| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドラゴンクエストⅤ〜イレギュラーな冒険譚〜

作者:むぎちゃ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七十話 天空人

 
前書き
ミレイと共に自分も大人になったのだなぁと実感しています。

そして投稿開始から6年、やっと70話ですよ。

 

 
 エルヘブンから南下する事しばらくが経ち、岩が高く積み上げられた洞窟に私達はたどり着いた。
「まさかここまで岩が積み上がっていたとはね……」
 この岩の山を崩して、洞窟を開通させるのは骨が折れそうだ。
「ゴムレス、できる?」
 ここに向かう道中で仲間になったゴーレム、ゴムレスにタバサが聞いたけれどゴムレスは首を横に振った。
「となるとあの杖の出番というわけか」
「塔でおじいさんからもらった杖だよね」
 かつて天空の勇者とその一行は岩が立ち塞がった際にマグマの杖で岩を吹き飛ばしたという。
「わかりました、私やってみます」
 タバサがマグマの杖を高く突き上げる。
 すると杖の先端の光球が赤く強く輝きだして、とてつもない熱を持った魔力が勢いよく迸った。
「これ程の魔力ならきっと岩を吹き飛ばせる…………!」
「でも先生! これだけの魔力私1人じゃ制御しきれません!」
 タバサの言う通り、杖に長年貯めこまれていた魔力は膨大でタバサ1人じゃ制御しきれない。きっと完全に解放されてしまったら私達も巻き添えを食らう。
「タバサ、もう少ししたら杖を思いっきり岩の方に投げてそれで一旦ルーラでマグマを回避して!」
「わかりました!」
 吐き気を催す程周囲は熱気に包まれて、杖からは轟音が響いてくる。
 もはや目を開けているのが困難なぐらい杖は輝きを放っていた。
「今よ、タバサ!」
 私の合図と同時にタバサは杖を思いっきり岩の方に投げた。
 光の棒のようになったマグマの杖は熱気と轟音を発しながら岩へと落ちていく。
「ルーラ!」
 杖が落ちる寸前にタバサのルーラが完成。
 私達は一気に空中へと舞い上がる。
 空から見下ろすと、杖から解き放たれたマグマが岩をいとも簡単に溶かし、崩し、吹き飛ばすのが目に入った。
 もしルーラで回避しなかったらあのマグマの巻き添えになって死んでいたと思うと鳥肌が立った。
「私あの杖握っているのすごく怖かったです……」
 地上に着地するなり、タバサはそう言った。
「怖かったわね、でももう大丈夫よ」
 地面に転がっているマグマの杖は多少の魔力は残っているから魔法の武器としては普通に使えるけれど、あれだけの現象はもう起こせない。
「マグマすごかったぁー!もう一回見たい!」
 怖がっていたタバサとは反対にレックスは楽しそうにはしゃいでいた。
「お兄ちゃんったら! 私本当に怖かったんだからね!」
 そんな兄妹のやり取りを微笑ましく眺めつつ、私達は開いた洞窟へと入る。
「うわぁ、すごい……」
 洞窟に入るなり、レックスが声を漏らしたけどそうなるのも当然だ。
 だってこの洞窟には辺り一面に線路が敷かれていて、その上をトロッコが走っていたんだから。
 元の世界でこんな感じのアトラクションに乗った事があるけれど、まさしくこの洞窟はそのアトラクションの世界だった。
「徒歩よりもあの乗り物を使った方が目的地には早くたどり着けるだろう」
「問題はどうやって操作するかですな」
 ピエールの言う通り、トロッコは何らかの規則性があって動いてるみたいだけど私達にはその把握ができないし、何を持って動いているか不明な以上利用する事も出来ない。
「とりあえず周辺を探索しましょう。そうすればトロッコの制御法がわかるかもしれない」
「よし、それで行こう」
 洞窟内は明るかったから探索には困らなかった。
 魔力の流れから察するに明かりがこの洞窟には設置されているし、トロッコの存在から元々この洞窟は人工的に造られた事は明白だった。
 ただこれまで類似の技術を外部で一度も見かけなかった事からここにあるものはオーパーツの類だろう。
「先生、魔物の気配がします。それもたくさん」
「場所は?」
「あっちに」
 タバサが指した方向を見ると、沢山の魔物が何かを取り囲んでいた。
 よく見ると魔物達が取り囲んでいたのは1人の男性だ。
「助けなきゃ!」
「待ちなさい」
 慌てて剣を抜こうとするレックスを静止する。
「ここであなたが剣を抜いたところであの人は助けられないわ。まずは魔物の動きを迅速に止める必要がある」
 私は振り返ってタバサを見た。
「タバサ、ラリホーマを魔物の群れに」
「はい、先生」
 タバサがラリホーマを発動するのと同時に、私もメダパニとマヌーサを魔物の群れにかける。
 魔物の群れ全ての動きが麻痺したのを見計らって私達は一気に男性の元へと駆け出した。
「大丈夫ですか、すぐにこちらに!」
「はい、ありがとうございます!」
 男性の腕を引っ張り出し、魔物達との距離を充分に取った事を確認してから魔物達の処理に入る。
「バギクロス!」
「ライデイン!」
「ベギラゴン!」
 アベル、レックス、タバサの魔法がそれぞれ一気に魔物の群れに襲い掛かりあっという間に殲滅する。
 状態異常魔法で行動が低下していたところに上級魔法を3つも同時に叩きこまれた魔物はなす術もなく倒されるだけだった。
「いやー、死ぬかと思いましたが何とか助かりました。本当にありがとうございます」
 男性はこの洞窟には不自然で、挙げられる特徴と言えばかけている眼鏡しかない、どこにでもいそうな中年男性だった。
「申し遅れました、私はプサン。信じられないかもしれませんが、私天空人なんですよ」
「……………………」
 私達はしばらく互いの顔を見合わす。
 そして。
「ええええええええええええ‼‼」
 余りにも信じ難い事実に驚愕する事しかできなかった。
 

 


 






 

 
 

 
後書き
仲間モンスターの扱いってすごい難しいですね。

公式の小説版ドラクエでも仲間モンスターは途中離脱だったりいるだけになっていたのでやはり沢山のキャラクターを捌くというのはそれだけ難しいという事で。

そしてやっとプサンが登場です。流石に20年もトロッコは間抜けすぎたので変えました。



 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧