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戦国異伝供書

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第九十六話 尼子家の騒動その三

「ですが近頃はです」
「私達も飲める様になったのですね」
「非常に高いですが」
 それでもというのだ。
「この様にしてです」
「そうなのですね」
「近頃徐々に安くなってきていて上方等では広く飲まれているとか」
「そうなのですね」
「今川家ではかなり普通に飲まれているとか」
「駿河の守護の」
「はい、あの名家ではです」
 そうなっているというのだ。
「どうやら。あと織田家や朝倉家でもです」
「織田家は尾張、朝倉家は越前ですね」
「ああした上方に近い家でも」
 そういった家でもというのだ。
「大いに飲まれだしているとか」
「しかしこちらでは」
「これからかと。大内家は大きい家でかつ名家でありますので」
「このお茶も手に入りますか」
「容易に。そして出来れば」
 元就は義母に真顔で話した。
「当家もです」
「これからはですね」
「はい、大きくなり」
 そうしてというのだ。
「家で多くの者が飲める」
「そうなりたいと思われていますか」
「民百姓でも飲める様な」
 そこまでというのだ。
「なればよいかと」
「遠いお話ですね」
「ですが上方等では広く飲まれだしていますので」
「この安芸でもですか」
「そうなればよいと思っています」
 こう言うのだった。
「それがしは」
「大きな考えですね」
「はい、ですが」
「それを目指しますか」
「そうです、茶の葉を多く植えれば」
「お茶の葉を」
「はい、茶畑をです」
 それをというのだ。
「多くもうければ」
「それで、ですね」
「出来ると思います」
 誰もが飲める様になるというのだ。
「民百姓も」
「畑が多くあればですね」
「そうなると思いますので」
 だからだというのだ。
「ですから」
「まずはお茶の畑をです」
「多くもうける」
「そして茶の葉を多く栽培し」
 その茶畑でというのだ。
「そのうえで、です」
「そうですか」
「そう考えています」
「多くあれば安くなる」
「そして義母上も」
 ここで杉大方にもと言うのだった。
「是非」
「そうですか」
「より飲んで頂きたいですが」
「私はもうこれで」
 だが義母は息子の言葉に微笑んで答えた。
「充分です」
「今のお茶で、ですか」
「はい」
 そうだというのだ。
「これで」
「それはまた無欲な」
「いえ、私もです」
「質素にですか」
「そうありたいので」
 だからだというのだ。 
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