やはり俺達の青春ラブコメは間違っている。
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第一章
結局、桐山霧夜はごまかせない。
「桐山。どういうことなんだこれは!」
平塚先生の手には二つの紙が握られている。
「さぁ、どういうことなんでしょうか。その紙、片方は俺の作文だって分かりますけどよく意味がわかっ...すいません。隣の席だった人の作文見て書きました。ゴメンナサイ」
ごまかすとか無理だった。自分でも 情けないとは思ったよ。でも先生の目力はヤバイ。
もう、人を殺しかねない勢い。
「でも俺が真剣に高校生活を振り返ったとしても比企谷と同じ作文ができます。だからこの作文は嘘でも普通の内容にしようと俺が考えた結果でして」
「小僧、屁理屈を言うな」
「小僧ですか...。でも俺はもう高校s...いやまぁ、確かに先生からしたら俺は超小僧です」
俺の頬に風が吹いた。
グー。ノーモーションで繰り出される全力のグー。その握り拳が俺の頬を掠めた。殺す気かよ。
「次は...当てるぞ」
あっ、目が本気だ。殺られる。
「あの、すいません。自分で書き直してきます」
この状況で一番無難な言葉を選択....。したはずなのだが平塚先生は満足頂けなかったご様子。まさか!もう土下座しか手はないのか!
俺は横目で比企谷に目で合図を送る。
そして比企谷がこれからとる行動を理解し小さく頷く。俺はズボンの皺を払うようにしてピシッと直すと隣にいる比企谷と同時に右足を折り、頭を床へつけようとする。 二人の行ったそれは美しく淀みのない所作だった。
「私はな、君達に怒っているわけじゃないんだ」
...はい、出ました~。
かなり面倒なパターン。これを聞いて怒られなかった事があっただろうか。
――だが以外な事に平塚先生は本当に怒ってはいないようだ。とりあえず年齢の話以外ではだが。 ...なんてことは思わなかった。危うく口を滑らせそうになったのを堪えることができてホッとしてなんかいない。
先生が怒っていないと言うことは土下座をしている必要もない。俺と比企谷は右膝を戻して様子を窺う。
平塚先生は(はち切れそうな)胸ポケットからセブンスターを取り出しフィルターをとんとんと机に叩きつける。一々仕草がおっさんっぽい。葉を詰め終わるとライターで火をつけた。そして煙を吐いたと思うと今度は至極真面目な顔で俺達を見据えた。
「君達は部活やってなかったよな?」
「「はい」」
「...友達とかはいるか?」
俺達に友達いない前提で聞くなよ。ちょっとショックだよ。
まぁ、確かに俺に友達はいない。いるのは同志だけだ。...あっ、あと中二のやつがいた。でも今はちょっと名前が出てこないな。
「いませんね」
とすぐに答えた俺に対し比企谷は、
「びょ、平等を重んじるのが俺のモットーなので、特に親しい人間は作らないことにしてるんですよ俺は!」
...見苦しい、見苦しいぞハチマァーーン!
あ、これで中二の名前思い出した。 えっと...そう! 材木座だ。...多分。
「つまり、(友達が)いないということだな?」
「た、端的に言えば」
比企谷がそう答えると平塚先生がやる気に満ち溢れた顔になった。
「そうか! やはりいないか! 私の見たて通りだな。君達の腐りきった目を見ればそれくらいすぐにわかったぞ!」
目を見てわかっちゃったのかぁ...。なら最初から友達いるかとか聞くな。
...てか比企谷はともかく俺の目まで腐っていると言われるのはちょっと心害だ。そう思って比企谷を見ると比企谷は目をドロドロと腐らせていた。
...よし、俺の目は正常。少なくともあれほど目は腐っていないだろう。
(ドロドロ)
平塚先生は納得顔でうんうん言いながら二人の顔を遠慮がちに見る。
「....彼女とかいるのか?」
彼女とかってなんなんだ? 俺のこと「彼女はいなくても彼氏はいるかも」とか思ってんじゃねぇだろうなぁ。泣くぞ!
「(今は)いません」
おい、比企谷。『今は』とか言うな。俺まで惨めになるだろ...。
「そうか...」
ほら見ろ! 先生が潤んだ瞳でこっちを見てくるじゃないか。
......先生。その生暖かい優しい視線を向けるのは比企谷だけにしてください。これ以上その目を見ていたら悲しい気持ちで涙が堪えきれなくなりそうだ。
それから八幡! まだお前が先生の目が潤んでいるのをタバコの煙のせいだと信じてんなら俺がその幻「おい、桐山。話を聞いているのか?」
しまった! 比企谷の幻想をぶち壊そうとしていたせいで先生の話を聞いていなかった。
「いいか? レポートは書き直せ」
「「はい」」
まぁ、書き直すのは当然か。
...けど俺が真剣にあのレポート書いたら比企谷の二の舞だ。...はぁ面倒だなぁ。
でもレポートの書き直し程度は俺の想定範囲内。予想外だったのはこのあとだ。
「だが君達の言葉や態度、心の声が私の心を傷つけたことは確かだ」
心の声までだとっ! もしや俺が心の中で「やべっ危うく年齢の話を口にだすとこだった! 危ない、危ない☆」と安心していたこともお見通しなのかっ!?
「なので君達には奉仕活動を命じる。罪には罰をあたえないとな」
どこが傷ついているんだろう。むしろ普段より元気になっているように見えるのは気のせいだろうか。というか奉仕活動ってなんぞや。
君達ということは当然、比企谷も同じ罰を受けるのだろう。
...そういえば比企谷さっきからずいぶん静かだな。俺は比企谷の様子が気になったので隣に目を向ける。
比企谷はブラウスを押し上げる平塚先生の胸に目を向け現実逃避していた。...比企谷。戻ってこい。
比企谷が現実に戻って来ないので俺が尋ねることにした。
「あの、奉仕活動の内容って.....いったい何をさせるつもりですか」
この雰囲気はヤバイ。もうドブさらいどころか人拐いしろと言われかねないほど。
「ついてきたまえ」
灰皿にタバコを押し付けると平塚先生は立ち上がった。
俺も先生についていこうとしたところで、まだ現実に戻って来ていない同志のことを思い出す。
「おい、比企谷もう行くぞ」
そう言って俺が肩を叩くと比企谷の意識が職員室に呼び戻される。
「おい、早くしろ」
きりりとした眉根に睨み付けられて俺達は慌てて後を追った。
後書き
駄文といってもいいのかと悩むくらい
つまらないこの「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」の二次創作ですが
これからも一応更新するつもりでやっていきたいと思います。
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