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戦国異伝供書

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第百二話 家臣にしたい者その九

「確かに竹槍や鍬や鎌も武器になるが」
「兵法を知る将もおらぬので」
「烏合の衆ですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「宗滴殿が優れた方でもな」
「一向宗がそうした者達であることも頭に入れる」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「考えるとな」
「何倍もの数の侍の軍勢が相手では」
「宗滴殿も勝てぬ、まして織田家は智将猛将が揃っておる」
「ならばですな」
「勝てるものではない」
 到底というのだ。
「それではな」
「では織田家と朝倉家が争えば」
「織田家が勝つ」
「間違いなくですな」
「だがそれも数年先、暫く東海や近畿、四国に山陽と山陰はな」
 即ち西国はというのだ、箱根の関から西が西国である。
「これといってな」
「戦はですな」
「なくな」
「穏やかになりますか」
「そうなるであろう」
 まさにというのだ。
「それ自体はよいことじゃ」
「左様ですな」
 元網もその通りだと微笑んで頷いた。
「全く以て」
「そうであるな」
「はい、それで兄上明日は」
「うむ、義母上のところにな」
「参上されますな」
「その様にする」
 こう元網に名乗った。
「これよりな」
「そうされますか」
「茶を持って行ってな」
「今は義母上様もですな」
 元就にとって義母なら元網にとってもそうなる、それで彼もまた杉大方をこう呼ぶ様にしているのだ。
「茶を」
「そうじゃ、それもな」
 その茶もというのだ。
「普通に飲んで頂ける様になった」
「我等が豊かになったので」
「それに近頃茶自体もな」
「前よりも手に入る様になりましたな」
「わしの若い頃と比べるとな」
「遥かにですな」
「あの時は今よりもずっと高かったが」
 それがというのだ。
「随分とじゃ」
「安くなりましたな」
「そのこともあってな」
「義母上様に普通に飲んで頂ける様になりましたな」
「そして我等もな」
 元就は笑ってこうも話した。
「今ではな」
「普通に飲めますな」
「毛利家も天下も変わったな」
「実に」
「気付けばじゃ」
 まさにと言うのだった。
「そうなっておったわ」
「これまで色々とありました」
「安芸の中で戦ってな」
「大内家とも尼子家とも戦い」
「大内殿に従ったりしてな」
「尼子家とも多くの国を巡って争った」
「そして大内家を乗っ取った陶殿を破り」
 厳島のことも話した。
「そしてですな」
「尼子家も滅ぼした」
「思えば色々ありましたな」
「全くじゃ」
 まさにというのだ。 
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