| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドリトル先生と琵琶湖の鯰

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一幕その九

「告白とかプレゼントとか」
「されたことはないですね」
「一度もね」
「そう思っておられるんですね」
「いや、事実だからね」 
 先生は疑っていない笑顔で言い切ります。
「本当にね」
「ですからそこをです」
 トミーはそんな先生に呆れつつさらに言います。
「疑って」
「そしてかい?」
「動かれてはどうですか?」
「いや、そう言われてもね」
 やはり笑って言う先生でした。
「僕はね」
「もてないんですね」
「女性には一生縁がないから」
「サラさんも全く違うこと言ってるよ」
「それはサラの誤解じゃないかな」
「やっぱり先生はもてないですか」
「そんなことは一度もないよ、恋愛の知識は文学での知識だし」 
 それで知っているというのです。
「だからね」
「それで、ですか」
「実際の経験はないしね」
「気付かなかっただけじゃないですね」
「僕もそれ位はわかるよ」 
 まさにという返事でした。
「自分がもてないことはね」
「本当に疑っておられないですね」
「全くね」
 まさにというのです。
「僕は」
「そうですか」
「そう、そしてね」
 さらに言う先生でした。
「僕は皆と一生仲良く。お世話になってね」
「日常生活のことはですね」
「暮らしていくよ」
「正直僕はこう思っています」
 トミーは先生とここまでお話して完全に呆れた目になっています、そしてその目で先生に言いました。
「これは苦労すると」
「苦労するっていうと」
「ですから先生のそのことについて」
「いや、トミーも誰も苦労しないよ」
 先生だけが思っていることです。
「僕は恋愛とスポーツには無縁だからね」
「ご自身はですね」
「だからね」 
 それでというのです。
「もうね」
「僕達も苦労しないで」
「平和に過ごしていけるよ」
「本当にもてないと思われていますか」
「事実は否定出来るかな」
「出来るものじゃないっていうんですね」
「そうだよ、例えば日本海を違う名前の海だって言っても」
 例えそうしてもというのです。
「それは事実じゃないからね」
「日本海は日本海のままですか」
「他の呼び名にはならないよ」
 それは決してというのです。
「例えどう呼んでもね」
「そして先生がもてないこともですか」
「事実だからね」
 それ故にというのです。
「変わらないよ」
「全く、先生のこの考え変わらないね」
「もう最初から確信しているから」
「他のことは聞いてくれる人なのに」
「どういう訳かこのことだけは聞いてくれないから」
「僕達も困るよ」
「本当にね」
 動物の皆もやれやれとなっています。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧