困った家族と賢い犬
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第一章
困った家族と賢い犬
佐藤祐樹は茶色の髪の毛を短くしていて強い光を放つ黒い目を持っている、ラグビーをしているがそのこともあってか一八五を超えて筋肉質の立派な体格の持ち主だ。
祖父母そして両親と同居している、彼はこの時その祖父が死んで祖母それに両親とお通夜の準備で忙しかった。
この時父の光眼鏡をかけた息子から見れば遺伝を思わせる一八〇以上の大柄七三分の髪型の彼も茶色の髪の毛を後ろで団子にした母の純佳も祖母小柄で白髪に四角い顔の志摩も大忙しだった。
祐樹はその中で両親に尋ねた。
「お通夜にお葬式にか」
「ああ、初七日もあるしな」
「これから大変よ」
両親は祐樹に答えた。
「だから祐樹も頑張ってね」
「これも人生の勉強だしな」
「だからね、色々と頼むわよ」
「忙しいがな」
「ああ、あと暇があったらタロの散歩連れてくよ」
「ワンッ」
祐樹はここで家の庭の方を見た、するとそこにいるわりかし大きな雑種犬尻尾と立っている耳は赤いがそれ以外は薄茶色の毛の雄犬が居間で祐樹と話している彼に応える様にして鳴いてきた。
そのタロを見てだ、祐樹は両親に話した。
「そうしてくるな」
「頼むな、お父さんとお母さんが一番忙しいからな」
「もう息つく暇もないから」
「タロのことは頼むな」
「ご飯もあげてね」
「祖父ちゃんが随分可愛がってたしな」
タロは元々祖父の譲その死んだ彼が引き取って可愛がっていた犬だ、今は十歳である。子犬の頃に引き取って今に至る。
そのタロを見つつ祐樹は言った。
「これからもあいつの面倒俺が見るな」
「頼むな、祖父ちゃんの分までな」
「そうしてあげてね」
「番犬としても立派だしな」
怪しい者には吠えてそうでない人には大人しい、人を見る目もあるのだ。
「そうしていくな」
「頼むな」
「お通夜やお葬式の間もね」
両親はこう息子に話した、そうして祐樹は実際にタロを散歩に連れていきご飯もあげた。そのうえでお通夜やお葬式の準備をして。
親せきや近所の人達も出迎えた、だが。
家に来るそうした人達の中でだった、玄関にいたタロが唸った人達がいた。それはというと。
赤く短い髪の毛で派手な顔立ちの二十代後半位の女とやたら大きく太った小学一年生位の男の子だった。タロがその二人を睨んで小さくはあるが吠えたのを見てだった。
祐樹は両親に家に入ったその親子を見つつ父に小声で尋ねた。
「親父、あの親子何だよ」
「祖父ちゃんの一番上の妹の明子叔母さんの孫だよ、真弓ちゃんだったか」
「そうだったのか」
「お前も見たことないな」
「ああ、明子叔母さんの孫なら皆知ってる筈だけれどな」
「遊び人でずっとふらふらしていて結婚したけれどな」
それでもというのだ。
「ギャンブル好きで酒と煙草が好きでな」
「離婚したんだな」
「それで息子は引き取ってらしい」
「そんな人なんだな、タロがあの人見て唸ってたからな」
「気をつけた方がいいか」
「あいつが吠える相手って胡散臭い人だけだろ」
「ああ」
家族は皆このことを知っている、無論父もだ。
「それはな」
「だからな」
「気をつけた方がいいか」
「おかしなことしたらな」
その時はとだ、祐樹は父に言った。何はともあれ一家でお通夜を仕切ったが子供、謙二という彼はお通夜の時に兎角騒いでいて。
父に母子が何かした時に頼むと言われていた祖父の兄から追い出され母親もだった。
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