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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第十三話~事務~

 
前書き
今回からタグの中に「オリジナル設定」「自己解釈」を追加します。

 

 
機動六課・デバイスルーム


 少し薄暗い部屋の中で三人は話していた。

リイン「ではライさん。これがあなたのデバイスです。」

 リインフォースがそう言うと隣にいたシャリオがライに蒼のペンダントを渡す。
 そのペンダントは見た目は深い蒼色であったがそこから感じるのは暗さや負のイメージではなく、全てを包み込み様な深さを秘めたものであった。形は菱形に近く、ライが元の世界で使っていた月下の起動キーと酷似したものである。
 受け取ったライはデバイスを起動させ感触を確かめる。

ライ「セットアップ」

 ライがそう言うとひと振りの剣が現れる。それを見ていたリインフォースは言葉をかける。

リイン「起動したらショートソードのアームドデバイスになります。基本はこの前の模擬戦の時に使ったものと同じですから違和感はないと思いますよ。」

 先日のシグナムとの模擬戦でのデータから、ライの基本スタイルとして近接戦を想定したデバイスの調整がされていた。その結果デバイスの形状はそのままに強度の強化と中身のシステムの向上をすることになったのである。
 感触に納得がいったのか、ライはデバイスを待機状態に戻し二人の方に向き直り尋ねる。

ライ「頼んでおいたセンサー類と通信システムの強化は?」

リインフォース「はい、できていますよ。でもよかったですか?ヴェルカ式のカートリッジシステム分のキャパシティを全て他の機能、特にセンサー類に回して?」

 ライがデバイスの開発を行う際に出した条件がそれであった。訓練を開始してからはデバイスの開発にまで手が回らなかったため、システム関係の調整は二人に任せていた。
 開発当初はカートリッジシステムを搭載する予定であった。しかし模擬戦や訓練中にライはカートリッジの使用に違和感を感じたのだ。その為に途中からカートリッジシステムの搭載を見送り、その分他のスペックの向上が図られた。
 リインフォースの質問に苦笑しながらライは応える。

ライ「僕に求められている本来の役割は戦闘力じゃなくて戦闘指揮。だから、全体の把握と迅速な通信は必須になる。それにカートリッジシステムを使いこなすには魔法を熟知している人間にしかできない。それに違和感を感じる武器は己を追い詰めることにもなるから。」

 ライの答えに納得した二人は「なるほど」と頷く。
 ライが六課に協力する際に出された条件の中に「ナイトメア戦になった場合、戦闘指揮の権限を与える」というものがあった。この条件を出したのははやてで、リニアレールの際の指揮とナイトメアフレームの知識を持つライの方が自分よりもうまく対処出来ると判断したのだ。

リイン「では、最終確認です。現時点でこのデバイスにはリミッターが設定されています。これはライさんの能力に合わせるためです。」

 ライは魔法のレベルは一般の魔道士と遜色のないものとなっていた。しかし魔道士としてはまだ駆け出しのため、身体にかかる負担を考慮しある程度のリミッターをかけることになっていた。この提案をしたのはなのはでライもすぐにこの提案を受け入れた。だが、ライはあくまで民間協力者のためリミッターの解除は個人の判断で解除出来るようになっている。このことに何人かは渋い顔をしていたがライの「無茶はしない」という言葉に渋々ながらも納得した。
 リインフォースがデバイスの確認事項を上げていき最後に尋ねた。

リイン「何か質問はありますか?」

ライ「例のシステムと“あれ”は…」

リイン「システムの方はあと調整だけです。でもあの子の方はまだ……」

 そう言うリインフォース達の視線の先に一機の待機状態のデバイスが浮かんでいた。



機動六課・隊舎内廊下


 自分のデバイスを受け取ったライは今日参加する午後の訓練まで時間が空いていた。最初は訓練に途中参加しようとしていたがほとんど休みを取っていないことをリインフォースとシャリオに言われたため参加できなかった。

ライ(さて、これからどうするか……ん?)

 ライがこれからどうするか考えながら歩いていると、廊下の向こうから書類の山を抱えたはやてが歩いてきていた。

ライ「はやて。」

はやて「ん?その声はライ?」

 書類のせいで前が見えていないはやては声でライを判断していた。

はやて「どないしたん?」

ライ「いや、大変そうだから手伝おうと思って。持つよ。」

 そう言うとはやてから書類の山を受け取る。

はやて「助かるわ、おおきに。」

ライ「それでどこに持っていくの?」

はやて「隊長室や。行こか。」

 そう言うと二人は歩き出す。廊下に二人の足音だけが響いていた。なんとなく気まずく感じたはやてはライに話しかける。静けさよりも少し騒がしい方が好きな彼女にとっては足音だけ響くのは耐え難いのであった。

はやて「ライは何してたん?」

ライ「訓練は午後からの参加だからこれから何するか考えていたときにはやてと会ったんだよ。」

はやて「ほうほう。タイミングバッチシやったわけや。」

ライ「ははっ、そうだね。」

 他愛の無い会話をしていると隊長室にいつの間にか到着していた。はやてが扉を開けると中に入る二人。入った瞬間ライはギョッとした。

ライ「……はやて。」

はやて「……言いたいことは分かるけど何?」

ライ「……」

 はやての質問には答えずライはただ“それ”を見ていた。はやては“それ”を疲れきった目で見ていた。二人が見ているのははやてのデスクの上に所狭しと積まれている書類、書類、書類、書類……とにかく書類。少なくとも一日で処理できる量を超えている。
 それを見て流石に見ないふりはできないと思ったライは提案する。

ライ「僕が見ることができる書類だけでも整理しようか?」

はやて「ふぇ?」

 ライの提案が意外だったのか間抜けな声を出し、呆けた顔をしながらライを見上げるはやて。その表情を見て口元が緩むのを自覚しながらも言葉を続ける。

ライ「前の世界では生徒会の書類仕事とか、“職場”の方でも書類作成や処理をしていたから専門的なのはできなくても簡単なのは出来ると思う。」

 ここまで運んだ書類の中にはライでもわかる程度のものあったためその提案をした。
 その提案をされたはやては救世主でも見るような目線をライに送りながら提案を受け入れた。

 書類仕事を二人で処理し始めて二時間。机の上の書類は半分近く減っていた。当初は雑用的な書類のみを渡していたが、ライ自身の処理能力の高さと手際の良さからそれ以外の書類も担当してもらっていた。それでも機密に関わるものは避けていたが。ちなみライはミッド語は普通に読み書き出来るようになっている。元の世界の主流言語が英語だったために、英語と酷似していたミッド語は簡単に覚えれることができた。
 ある程度書類が一段落し、休憩しようと思いはやてがライに声をかける。

はやて「ちょっと休憩しよか。コーヒーいる?」

ライ「うん…ありがとう…」

 手を止めずに返答するライに苦笑しながらも、部屋に備え付けのコーヒーメーカーを使いコーヒーを準備する。部屋に香ばしい匂いが立ち込めていく。
 鼻腔をくすぐる香りが届き顔を上げるライ。はやてはライにコーヒーの入ったカップを手渡す。コーヒーの温もりがカップ越しに手に伝わる。それを心地よく感じながら口にする。

ライ「…美味しい。」

 口に広がる苦味と旨みを堪能する姿を微笑みながら眺めるはやて。

はやて「美味しさの秘訣は美人がいれることやで。」

ライ「?確かにはやては美人だけど……どうして?」

はやて「えっ…あぅ……」

 冗談半分で言ったことに真面目に答えられ、どもってしまう。からかう側に率先して立つ彼女は逆にからかわれる事には慣れておらず、しかも相手は天然且つ純真な切り返しをしてきたため動揺した。

はやて(顔が熱い、今絶対顔があこうなっとるぅ!)

ライ「?」

 ライは挙動不審なはやてを疑問に思いながらも書類を片付けていく。この程度で作業が止まるようではアッシュフォード学園での仕事はこなせないのだ。
 最終的にお昼までに書類の半分以上を処理できたがライが抜けてからは書類の減りが明らかに遅くなり、その日の内には終えることができなかった。
 
 

 
後書き
今年最後の更新です。
来年もよろしくお願いしますm(_ _)m

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