レーヴァティン
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第百六十七話 近江に入りその四
「俺は焦っていない、進軍も遅くていい」
「あえて大軍をゆっくりと進め」
「そうしてですね」
「国人達に知らせる」
「大軍が来るということを」
「そのことをですね」
「自分達の百倍以上の兵が来る、それも堂々とだ」
遅い進軍、それは悠然としたものだというのだ。英雄は敢えてそうした進軍を彼等に見せる考えなのだ。
「それをあえて見せるぞ」
「それでは」
「これよりですね」
「安土城までゆっくりと進め」
「そしてですね」
「そのうえで、ですね」
「そうだ、使者も送るが」
それでもというのだ。
「いいな」
「はい、それでは」
「まずはですね」
「あえて悠然と進軍しますね」
「今は」
「その様にする」
こう言ってだ、それでだった。
英雄は実際にあえて軍が進ませることをゆっくりとさせた、すると英雄が安土城に入る前二既にだった。
尾張そして美濃の国人達の中で降る者達が出て来た、英雄はその報を受けて言った。まだ都にも入っていないその中で。
「そうか、先が見えると言う者もいれば」
「それにですね」
「我等の数に怯えた者もですね」
「降ってきていますね」
「左様ですね」
「怯えたにしろ賢明だ」
降った者達はとだ、英雄は周りに話した。
「何しろ戦わずに家を守ったのだからな」
「それで、ですね」
「賢明と言うべきですね」
「彼等は」
「そうなのですね」
「そうだ、その者達はすぐに幕府に組み入れる」
その様にするというのだ。
「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「働いてもらう」
「そうしてもらいますね」
「これからな、ではさらにだ」
英雄は進軍を続けつつ言った。
「進軍を続けてだ」
「そして、ですね」
「そのうえで、ですね」
「喧伝を行っていきますね」
「幕府の大軍が来ることを」
「そうしていく」
まさにというのだ。
「このままな」
「都に入り」
「安土城に入り」
「それまでの間もですね」
「喧伝していきますね」
「この大軍の話に尾鰭を付けてもいい」
そうしてもいいというのだ。
「存分にな」
「実は二十万より多い」
「その様にもですか」
「喧伝しますか」
「その様にも」
「そうしてもいい、号するというが」
このことはというのだ。
「それもだ」
「よいですか」
「それではですか」
「二十万どころかですか」
「数はさらに多い」
「そうも喧伝しますか」
「そこはお前達に任せる、怯えている者戸惑っている者は荒唐無稽な話にも惑わされる」
英雄は人の心理を話した。
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