何処が弱くなる

「流石にね」
「それはな」　
　兄も否定せず返した。
「あるな、ただお前のそれはな」
「違うっていうのね」
「お前この世で一番嫌いなもの巨人だろ」
「そうよ」
　千佳は兄に即答で答えた。
「もう何よりもね」
「嫌いだな」
「他のチームに負けてもそんなに腹立たないけれど」
「交流戦で負けてもな」
「そんなにだけれど」　
　それがというのだ。
「巨人に負けると」
「いつも滅茶苦茶怒るな」
「お兄ちゃんと同じ位ね」
「そうだな、そして僕今はな」
　寿は妹にあらためて言った。
「巨人に負けた時より遥かにましだけれどな」
「それでもなのね」
「怒ってるよ」
「甲子園で三連敗だからね」
「しかも惨敗ばかりでな」
　試合の内容も酷かったというのだ。
「打たれまくって打てなくてな」
「いつも通り一方的だったわね」
「去年と同じだよ」
「そうよね」
「黒田さんいなくなってもな」
　寿は自分が去年言った言葉を思い出しつつ言った。
「強いな」
「ええ、私も正直驚いてるわ」
「全く、今年は絶対に優勝だって思ったのにな」　
　実は寿が毎年思っていることである、愛読しているデイリーの記事を読みつつ毎年毎日こう言っているのだ。
「これは苦労しそうだな」
「いや、普通に無理でしょ」
　妹の突っ込みは容赦がなかった。
「うちにあそこまで負けてたら」
「そうなるか、絶対にな」
「それはないっていうのね」
「今度の対決の時歯違うからな」
「どうだか、けれど黒田さんが引退されても強いままっていうのは」
　千佳は純粋な笑みを浮かべて言った。
「本当にいいことよ」
「そうだな、そのことは素直にいいことだな」
「この調子で今年もカープ優勝ね」
「だから阪神だって言ってるだろ」
　寿は妹の笑顔に突っ込みを入れる、だがその顔は決して悪いものではなかった。そうして次こそは勝つと言うのだった。だがこのシーズンもカープは優勝してだった、寿はどうしてなんだと言い千佳は喜んだ。たそしてまた来年の話をするのだった。


何処が弱くなる　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　２０２０・３・１３