ワールドトリガー~希望の架け橋~
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第8話
翌日
ざわざわざわ
学校の掲示板の前では多くの生徒でにぎわっていた。
9月2日に行われた実力テストの総合点数と順位が張り出されているからだ。
毎回恒例のことらしいのだが海斗にとっては六頴館に編入してから初めてのことである。
「・・・・・・・・」
海斗は後ろのほうから順位を確認した後群がっている生徒を眺めていた。
「・・・・・・さすがだな。神崎」
「・・・・ん?あぁ、奈良坂か・・・・」
奈良坂が海斗に声をかけ、二人そろって教室を目指す。
「それにしても、いつもこんなににぎやかなものなのか?」
海斗は言う。
それもそのはず、今までは1年半の六頴館高校で過ごしてきた生徒たちの中で学年首位は同じ人物だったからだ。
もちろんそのことを知る由もない海斗は不思議に思っていた。
「あぁ・・・・いつもは綾辻が毎回一位だからな。それが今回塗り替えられた上に満点一位が出たんだ。ざわつくのも無理はないだろう。」
「そういうものなのか・・・・・って綾辻って?」
「あぁ綾辻は2-Aの奴だ。六頴館の副生徒会長だ。ちなみに嵐山隊のオペレーターだ。」
そう奈良坂から教えられた海斗はふと先日の入隊式を思い出す。確か壇上にはオペレーターもいたはずだ。
「あぁ・・・・・生徒会とボーダーを兼任か・・・・すごいな。」
「そうだな。それよりも今回のテストそんなに簡単だったか?夏休みの課題の範囲内から出ていただろう?」
「まぁ・・・編入試験よりは難しくなかった。」
「あぁ・・・」
奈良坂は納得した。
「ちなみに、生徒会長もボーダー隊員だぞ」
ちなみに三年の蔵内さんだ。
何気もなしにそう伝えられた海斗は柄にもなく変な声を出してしまった。
「え」
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それからというもの実力テストで好成績どころではない成績を収めた海斗は補習(※ふがいない成績のものには補習があります)におびえることもなく学校とボーダーの往復を行い、ときには資料室で先輩たちのランク戦をチェックしながら順調にポイントを重ねついに4000の大台に到達した。
奈良坂や辻から正隊員になってからのことをあらかじめ聞いておいたため自分が何をしたいのかは決めてあった。
B級に昇格するにあたり、職員に渡された書類いくつか記載をし本部長室に持っていき受理され次第正隊員として始動することになるのだ。
コンコン
「入りなさい」
「失礼します」
本部長室をノックすると中から返事があり、ドアを開ける。
忍田本部長がこちらを向いて立っていた。
「神崎海斗です。B級昇格書類をお持ちしました」
海斗から受け取った書類をぺらぺらとめくりうなずく。
「確かに受け取った。まずはB級昇格おめでとう」
「ありがとうございます。」
「では、B級昇格にあたり必要事項の説明を行いたいと思う」
少し長くなるだろうからと、椅子に座るに促されたため腰掛けることにした。
「さて、君と直接話すのは面接以来になるな」
「!?覚えてくださったんですか?」
自分だけでなく何十人もの面接をしており現在600ぐらい隊員を抱えている本部長が一訓練生であった自分を覚えているとは思わなかった海斗は素直に驚く。
「あぁ、合否しか伝えてはいなかったが君は筆記試験、体力試験ともに好成績で突破していたからね。印象には残ったよ。」
「ありがとうございます。」
「(まぁそれだけではなかったがな)では、さっそく・・・・」
トリオン能力が一番の決め手ではあるが基本的には本人に伝えることはしないためそれを話すことなく本題へと移行した。
正隊員用のトリガーホルダーと隊員用携帯式タブレットを渡される。
「トリガーの組み換えは基本的に開発室で行うことになる。そして、このタブレットは隊員連絡用ということになる全体への連絡用掲示板になるほか、隊員同士の連絡、防衛任務が入ったとき用のスケジュール管理や急遽予定が入った時などの申請などを行うボーダー内タブレットだ。この2つは普段から肌身離さず持っておいてくれ。」
「わかりました。」
「ところで、ソロでやりたいとか部隊に入りたいとか何か決まっているのか?」
「はい。自分で部隊を作りたいと思っています。」
「なるほど。もうビジョンとかもきまっているのか?」
「なんとなくですけど。ある程度は・・・・」
「そうか、ならもう心配はないな。あとは学生の本分は勉強だが、大丈夫そうだしな。」
「??」
「いや、君のことは同じ六頴館の荒船とかに聞いている。それにあそこはボーダーとも提携しているから多少先生から授業態度とか耳に入ってくるんだ」
この前の実力テストもね
そういわれた海斗は納得した。
「はい、疎かにするつもりはありません。」
「そうか・・・・慶にも見習ってほしいものだ・・・・」
どことなく疲れた様子の忍田本部長を見て察する。
「はは・・・・お疲れ様です。」
防衛任務の時は連絡するからと一言二言交わし本部長室を後にした。
次に訪れたのは研究開発室である。ここでは本部長の言っていた通りトリガーセットができるらしい。
入室したときバタバタとせわしなく動いていて忙しそうだと出直そうとしたが運よく研究員の一人が気づいてくれたためその場でセットしてくれた。
「じゃあどういうトリガー構成にしたいとかある?」
「えっと・・・メインが弧月、旋空、シールド、バイパー。サブにグラスホッパー、シールド、バックワームでお願いしてもいいですか?」
「ほいほいっと。それにしてもいきなりバイパーかぁ。ほかの射手用トリガーじゃなくていいの?アステロイドとかのほうが簡単だけど・・・」
「それも考えたんですけど。基本自分はこれからも射手用トリガーはバイパーメインで行こうとは思っているので・・・・」
「なるほどねぇ。結構チャレンジするね。自分は嫌いじゃないよ~」
と陽気なお兄さんは笑った。
ひとまずトリガーセットをした海斗は隊員用ロッカーに戻りカバンに入れておいた携帯を確認した。すると奈良坂からLINEで連絡が入っていた。
奈良坂は今日昼から防衛任務ということで途中早退をしていたはずである。
なんだと思い中身を確認すると今日本部に来ているかという確認と、きていたら隊室に来てほしいという内容だった。
「(奈良坂が隊室というんだから三輪隊だよな。場所は・・・・・どこだ?)」
当然ながら先ほど正隊員になったばかりの海斗にA級の隊室は縁がない。しっかりと要点が書かれているメッセージを送る奈良坂にしては場所の位置が書かれていない。珍しいと思いながら人に聞くためにカバンを持ち移動した。
とりあえず人がいそうなラウンジを目指し歩いていると、前方にロングのお兄さんが歩いているのが見える。道を聞こうと話しかけた。
「すみません。道を聞きたいんですけど」
「ん?なんだい?」
その人、東春秋はこちらを振り向いた。
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一方三輪隊隊室では・・・・・
「陽介ーーーーーー!!!」
午後から防衛任務だった三輪隊のメンバーは防衛任務が終わりおのずと実力テストの話となった。中間、期末ではないがテストはテストであるため三門第一高校、六頴館高校ともに赤点をとれば合格するまで」追試を受けることが決まっている。それは日々人々の命を守るボーダー隊員とて同じである。
そして例にももれず米屋陽介は赤点をとっていた。そのため防衛任務後から三輪隊+出水で追試対策開催中である。
しかし、いくら教えても教えても覚えない米屋についに三輪が切れたのだ。ほかのメンバーもあきれてものが言えない。
「はぁ・・・・陽介。実力テストは夏休みの課題から出ていたのだろう。範囲も狭いはずなのになぜこうもできないのか。」
「それはあれだろ?課題を写させてもらっているからじゃね!!」
「それ・・・・威張ることじゃないですよ」
この様子をあきれながらも見ていた奈良坂は、ふと新しくできた自分よりも頭のいい友人を思い浮かべた。そして無表情のままスマホを取り出しメッセージを打ち込み始めたのだった。
打ち込み終わったのを見計らったかのようにオペレータの月見連が奈良坂に話しかけた。
「あら?奈良坂くん何か用事でも入ったの?」
「ん?そうなのか?なら・・・先に帰ってもいいが?」
「えぇーーーーー!?どうすんだよ?俺やばいんだけど!!」
「だからそれ人に頼む態度じゃないだろ、槍バカ!!」
「陽介!!」
「はぁ・・・・とりあえず用事ではないです。ただ、この陽介の現状が現状なんで助っ人を呼ぼうかと」
「おぉ!!」
助っ人が増えると喜んだ米屋の頭をとりあえず思いっきりたたいた。
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