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戦国異伝供書

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第百話 両翼を奪いその二

「よいな」
「くれぐれもですな」
「そうしてですな」
「無闇に負けぬ」
「そうしますな」
「勝てなくとも負けなけばよい時もある」
 だからだというのだ。
「そうした者達に対してはな」
「戦わず、ですな」
「そうして負けず」
「それでやり過ごすのですな」
「その他の戦で勝てばな」
 それでというのだ。
「よいからな」
「そうしますな」
「その山中という者については」
「その様にしていきますな」
「十人衆にも」
「守りを固めてな、そういえばこの者は三日月を信仰しておるというが」
 元就はこのことも話した。
「これは強者を倒してからというな」
「その様ですな」
 志道がその通りだと応えた。
「どうやら」
「その時に願掛けか何かをしてな」
「そしてです」
「その強者を倒すことが出来て」
「それからのこととか」
「そう聞いています」
 まさにというのだ。
「それがしは」
「成程のう」
「はい、兎角です」
「今の尼子家では猛者としてか」
「若いながらも頼りにされています」
「それはわかった、だがその者は血筋はよくないな」
 元就は山中のそのことを問うた。
「尼子家の家中で」
「左様です」
「しかも若いな」
「近頃名を知られた御仁です」
「なら兵は多くは預けられぬな」
「譜代の重臣の家でなくですな」
「それで若いとなればな」
 まさにというのだ。
「然程な」
「多くの兵は預けられぬ」
「そして十人衆とやらも」
 山中と志を同じくする彼等もというのだ。
「少し名を聞かせくれるか」
「こうした者達であります」
 志道は十人衆の名を全て元就に話した、元就はその名を全て聞き終えると眉を顰めさせてこう言った。
「悪ふざけの様な名の者ばかりであるな」
「それがしもそう思いました」
 志道もであった。
「まさに」
「そうであるな」
「はい、真の名とはです」
「思えぬものがあるな」
「どうも」
「全くじゃ、聞いたこともないどころかな」
「胡散臭い者達ですな」
 元就に対して問うた。
「どうにも」
「そう思えるな」
「はい、実際にどの者も素性もこれまでのこともです」
「わからぬか」
「そうした者ばかりです」
「武田家には真田源次郎殿という智勇兼備の若武者がおるという」
 元就は甲斐のこの家の話もした。
「そしてその家臣に真田十勇士という猛者達がおるというが」
「その者達はですな」
「天下に聞こえた一騎当千の忍の者達という」
「真田家は忍も使う家故に」
「真田家自体が忍の棟梁と言っていい位であるからな」
「それだけにですな」
「うむ、十勇士も猛者揃いじゃが」
 一騎当千の忍の者達だというのだ。 
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