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子供を守った名犬

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第一章

                子供を守った名犬
ケビン=フォーグラーは黒髪を上だけ伸ばしオールバックにし左右と後ろはバリカンで刈っている。目は青く顎髭がある。背は一八〇あり筋肉質のいい身体だ。
 仕事は消防士でニューヨークにいる、彼はよく同僚のゴードン=オマリー自分より大柄のアフリカ系の彼に言っていた。
「俺達の仕事も戦争だな」
「ああ、命懸けでな」
 オマリーはこうフォーグラーに返した。
「命を救うな」
「そうした仕事だからな」
「本当に戦争だな」
 オマリーもこう言った。
「軍隊にいなくてもな」
「特にニューヨークだからな」
「もうな」
 それこそというのだ。
「世界一色々ある街だ」
「他のことも多いが」
「火事も多い」
「そうした街だからな」
 それでというのだ。
「火事だってな」
「あるしな」
「俺達の仕事も大変だぜ」
「本当にそうだな」
 こうした話をしていて実際に出動の時も多かった、それはこの時もだった。
 フォーグラーは現場に来て燃え盛るアパートを見て叫んだ。
「原因は何だ!?」
「まだわからん」
「しかしこの有様だ」
「とんでもないことになってるぞ」
 周りは口々に言った、アパートは建物全体が燃え上がりまるで炎の柱の様になっている。
 その中でだ、隊長がフォーグラーとオマリーに話した。
「まだ一人救助出来ていないらしい」
「一人ですか」
「女の赤ちゃんが一人な」
「ジュリア、ジュリア!」
 金髪の若い女が叫んでいた。
「まだ娘が中に!」
「娘さんは運び出せなかったのか」
「もうこの人の部屋は一面火に包まれていて」
 中年の男がフォーグラーに言ってきた。
「それでこの人だけをです」
「助け出したんですか」
「俺達もジュリアちゃんを助け出したかったですが」
 それでもというのだ。
「もう部屋の中は」
「火の海で、ですか」
「とても入れなくて」
 それでというのだ。
「奥さんだけです」
「そうですか」
「旦那さんは仕事で今フィラデルフィアに行ってるらしくて」
 それでというのだ。
「残念ですが」
「そうですか、じゃあ」
「ジュリアちゃんはですね」
「俺達に任せて下さい」
 フォーグラーは強い声で言った。
「ここは」
「お願いします」
「人の命を助ける」
 それがというのだ。
「俺達の仕事ですから」
「宜しくお願いします」
「今から行きます」
 こう言ってだった、フォーグラーは。
 オマリーと共に文字通りの火事場に突入した、そうして女の子がいるという部屋に駆けていったが。
 オマリーはフォーグラーにこう言った。
「正直な」
「女の子はか」
「生きていて欲しいがな」
「こんな中だとか」
「大丈夫か」
 火の中を駆けながら言った。 
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