| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

あなたへの言葉(天羽奏誕生祭2020)

 
前書き
ギリギリセーフッ!何とか間に合った!

加筆も終えたし、これでフラグは成立ってところかな? 

 
「奏さんの誕生日会だってぇぇぇぇえ!?」

その日、翔からの誘いを受けた俺は、思わず椅子から転げ落ちた。

いやだってよぉ、普通はまず耳を疑うだろ?
何ヶ月か前、生きてた事を発表された奏さん。俺の最推し、憧れのアイドル……。S.O.N.G.の外部協力者になったとはいえ、その存在は公表されるまで徹底して伏せられていた。だから俺も、本人と対面したことはまだ無い。

その奏さんの誕生日パーティーに招待されるなんて……思わず頬を思いっきり引っ叩いたくらいだぜ。

『ああ。予定は一週間後だ。来るなら空けておけよ?』
「あ、あったんめぇよ!絶対行くに決まってんだろ!こんな機会逃すとか、ファンの名折れだぜ!」
『声がデカいわ!』
「あっ、悪ぃ……」

流石に電話で大声は耳が痛いよな。すまん翔。
でも俺、一生お前についてくわ。今度、俺ん家の一番高いメニューをタダで奢ってやるぜ。

それにしても……推し(奏さん)の誕生日かぁぁぁぁぁ!
いやー、バースデーライブには行ったことあるけどさ、誕生日パーティーに参加ってのはこの先一生自慢出来るぜ!
こんなプライベートなイベントに呼ばれるなんて、マジでツいてるぜ! よっしゃラッキー!

っと、ここで一旦深呼吸してと……。一週間後か……。
当日、奏さんに失礼がないよう、色々準備してかねぇとな……。

プレゼント、何渡せばいいんだろ? 好きなものとか、インタビューに載ってたっけ……?

ff

そして、一週間後……。

「奏さん、誕生日おめでとうございますッ!」
「いや~、こんなに沢山貰っちゃって、なんか悪いね」

奏の両手には、装者達から貰ったプレゼントがあった。

「俺達からの感謝の気持ちです。遠慮しないでください」
「そうですよ~! わたしも翔くんも、奏さんには感謝してもしきれないんですから~!」
「ははは……、まったく可愛い後輩達だねぇ」

そう言って奏は、翔と響の頭をわしゃわしゃと撫でる。

「か……奏ッ!」

そこへ、プレゼント袋を片手に翼が翼がやって来る。

「お、翼~どうした~?」
「その……これ! 受け取ってくれるかな……?」
「ん? こいつは……開けてもいいか?」
「うん。きっと喜んでくれると思う」

奏は首を傾げながら、袋から箱を取り出し開封する。
ちょうどその時、奏の左耳に付けられたイヤリングを見て、翼は思わず微笑んでいた。

「服?」
「奏もそろそろ、新しい服が必要でしょ?似合いそうなのを選んでみたの。元々奏が持ってた服は、殆ど処分されちゃったから……」
「翼……ありがとな。明日から早速着ることにするよ」
「うん……そうしてくれると、嬉しいな」

微笑み合う2人。
その様子を見守っていた翔だったが……数拍置いた後、何かに気付いたように苦笑いした。

「姉さん、奏さん」
「どうしたの、翔?」
「何だ?」
「水を差すようで悪いけど……あれ」

翔が指差す先を見る2人。
そこに居たのは……自分より先にプレゼントを渡しに出た翼に気を遣い、完全に渡すタイミングを見失ってしまった紅介の姿であった。

「あいつ、確か……」
「穂村紅介。俺の友達で、奏さんの大ファンだよ」
「なるほど……なら、ちょっとファンサービスしてやらないとね」
「奏、あんまり揶揄っちゃダメだよ?」
「分かってるって~」

そう言って奏は、紅介の方へとまっすぐに進んで行った。

ff

「紅介、来てるぞ」
「へぁっ!?」
「まさか、今更心の準備が~なんて言わないだろうな?」

恭一郎と飛鳥に左右から挟まれ、紅介は慌てていた。

私服でいい、と言われたのにも関わらず今日の紅介の服装はスーツに蝶ネクタイ……いわゆる正装である。

翔を始め、全員から「昭和の学生か!」とツッコまれていたが、ビシッと整った服装に反して、紅介自身は緊張でガチガチであった。

無理もない。相手は有名人、それも彼にとって憧れの対象である天羽奏その人である。
緊張するな、という方が無理な話だろう。

そんな紅介を、普段は彼に弄られる2人が放っておく筈がなかった。
ここぞとばかりに逃げ道を封じ、肩に手を置く。

「ほら、プレゼント渡すんだろう?」
「こんな機会は滅多にないぞ?」
「いや、でもよぉ……」
「「いいからさっさと渡して来いッ!!」」
「のわあぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

恭一郎と飛鳥に思いっきり背中を押され、紅介はこちらへと向かってくる奏の方へと突き出されるのだった。



「紅介、だっけ?」
「へっ!?あっ、はっ、はいぃッ!」

いきなり名前を呼ばれ、紅介は思わず吃ってしまう。

「翔から聞いたよ。あたしに何か用があるんじゃないのかい?」
「ッ!?は、はいッ!その……」

紅介は吃りながらも、手にしていた花束を両手で持ち、息を深く吸い込む。
そして、勢いよく頭を下げながら、それを奏の方へと突き出した。

「奏さんッ!お誕生日、おめでとうございますッ!!」

花束に纏められていたのは「黄色のカラー」、7月28日の誕生花だ。
花言葉は「華麗なる美」、そして「乙女のしとやかさ」。紅介が、翔や恭一郎に何度も確認を取りながら、プレゼントとしての意味合いが重くならないものをと選んだものだ。

普段はデリカシーのデの字もない紅介が、最大級の礼儀、礼節を以て選んだプレゼント。
その努力を、親友達だけが知っている。

「綺麗な花だな……ありがと。部屋に飾っておくよ」
「あのッ!それと……」
「ん?どうした、言ってみな?」

紅介は緊張でガチガチになった身体に酸素を取り込むと、奏を真っ直ぐに見つめて言った。

「これからも、応援してますッ!また、奏さんの歌が聴ける日を、楽しみに待ってますッ!」

何度も何度も練り直し、そして今朝ようやく固まったメッセージ。
2年間、推しを喪った悲しみを心の隅に抱えて生きてきた少年からの、精一杯の言葉。

それを受けた奏は──

「……ああ、ありがとな。励みにするよ」

ニカっと、チャーミングな笑顔で微笑んでみせた。

(っしゃああ、言えたってあああああああああッ!? あの笑顔はッ!?」

思わず心の叫びが口を出る紅介。
奏の表情を見て、翔が納得したように笑った。

「久しぶりに見たな。奏さんのファンサ、アネゴニックスマイル」
「なにそれ?」
「奏さんの得意なファンサの一つだ。奏さん自身の姉御力を全開にして放つあの笑顔は、射抜かれたファン全てを魅了する。あれで奏さんをお姉様呼びするファンが生まれたほどだ」
「へぇ……さすが奏さんッ!」

翔の解説に納得し、奏に尊敬の視線を送る響。
少し離れた所でクリスが何か突っ込んでいたらしいが、気にしてはいけない。

(やべぇ……祝いに来たのは俺の方なのに、特大のファンサ貰っちまったぁ! しかもプレゼントもちゃんと受け取ってもらえたし……やべぇ、俺今日はゆっくり眠れねぇよぉ……)
「そうだ! 折角だし、写真撮らないか?」
「へっ!? あっ、写真ッ!?」
「緒川さーん、カメラ頼むわ」
「ええ、構いません」
「ふあぁッ!?」

繰り出される更なるファンサ。
紅介の困惑を他所に、奏は彼の隣に立つ。

「ほら、肩の力を抜きなよ。折角の男前が台無しだぞ?」
「男前……ッ!? あああそんな俺なんかには勿体ないお言葉で……ッ!」
「いやいや、あたしは嘘は吐かないさ。その服、結構決まってるじゃないか」
「ふぐおぉぉッ!」

いちいち悶える紅介を見ながら、奏は面白そうに笑っている。
翼は苦笑しながら呟いた。

「奏……その辺にしてあげた方がいいんじゃない?」
「わりぃわりぃ。じゃ、撮るぞ~」
「は、はいッ!」
「では撮りますね。はい、チーズ」

こうして紅介は、めでたく奏と知り合う事が出来たのであった。
ちなみに、その時の写真は紅介の部屋に、大事そうに飾られているらしい。



そして、パーティーの後……。

「奏、どうしたの?」
「いや~、ファンからとはいえ、面と向かって花束なんて渡されたの、初めてだからさ……」
「今になって恥ずかしくなってきた、とか?」
「そ、そんなんじゃ……いや、そう、なのかもしれないね……」
「ふぅん……」

翼が、普段滅多に見られない、奏の照れている姿を目撃していたのは内緒である。 
 

 
後書き
改めまして、奏さん、ハッピーバースデー!! 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧