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戦国異伝供書

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第百一話 出雲攻めその四

「尼子殿は出られぬ、それと尼子殿は」
「はい、ここでですな」
「ご当主殿が変わられましたな」
「そうなりましたな」
「うむ、それでじゃ」
 尼子晴久、彼が前に亡くなったこともというのだ。
「わしが思っておることじゃが」
「尼子殿について」
「そのこともですか」
「言われますか」
「うむ、それはじゃ」
 まさにというのだ。
「残念であろう」
「我等と雌雄を決することが出来ず」
「それで、ですか」
「尼子殿は無念に思われている」
「そうなのですか」
「そうであろう、武士ならばじゃ」
 元就は強い声で話した。
「やはりな」
「戦で、ですな」
「雌雄を決する」
「それこそが本懐なので」
「それが出来なくて」
「そうじゃ、そこは思うところがある」
 元就にしてもというのだ。
「わしもあの御仁と雌雄を決したかった」
「左様ですか」
「殿にしましても」
「そう思われていますか」
「今も」
「左様、しかしな」 
 それでもとだ、元就はさらに言った。
「人の生死はわからぬ」
「何時死ぬか、ですな」
「それは天命のことなので」
「それで、ですな」
「尼子家の先の主殿のことも」
「世を去っては仕方ない」
 最早というのだ。
「それはな、だからな」
「そのことは、ですな」
「もういいとして」
「そして、ですな」
「あらためてですな」
「尼子家を攻めていくぞ」
 元就はおおよその戦の進め方を話してだった、実際に領地の出雲との国境に兵を集めたうえでだった。
 尼子家の諸城に使者を送りそうして一城ずつ引き込んでいった。どうしても降らぬ城には兵を送ってだった。
 攻め落としていった、そうしつつだった。
 尼子家を追い詰め遂に月山富田城のみとなったところで元就はまた言った。
「ではな」
「これよりですな」
「月山富田城を攻めますな」
「そうしますな」
「これよりそうしますな」
「そしてじゃ」 
 そのうえでというのだ。
「あの城を攻め落とすぞ」
「遂にその時が来ましたな」
 隆元が父に強い声で言ってきた。
「ここで」
「うむ、だからな」
「それで、ですな」
「これよりな」
「出陣して、ですな」
「今我等の兵は五万五千」
 元就は兵の数から話した。
「そのうちの四万四千を用いてじゃ」
「そうしてですな」
「あの城を囲み」
 そうしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「兵糧攻めか、ですな」
「攻め落とす」 
 その様にするというのだ。 
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