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父と猫

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第三章

「定年したらどうしようか」
「そう思っていたの」
「新しい趣味でも見付けようかってな」
 その様にというのだ。
「思っていたけれどな」
「その時になのね」
「チョビと出会ってな」
 それが出来てというのだ。
「本当にな」
「よかったのね」
「ああ」
 妻に心から微笑んで述べた。
「そう思ってるよ」
「そうなのね、ただね」
「ただ?」
「チョビに助けられたみたいに言うけれど」 
 妻はそのチョビをさすりつつ笑顔で話す夫に話した。
「それはチョビもよ」
「そうなのか」
「だって事故に遭ってあなたが拾わなかったら」
「どうなっていたかわからないか」
「だからね」
 妻は夫に猫を見つつさらに話した。
「あなたもチョビもお互いにね」
「助かったのか」
「助けてもらってるのよ」
「そうなんだな」
「偶然でも会わなかったらね」
「お互いがどうなっていたかわからないな」
「こうしたことは神様次第ね」
 妻はこうも言った。
「何時誰とどうして会うかは」
「そんなこと人間じゃどうにも出来ないな」
「そうでしょ、だから神様の配剤でね」
 それでというのだ。
「チョビも怪我したけれどあなたに出会った助かってあなたもね」
「そのチョビに助けられてるか」
「一緒にいれてね」
「一緒にいないと定年してからこんなに癒されてチョビの為に何かすることもなくて」
「そういうことよ」
「全部神様の配剤か」
「お互いに助かることはね」
 まさにというのだ。
「神様がしていることよ」
「そうか、じゃあチョビこれからも神様に感謝してな」
 夫は今も自分の膝の上にいるチョビを見て彼女に声をかけた。
「一緒にいこうな」
「ニャン」
 チョビは父に一声鳴いて応えた、そうして父の膝の上にい続けた。父も母もその彼女を見ながら笑顔でいた。


父と猫   完


                2020・8・26 
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