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曇天に哭く修羅

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第四部
  Bブロック 7

 
前書き
_〆(。。)

 

 
「【天騒翼/てんそうよく】」


春斗の背中から翼。

白と黒の一枚ずつ。

白からは風、黒からは雷。


(攻撃範囲が広いわけじゃない。けどピンポイントで狙えるから使える場所も多いのか。大技で周囲を巻き込むことも少ない能力だね)


春斗はエネルギーを収束させて攻撃できる範囲を狭くしたが、そのぶん攻撃は速くなり、貫通力も通常より増している。

向子は【空間移動(テレポート)】で風と雷の前に有る空間をずらし、自分の居る空間も移動させることで、防御と回避を同時に行う。


(会長の空間移動は空間をパズルのように、大量のピースで組み上げられた一つの構成物として扱うことが出来るのかもしれない)


しかも組み方は自由自在。

動かした空間が有った所には別の空間が移動して、抜き取られた穴を埋めるので空間的には特に大きな問題が起きないようだ。


「もしこれと類似した能力がもう一つ出たら、今の俺にはどうしようもないだろうな……。それを使う相手にもよるが……」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「ん~やっぱり面倒臭いね」


島崎向子(しまざきこうこ)》は《江神春斗(こうがみはると)》の解放された魔晄外装【天譴(てんけん)】によって現れる鎧兜を着込んだ巨人の手足や刀の圧倒的なパワーに手を焼いていた。


(いや、そりゃあ『(かな)リン』よりましだよ? 何とか出来る範囲だしね)


だが公式戦でそこまでしない。

観客が避難した後とは言え、そこまでしたら色々と不味いことになるだろう。


(【魔獣領域】を舞台にして戦うか、【旧支配者/オールドワン】を相手にしてるなら、そこそこの犠牲者を出しても目を(つぶ)ってもらえるかもしれないけど、その後がねぇ……)


問題が有ると解っているからこそ、春斗も全ての動きを天譴にトレースさせない。


「うぉっ!?」


向子の真上から巨人の足裏。彼女は手を(かざ)す。彼女の左腕にはワープゲートから出した小さな黒い欠片が集まって包み込んでいく。

龍帝学園の全体を揺らすほどの巨体と重量が向子を踏み潰そうと足を下ろす。


「まったく以て気を使うね」


向子は左腕一本で何千トンも有りそうな黒い鎧武者の足を支え、受け止めていた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


巨人の足が消えた後、向子の左腕を見た春斗は彼女の腕に密集した大量の黒い欠片を見て、あれが何なのかを思い出す。


「確か……あれは会長がゲートから出して俺が叩き落とした何かだったな。気になってはいたんだが……もしかして防御と強化をしてくれる能力の媒体(ばいたい)だったのか?」


向子は天騒翼で飛ぶ春斗を見て笑う。

そして何かを口にした。


「【制御解除(リベライル)第一解除(アインス)】」


彼女の威圧感が増して重くなり、緊張感は空気で刺すような痛みを与える。

しかし春斗は怯まない。


舞狂悪魔(エイレナオス)】で操る666本のナイフを【魔晄(まこう)】で強化し、【神速斬光(エル・グリント)】で運動性能を高め、天騒翼の風と雷を付与して補助。

舞狂悪魔の能力単体よりも遥かに強力なそれは、能力本来の性能を10倍20倍にしたくらいで済むようなものではない。


「足だけとは言え、天譴のあれを腕一本で受け止めたのは見事ですが、これは腕一本だけで凌げるものでは有りませんよ会長?」


春斗が腕を振り下ろすと全てのナイフが摩擦と断熱圧縮で燃えながら光を放ち、向子を目掛けて流星のように墜ちていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「そう来たかー。でもそろそろだろう? 【超能力】や【異能】を『同時』に使えば[消耗]が大きくなる位で済むけど『合体』や『融合』させて使うと負荷が強いだろうからね」


向子は左腕に付着していた黒い欠片を全身に広げると、覆い尽くすように(まと)った。


「【黒死蝶の鎧】」


彼女は防御を固めると、そのうえで【制御解除・第一解除/リベライル・アインス】したことによって得られた力と恩恵を使って666本のナイフに対応していく。


空間転送(アスポート)


向子に近付いたナイフが次々と消えた。

次に現れたのは春斗の周囲。

しかも刃は全て彼に向いている。

ナイフは向子に対して突き進んでいた勢いそのままに春斗へ飛んでいく。

春斗はヒヤリとしながら回避。休むこと無く襲ってくる自分のナイフをやり過ごしながら注意は向子へ置いたまま、彼女のことを観察。


(能力の発動が早くなったか?)


春斗が見る限り、向子は接近する666本のナイフを一つずつワープさせているようにしか思えないが、もしそうなら驚異的だ。


空間近奇(アポートス)


春斗の近くに有ったナイフが向子の元へ。

それは他のナイフと衝突。

更に【空間接続(アクセション)】も併用。

ゲートからナイフが飛び出す。

あちらこちらでナイフが飛び交い、ところ構わず衝突し、見る影も無く砕けていく。

3つの空間能力から逃れたナイフも

【禁鞭】

空間振動(シェイキング)

空間歪曲(グラインド)

によって数を減らす。


「そんな出鱈目(でたらめ)な……」


春斗は舞狂悪魔を解除してナイフを消した。


(あのナイフは666本が全て壊れてしまったら次に使うまでインターバルが出来るからな。一旦戻した方が良いだろう) 
 

 
後書き
ワープゲートから出した黒い欠片はBブロック5くらいで出てたかな?

制御解除は別作品の設定。

空間転送(アスポート)は巨大なものを転移させるのには向いていません。それは空間跳躍や空間接続でやりますね。

近付いてくるナイフを空間転送で春斗の周りに転移させつつ空間近奇(アポートス)で自分の近くにナイフを転移させ、ガードに利用。

空間接続(アクセション)のゲートを開いて空間転送と空間近奇の2つとは別にナイフを往き来させる。

前兆無しでいきなり現れたり消えたりするナイフと解りやすくゲートから出てくるナイフの組み合わせで頭が余計に混乱しますね。
_〆(。。) 
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