戦国異伝供書
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第百四話 まずすることその五
「今ではじゃ」
「敵同士の様ですな」
「だからな」
それでというのだ。
「あの家についてもな」
「用心すべきですな」
「うむ」
「そのうえで関東でどうしていくか」
「そのこともわかっておるな」
「そのことは」
「ならよい。この二つの家とは争うべきではない」
今川家そして武田家とはというのだ。
「出来るだけな」
「若し争っても」
「こちらからはな」
まさにというのだ。
「積極的にはな」
「仕掛けずですな」
「相手の領内にもじゃ」
そちらにもというのだ。
「入らぬことじゃ」
「はい、どちらもです」
実際にとだ、氏康も答えた。
「どうもです」
「お主もじゃな」
「そう考えています」
「それがよいな」
「当家はです」
「関東で生きるべきじゃな」
「そう考えています、関東管領になれば」
それでというのだ。
「充分です」
「全くじゃな」
「はい、ですから」
「甲斐や駿河にもじゃな」
「入らぬ方が。駿河にも当家の領地はありますが」
それでもというのだ。
「あの領地もです」
「必要とあればな」
「はい、今川殿に差し上げて」
「そしてじゃな」
「今川殿との遺恨を清算してです」
「また手が結べばよいな」
「そうも考えています」
「ではそのこともな」
氏綱は氏康のその話を聞いて述べた。
「お主に任せる」
「それでは」
「うむ、その様にな」
「その様にします」
「それではな、やはり我等の場所は関東じゃな」
「そこになるかと、関東の覇者になれば」
そして関東管領になればというのだ。
「それで満足で」
「それでじゃな」
「奥羽にもです」
そちらにもというのだ。
「行くことはです」
「ないな」
「はい、全く」
「あちらにはそれぞれ探題殿がおられる」
「そこに入ることはないかと」
一切というのだ。
「ですから」
「例え都の戦から幕府は力がなくなりな」
「はい、そしてですな」
「今では山城一国もな」
それを治めることもというのだ。
「難しくなってこの東国でもじゃ」
「公方様の力は弱まっています」
「鎌倉にも入られぬ程じゃ」
そこまで弱まっているというのだ。
「もう何の力もない、しかしな」
「それでもですな」
「名はある」
それはというのだ。
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