曇天に哭く修羅
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第四部
Aブロック 2
前書き
_〆(。。)
クリスは【魔晄ノ神氣】を発動するとバイザー型の外装を召喚。
「【暴虐極メシ妖精群】」
更に赤い人形と青い人形の群れを喚ぶ。
「ファイアッ!」
クリスがGOサインを出すと人形達は抱えていたライフルを構えて一斉に《橘花 翔/たちばなしょう》へと撃ち始めた。
しかしこの程度なら問題ない。
先程まで翔が躱していた光線の方が遥かに速かったし、弾幕も薄く、威力に関しても比較にすらならないだろう。
「よっ」
翔は軽々と回避するが様子がおかしい。
銃弾は軌道を変えて射線上から外れると、回避した翔の居る方へと向かってきた。
(自動追尾の【異能】なのか?)
ならば追い着けぬよう動く。
そしてクリスに攻撃を加える。
翔はスピードを上げて弾丸の群体を振り切ろうとしたのだが、自分の予想していなかった事態に驚いてしまう。
(差が開かない……?)
翔は先程まで【魔晄】による身体強化のみのスピードで魔晄ノ神氣の追尾に対応していたが、今は【音隼】も使って何倍もの速さを出している。
足で千切れるくらいの速度差が翔と弾丸との間には有ったはずだ。
なのに距離が変わらない。
むしろ少しずつ差を詰めている。
「なるほど。こいつが【絶対不可避ノ領域】の有した力というわけか」
追尾するだけではなく、相手のスピードに応じて弾の速度が上がる。
ひょっとしたらクリスの行う攻撃全てに適用されるかもしれない力。
《佐々木青獅》が使っていた【反逆者の灼炎/レッド・リベリオン】は制限時間付きで相手よりも一段階上のパワーとスピードをもたらしていたが、恐らくクリスの異能に時間の制約は無い。
「仕方ない。出すとしようか」
翔の靴が違うものに変化。
赤いスポーツシューズのようだが。
「これが俺の【魔晄外装】だ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
極一部の限られた【魔術師】は異能を使わずとも外装だけで身体強化を掛けられるので、出すだけでも無駄にはならない。
「取り敢えず、邪魔だから落とすか」
翔のスピードが更に上がる。
彼の外装は例に出された魔晄や異能とは別で身体強化の恩恵を受けられるタイプ。
更に紫闇と同じく【魔晄ノ改造】されたことで得た【魔晄機能】は『高速移動』と『真空波』であり、特に動かなくとも攻撃可能。
翔はそれ等を利用して弾丸を迎撃。
しかし手応えは無い。
翔の拳と真空波は当たった。なのに何故か空振った感触しか伝わってこないのだ。
まるで蜃気楼や幻であるように。
「かかったわね」
銃弾は翔へと殺到する。
「ネバーエンドの使う魔晄ノ神氣の真髄は追尾や対応速度では無くこれか!」
翔の迎撃は弾丸を『透過』した。
ことごとくすり抜けてしまう。
そして透過した弾丸は翔の体へ着弾すると、熱や衝撃を放ちながら、強靭な魔晄防壁を喰い破らんと爆ぜていく。
「逃がさないわよッッ!!」
クリスは超能力【抑封規制】を発動し、翔の動きを規制して抑え、封じ込めた。
更に超能力【鎧袖一触】によって身体強化が掛かり、能力の効果によって更に追加で身体強化が掛けられる。
(不味い、これは不味い……。まさかこれほど厄介な奴になっていたとは……!)
このままでは確実に負けてしまう。ここまで追い込まれるとは思っていなかった。
「見縊っていた《クリス・ネバーエンド》。俺が倒すに値する闘技者だ」
魔術師の基本ステータスだけで言えば、クリスは翔よりも2ランクは低い総合力なのだが、彼女はその差を埋めて来ている。
「《立華紫闇》や《江神春斗》と同様に相手をさせてもらうとしよう。ここから俺の力を見せてやるぞネバーエンド」
翔はガードを固めて耐えながら、終わらない爆発の向こうで笑っていた。
後書き
_〆(。。)
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