戦国異伝供書
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第九十八話 三本の矢その一
第九十八話 三本の矢
元就は三人の息子達毛利隆元と吉川元春そして小早川隆景の三人を自分の前に呼んだ。そのうえで彼等に話した。
「よいか、これよりじゃ」
「我等三人はですな」
「力を合わせてですな」
「そのうえで、ですな」
「やっていくのじゃ、それでじゃ」
元就はここでだった。
懐から矢を三本出して息子達に言った。
「これをそれぞれお主達にやろう」
「矢ですか」
隆元はその矢を見て怪訝な声を出した。
「それをですか」
「やろう」
元就は長男に笑顔で話した。
「よいな」
「それでは」
隆元が兄弟を代表して応えてだった。
兄弟はそれぞれ矢を受取った、元就はここで三人にそれぞれ話した。
「その矢を折ってみよ」
「これからですか」
「そうじゃ、折ってみよ」
兄弟の中で最も腕っぷしの強い元春に答えた。
「よいな」
「それでは」
三人はそれぞれ応えてだった、矢を両手に持って力を入れた。するとその矢達は三本共あっさりと折れた。
すると元就は今度は。
三本ずつ合わせて九本の矢を出して言った。
「一本なら折れるな」
「はい、確かに」
今度は兄弟で最も頭の切れる隆景が応えた。
「そうなりました」
「では今度は三本ずつ渡す」
その矢をというのだ。
「そうする」
「そしてですか」
また隆元が応えた。
「折ってみよと」
「またな」
「はい、それでは」
兄弟達はまた矢を折ろうとした、すると。
今度は折れなかった、その元春も折れずだった。三人共唸ってそのうえで父に対して話した。
「折れませぬ」
「折れそうですが」
「それでも」
「そうじゃ、矢は一本なら簡単に折れる」
元就は三人に笑って話した。
「だが三本揃うとな」
「折れぬ」
「折れそうでも」
「これがどうにも」
「そうなる、これは人も同じじゃ」
矢だけでなくというのだ。
「一人一人なら敗れるが」
「それが、ですか」
「三人ならですか」
「折れませぬか」
「三人揃うとな」
それならというのだ。
「折れぬ、だからお主達もじゃ」
「三人力を合わせてですか」
「そうしていけばですか」
「敗れませぬか」
「毛利家もな。だからお主達は力を合わせ」
兄弟三人でというのだ。
「後に続く者達もな」
「弟達もですな」
また隆元が応えた。
「しかと力を合わせ」
「そしてな」
「そうしてですか」
「家を守っていくのじゃ、無論一門だけでなくな」
「家臣達ともですな」
「一つになってな」
そのうえでというのだ。
「家を守っていくのじゃ」
「さすれば」
「そしてじゃ」
元就はさらに話した。
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