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怖いお姉ちゃん

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第二章

「いいわね」
「真面目によね」
「やっていってね」
「そうしていくね」
 妹は姉に真面目に答えた、そうしてだった。
 二人共従姉にびくびくしながら家で過ごしていた、従姉がいないときもそうだった。
 そんな中で津々慈は見事志望校に合格した、県内の偏差値六十を越えている公立高校に入学が決まった。
 それでほっとしていたが。
 高校に入ってすぐに家に帰った時に杠が。
 家の洗濯ものを干している間に寝てしまったのか多くの洗濯ものに囲まれながら気持ちよさそうに寝ているのを見てだった。
 瞬時に怒った、それで怒鳴った。
「起きなさい!何してるの!」
「!?」
 杠も思わず起きた、それでだ。
 自分に思い切り怒る姉に思わず怯えた、そしてだった。
 その場で大泣きしだした、その怒鳴り声と泣き声を聞いた二人の母親の宮子如何にものどかそうな顔立ちで津々慈と同じ色の髪の毛をのばした彼女が部屋に入って津々慈に尋ねた。
「どうしたの、可憐ちゃんみたいに怒って」
「杠が寝てたのよ」
「あら、洗濯もの畳んでくれていたのに」
「その途中で寝たらしくて」
 頭に角が生えた様な顔で母に話した。
「それで怒ったのよ」
「それはわかったけれど怒り過ぎよ」
 母は姉娘にこう返した。
「全く。可憐ちゃんかと思ったわよ」
「寝るのは洗濯ものを畳み終えてからにしなさい」
 泣いて母に頭を撫でられてあやされている杠に言った。
「いいわね」
「注意するのはいいけれどそこまで怒ったら駄目よ」
 母はまだ怒っている姉娘を宥めた。
「そんな人はお家では可憐ちゃんだけでいいわよ」
「可憐お姉ちゃんはいいの?」
「家にはああした人も必要だしね」
 厳しく怒る人もというのだ。
「だからね、けれどね」
「私はなの」
「ここまで怒らなくていいの」
「そうよ、杠ちゃん泣いちゃったじゃない」
「じゃあ」
「そう、今度からそこまで怒らないでね」
 母は妹娘を宥めつつ姉娘を注意した、そしてだった。
 実際に津々慈は杠を二度と強く怒らなかった、だが当の杠は姉を暫くかなり怖がって近寄らなかった。まるでもう一人の従姉の様に。
 そして杠は二十歳になった時に大学を卒業し結婚して子供もいる姉に言った。姉はまだ十代の面影が残っているが妹は姉より背が高くなり豊かな黒髪を長く伸ばし大きな切れ長の艶のある目に大きな胸が目立つ見事なスタイルの女性に成長していた。今は専門学校に通っていて就職も決まっている。
 今は結婚して夫そして娘と一緒に暮らしている姉に共に炬燵に入りながら話した。
「私が小三になってすぐの時の」
「私が高校生になってすぐだったわね」
「もうあの時お姉ちゃん凄く怖くて」
「泣いたのね」
「それで暫くね」
 姉に蜜柑を食べながら話す。
「お姉ちゃんも怖かったわ」
「可憐お姉ちゃんだけじゃなくて」
「ええ、本当にね」
「けれどあの時だけでしょ」
 姉はその妹に言った。
「あんた怒ったのは」
「その一度だけのがよ」
「物凄く怖かったの」
「怖いのは可憐お姉ちゃんだけじゃない」
 杠は微笑んで話した。
「お姉ちゃんもってね」
「思ったの」
「そう、それでね」
 妹はさらに話した。 
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