戦国異伝供書
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第百三話 緑から白へその八
「常にな、だからな」
「それで、ですな」
「我等はですな」
「内で争わず」
「そうしてですな」
「まとまっておってな」
そしてというのだ。
「力を合わせてじゃ」
「ことを進めていく」
「そうあらねばなりませんな」
「当家は」
「当家は鎌倉も領地にしておるが」
先熊はさらに話した。
「鎌倉殿の話は聞いておろう」
「はい、身内で何代も互いに争い」
「血で血を洗う殺し合いを続け」
「そして遂には誰もいなくなった」
「そうなりましたな」
「あれは実に酷い、むしろ平家の方がな」
この家の方がというのだ。
「よい位じゃ」
「左様ですな」
「むしろですな」
「あの家の方がいいですな」
「どうも」
「左様、入道殿は色々あったが」
平家物語に語られていることからの話である。
「しかしな」
「それでもですな」
「家はまとめておられましたな」
「左様でしたな」
「家臣達もな」
彼等もというのだ。
「内で揉めず」
「まとまっておく」
「それも常に」
「それが大事ですな」
「そうじゃ、家は常に一つであるべきじゃ」
何といってもというのだ。
「家臣達もな」
「そうすれば弱まらずですな」
「強くなっていき」
「そしてですな」
「やがては」
「両上杉を凌駕してな」
そこまでの力を得てというのだ。
「そしてじゃ」
「やがてはですな」
「関東も我等のものと出来る」
「そうなっていきますな」
「左様、ただな」
ここでだ、伊豆千代はふと考える顔になってこうも言った。
「お主達駿河や甲斐のことは聞いておるな」
「はい、どちらの跡継ぎの方もですな」
「非常に出来た方だとか」
「そう聞いております」
「今川家はどうも出家されて都におられる四男殿がな」
その彼がというのだ。
「どうもかなりの方という」
「都の方ですか」
「今は出家されている」
「その方がですか」
「そう聞いた、あと武田家は跡継ぎ殿だけでなく弟君達も出来た方々という」
彼等もというのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「我等もですな」
「用心すべきですな」
「この二つの家についても」
「左様、用心してな」
それでというのだ。
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