む事もままならないだろう。

「早くサインしろよぉ~」(グリグリ)
「いい加減にしろ馬鹿野郎!」(バシッ!)
顔に押しつけられた書類を引ったくる兄。

「何の書類だコレは!?」
引ったくった書類に目を落とす。
すると兄さんは「嘆願書?」と呟き首を傾げた。

「コレは何だ?」
「説明するのが面倒臭い。ヘンリーはサインだけすれば良いんだよ。それしか出来ないだろ?」
リュカさんから見たら僕等は何も出来ない王族だけど、内容が解らない書類にサインは出来ないでしょうね。

「そんな訳にいくか! それに俺の事を馬鹿にs「あれー? お父さん来てたの……サンタローズに居たのに!?」
兄さんが何時もの様にリュカさんに文句を言おうとしてたら、甥夫婦(コリンズとポピー)がこの部屋に入ってきた。

「あれ、何でサンタローズに居た事知ってんの? ……やっぱりウルフをやり込めたのはポピーか?」
「あははははっ……そうだったら良かったんだけど、今回は何とユニなのよ(笑)」
あのウルフ宰相をやり込められる人物が他に存在する事に驚きを隠せないが、ポピーがここまでの状況を説明してくれる。







「……と言う訳♥」
「なるほどな……この書類はそれに関する事か?」
「そうだよ。だから今すぐ迅速にさっさと一瞬に秒でサインしろ!」
微塵も変わらずに兄をぞんざいに扱うリュカさん……それを見て心から楽しそうにケラケラ笑う甥の嫁。

「急かすな馬鹿! 状況は理解したが書類はまだ見てないんだ……急かすくらいなら説明しろ」
「一からか? 一から説明しないと理解できないのか? どんだけヘッポコなんだお前は!」
兄さんには悪いが、二人の遣り取りは何時(いつ)見ても楽しい。

「ああ、ヘッポコなんで一から説明しろ! ……で何なんだ、この嘆願書ってのは?」
「僕とヘッポコヘンリーの間だけで事を進める訳にはいかないから、フレアさんからの嘆願書を持って来たんだよ。それがあればラインハット王家が動く理由が出来るだろ」

「なるほどな……そうなると次の書類“依頼書”ってのは何だ?」
「ラインハット王家からグランバニア王家への依頼書だ。それがあればグランバニアから人員を派遣しても内政干渉って言われないだろ」

「よく解った。では最後に“契約書”ってのを説明しろ」
「本当に何も解ってないのか!? 契約書は契約を締結する書類で……」
ほとほと嫌気がさした顔でリュカさんが説明を始めるが……

「契約書の意味は解ってる! そういう意味じゃなくて、この契約書を発行した業者の事だよ! “謎のコンサルタント プーサン”って誰だよ? 怪しすぎてサインできるかよ!!」
確かに……企業なのか個人なのかも解らない上に、自ら『謎の』と付けてる辺りが怪しい。

「プーサンは怪しくねーよ。マスタードラゴンが自分の能力を封印して人間の姿になってた時に“プサン”って名乗ってたからプーサンなんだよ!」
ああ、つまりプーサンってのは……

「じゃ、じゃぁこのプーサンってのはマスタードラゴン様なのか!?」
「何でそうなるんだよ!?」
「に、兄さん……流石の僕もヘッポコと呼びたくなりますよ……」

「な、何だよ……デールまで俺をヘッポコ扱いするのかよ!?」
「誰だってそうなりますよ父さん。今のリュカさんの言い方からすれば“プーサン = リュカさん”ですよ」
僕と同じく理解できたコリンズが実父に呆れてる。

「な、何だよ……コイツの考える事なんだから、そんなに単純だとは思わないじゃないか!」
「単純か如何(どう)かは判らないが、内政干渉にならない様に僕とプーサンは別人だよ……って言っておく。勝手に憶測する事は構わないけど、プーサンの事をリュカと呼ぶ事は禁じる」

「わ、解った……で、如何言う経緯で我が王家からの依頼が、このプーサンに行くんだ?」
HH(ヘッポコヘンリー)から来た『民間企業を派遣してくれ』って依頼を受けて、僕がグランバニアで活躍するコンサルタントに依頼を出すんだ。これでグランバニア王家は直接関わらない事になる」

「なるほど……そういう流れか。ラインハットとしてもグランバニアの民間企業に直接依頼を出す訳にもいかないからな」
「そういう事。これで筋は通るし、内政干渉にはなりにくい」
些か強引ではあるが……

「うん、理解した。それで……このプーサンってのは如何(どう)やってサンタローズの教会を建て直すんだ?」
「そんなのは解らん!」

「お、お前……建前上そう言うのは解るけど方針とかはあるんだろ!?」
「方針も何も、フレアさんが行っている日曜日のミサが、如何(どん)な内容なのかも解ってないのに、計画は立てられない。次の日曜日にミサを確認してから計画を立てるんだ。“彼を知り己を知れば百戦殆からず”と言って、何も知らない状況では上手くいかないんだ」

「よ、よく解りました……」
「じゃぁ状況を知る為に、HH(ヘッポコヘンリー)も日曜日にミサの見学ね。迎えに行くのは面倒臭いからポピーも参加って事で!」
そこまで言い切るとリュカさんは踵を翻して帰ってしまった。

相変わらず強引ではあるが、合理的でもある……かもしれない。

デールSIDE END



 
 

 
後書き
結構、長丁場になりそうなストーリーです。 
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