春のピクニック
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第一章
春のピクニック
「ピクニック?」
「それに行かない?」
俵あず未は夫の翔太に提案した。夫の日本人離れした彫にいささか中性的な顔を見ながら。
「今度の休みは」
「ピクニックか」
「春だし」
あず未はにこりと笑って言った、色白でややはっきりとした垂れ気味の蒲鉾型の目で黒髪を後ろに伸ばして胸のところにも垂らしている。眉ははっきりとしていて直線状だ。胸が目立つ。すこしふっくらとした頬で背は一五五程である。
「だからね」
「そういえばいつも」
結婚するまでとしてからのことを振り返って夫は言った。
「僕達のデートって」
「街中でしょ」
「映画館とか水族館とか」
「テーマパークとかね」
「あと博物館とか美術館とか」
「だからたまにはね」
「自然の中に行くんだ」
「それでね」
妻は夫に微笑んで話した。
「今度はね」
「ピクニックか」
「近所の山に登って」
そしてというのだ。
「そこの頂上の公園までね」
「行こうっていうんだ」
「お弁当作って持って行って」
あず未はにこりと笑ってこうも言った。
「そうしない?」
「そうだね」
言われてみればという感じでだった、翔平は妻に答えた。外見だけでなく声も中性的だ。ただし上方は茶色が入った七三で七の方を長くビジュアル系に伸ばしている。そして背は一七四程で身体つきも引き締まっている。
「それじゃあ」
「二人でね」
「そうしよう」
こう話してそうしてだtった。
二人でピクニックに行くことにした、その前日二人はピクニックの用意をしたがあず未は翔太に笑顔で話した。
「お弁当は楽しみにしていて」
「僕も手伝うよ」
翔太は仕事をするし家事もする、かなり出来た夫である。尚あず未もそれは同じだ。共働きで頑張っているのだ。
「お料理なら」
「いえ、それはね」
「ひょっとして」
「そう、翔太君を驚かせたいから」
その作った弁当でというのだ。
「だからね」
「それでなんだ」
「もう食材も調味料も買って」
そしてというのだ。
「明日の朝早く作ってね」
「それでなんだ」
「お昼に食べましょう」
ピクニックに行ったその時はというのだ。
「その時楽しみにしていて」
「サプライズだね」
「そうだよ、ただね」
「ただ?」
「あず未ちゃんがサプライズしてくれるなら」
それならというのだ。
「僕もね」
「用意してくれるのね」
「何かね。楽しみにしていてね」
「ええ、その時にね」
こうしたことも話してそしてだった。
二人はその日曜日仲良くピクニックに出発した、ラフで動きやすい格好になって帽子を被ってリュックを背負ってだった。
出発した、二人が住んでいるアパートの部屋から歩いて近くの山まで登った、山に入って道を進むと。
小鳥の鳴き声が聞こえてそうしてだった。
道の左右の木々の間から日光が見える、翔太はそうした中にいて思わず言った。
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