犬を助けて
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第一章
犬を助けて
宮本弘明は黒髪を短くした小さい目の青年だ、背は一八二あり体格はフットボーラーの様だ。学生時代は柔道をしていた。
今は大学生で就職活動中だ、その彼が会社の面接に行く時にだ。
道で泣いている少し収まりの悪い黒髪の男の子を見た、それでその彼に尋ねた。
「どうしたんだ?」
「ジロが車に撥ねられて」
「ジロに?」
「うん、それで」
目の前にいる猫を見て弘明に話した、見れば白い毛の垂れ耳の大型犬だ、ゴールデンレッドリバー位の大きさだが外見はラブラドールに似ている。
「倒れていて」
「これは大変だ、すぐに何とかしないと」
「どうしたらいいかな」
「タクシーを呼ぶんだ」
弘明はすぐに携帯を出してタクシーを呼んだ。
「犬を連れてすぐに病院に行くぞ」
「病院?」
「獣医さんにな、倒れているけれど息がある」
見れば息ははっきりとしていた。
「それなら早いうちに病院に行けば」
「ジロ助かるの?」
「ああ」
子供を安心させる為に今は断言した。
「だからな」
「それでなんだ」
「もうタクシーは読んだからな」
それでというのだ。
「後はこの子をタクシーに乗せて」
「病院に行けばいいんだ」
「ああ、そうするぞ」
息はしているが倒れて動かない犬を見て話した。
「すぐに。最寄りの獣医さんまでな」
「それじゃあ」
子供も頷いてだった、弘明はタクシーが来ると。
犬を大事に身体を揺らさない様に慎重に抱いて運転手さんに最寄りの獣医までとお願いして病院に急行した。
そして犬を獣医に渡したが。
「しまった」
「どうしたの?」
「いや」
咄嗟のことだったので忘れていたが面接があった、時計を見ればもうはじまろうという時間だ。間に合うとは思えなかった。
それでだ、彼は腹を括って子供に言った。
「何でもない」
「そうなの」
「それで君お金は」
「小銭位しか」
「わかった、立て替えておくな」
犬の診察費等はというのだ。
「そうするな」
「そうしてくれるの?」
「君はお金ないだろ、お金より命だ」
犬のそれだというのだ。
「だからな」
「有り難う」
「いい、お金は取り戻せても命は違うんだ」
取り戻せないというのだ。
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