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FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~

作者:山神
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計算高き堕天使

 
前書き
もう少しでこのストーリーも終わってしまうのですが、これが終わったらOVAとかHERO'Sを最初はやろうと思ってます。
それにあたってOVAはクリスマスとナツvsメイビスはやる予定でいますが、何かやってほしいのとかありますか?
なければ上記二つと、ずっとやると言ってたハロウィンネタとHERO'Sをやっていく形になりますので頭に入れておいていただけると幸いです( `・ω・´)ノ ヨロシクー 

 
「ところでヨザイネ」
「何かしら?オーガスト」

地上へと降りていく2人。そんな中、オーガストはあることが気になり前を行くヨザイネに声をかけた。

「ティオスと天海・・・2人を止める作戦はあるのか?」

彼が気になっているのは、地上にてその絶大なる力を発揮している2人を如何にして倒すか。オーガストもヨザイネも魔力はかなり高い。しかし、ティオスの魔力と天海の戦闘能力はそれを遥かに上回っている。
たった2人が・・・しかも短時間という縛りがある中で助けに行ったところで、無策では何もできないのは目に見えていた。

「ギャンブルになるけど・・・方法がないわけではないわ」
「何?」

その言葉に耳を疑う。ヨザイネの頭の中にはすでにある作戦が練り込まれていた。彼女は横に並んだオーガストを見ながら、言葉を紡ぐ。

「はっきり言ってこれは賭けよ。成功できるかもわからないし、仮に成功しても本当にうまく行くのかわからない。それくらい未知数のことをしないと、2人は止められないわ」

彼女は彼らを倒すための作戦を持ってはいる。しかし、それが彼女の考えた通りの結果に繋がるか、そこが不安ではあるらしい。

「でも、うまくいけばティオスを弱体化させることができるわ」
「本当か!?」

実力・頭脳・魔力・体力・・・全てを兼ね備えていると言える完全無欠の敵。どこを攻めればいいのかさえわからないような相手の力がもし落とせるのであれば、それが確実じゃなくてすがりたくなるのが人の性。

「ただ、この作戦は時間がかかるの・・・それに、何人かの力も借りなきゃいけない」
「そこは大丈夫だ」

作戦の成功の可否・・・決行までの時間稼ぎ・・・挙げようと思えば不安材料などいくらでもある。それら全てを乗り越えられなければ、勝つことはできない。オーガストはそのための自分がやらなければならない使命を理解していた。

「私が時間を稼ぐ。その間にお前が・・・」
「ありがとう。必ずなんとかしてみせる」

目線を合わせ頷く2人。彼らの目の前には、地上が間近へと見えていた。

「じゃあ、前線は任せるわ」
「待て」

もうまもなく地上に着く。その前にティオスたちにバレないように離れた位置に着地しようと考え、オーガストと別れようとしたヨザイネだったが、オーガストがあることを問いかける。

「一応聞いておくが・・・何をするつもりだ?」

果たしてどんな作戦をしようと思っているのか。最後にそれだけは聞いておきたかった。戦いに集中するために、気になることだけはなくしておく。
その問いを聞いたヨザイネは、ニヤリと口角を上げる。

「ティオスが掌握している時の狭間・・・あれをーーー」

ヨザイネの作戦。それを聞いたオーガストはその予想外の作戦に思わず目を見開いた。















シリルside

「兄ちゃん・・・」
「メイビス・・・」

もう形すら残っていないゼレフと初代がいた場所を見てナツさんとウォーロッドさんが顔を俯ける。その姿を見て、天海はタメ息を漏らし、レオンは笑みを浮かべていた。

「くくっ、お前らだけ幸せに死ねると思うなよ?」

全ての人間をこの世から消し去ると宣言していたレオン。その彼の表情はあまりにも悪魔じみていた。

「レオン!!ふざけるなよ!!」

全員の怒りが頂点へと膨れ上がろうとしていた時、先頭に歩いてきたのは、彼のいとこである青年だった。

「リオン、何度も言わせるな。俺はもうお前らの知っている俺じゃないんだ」

その言葉すら彼にはもう響かない。その姿を見て、俺も怒りの限界値を越えていた。

「レオン・・・お前にはガッカリした」
「は?」

今できる限りの魔力を高めていく。妖精の心臓(フェアリーハート)を使ってしまったせいでいつもの魔力が見劣りしているように感じてしまう。それでも、消えかけていた翼が片方だけとはいえ、元のサイズに戻りつつある。

「これ以上お前の横暴を許すわけには行かない」
「それをさっき止められなかったから、今苦しんでいるんだろ?」

そう言った彼の顔が余裕綽々であまりにも苛立ってしまった。その結果、俺は誰よりも先に飛び出す。

「待てシリル!!1人で先走るな!!」

リオンさんの制止も聞こえず突っ込む。レオン目掛けて突進していく俺を見ても、彼は慌てて構えるようなことはしなかった。

ヒョイッ

まるでその動きを待っていたかのように体を横にズラすと、そのまま拳を握りしめ腹部にそれを打ち込んでくる。

「かはっ・・・」

ノーモーションだったはずなのに、声すら出せないほどの重たい一撃。しかし、ここで怯むわけには行かない。体勢は悪いが、そのまま彼の顎を目掛けて鉄拳を放つ。

「さっきまでの力の見る影もなくなっているな」

予備動作を入れていないのだから見破られるはずがない。それなのに、簡単に見極められ手を払われた。

「火竜の・・・」

そのままひじ打ちを放とうとしてきたティオス。だが、それよりも先に1人の青年が飛び込んできていた。

「翼撃!!」

炎を翼のように広げた攻撃。ティオス目掛けてそれを放ってきたナツさんだが、その攻撃が届くよりも前に、もっと強力な敵が割って入った。

「まるで遅いな」
「!!」

ナツさんの目の前に出てきた天海は、火竜の翼撃から避けることもせずそのまま拳を打ち出すと、魔法ごと彼に右ストレートを打ち込んでいった。

「ぐはっ!!」

炎の翼を容易く破り、ナツさんの顔面にそれを叩き込む天海。そのあまりの威力に彼は地面を転がり、起き上がることができない。

「こいつは殺してよかったんだよな?ティオス」
「うん。いいよ」

レオンが実在している上で重要ではないナツさん。天海はそれを改めて確認すると、彼に向かって足を振り上げる。

「さてと、お前はどうしようかね」

一方、俺を見下ろしているレオンは顎に手を当て何かを考えている様子。その間に逃げようと思ったが、先ほどのダメージが残っており、とても彼の射程圏内から逃げられるような気がしない。

「ナツ!!」
「シリル!!」

ルーシィさんとウェンディの声。トドメの踵落としを放とうとする天海と目の前の存在の動きを封じるための方法を考えているティオス。だが、2人は誰よりも早く何かを感じ取ると、動きを止め上空を見上げた。

「え!?」
「なんだ!?」

彼らに釣られて数人が上を見上げる。もしこれが彼らの罠であったら、間違いなく全滅させられてもおかしくないくらい無防備になっている魔導士たち。そんな彼らの前に、空から落ちてきた1人の老人。

「あれ?なんで君がここにいるんだい?」
「ほう・・・あの状況でどうやって生き延びていたんだ?」

2人はいるわけのないその人物に驚き、彼の強さを知るものは恐れ戦き、仲間になっていることを知る俺たちは思わず笑みを浮かべた。

「私が相手をしよう」

魔導王オーガスト。自らの命を賭けることも厭わない最強の助っ人は、流れを失った魔導士たちを救うことができるのだろうか。















第三者side

ダンッ

オーガストが前衛に加勢に加わったと同じタイミングで、魔導士たちの後方に舞い降りた1人の少女。突然姿を現した彼女に、周囲にいたものたちは驚いていた。

「わっ!!ビックリした!?」
「あ!?オメェは・・・」

突然の来訪者に驚くイヴと、その少女に見覚えのあったオルガは敵意を露にしていた。

「待て、オルガ」

殺された怨みを晴らそうかと、いつ飛び掛かってもおかしくない雷神を止めるのは記憶の造形魔導士。彼は少女を見つめていると、気になったことを問いかける。

「君は私たちを生き返らせるために自らの命を犠牲にしたと記憶していたが・・・」

彼女はオルガやルーファスといった面々の命を確かに奪った。しかし、それ以上に彼らの仲間たちを・・・全ての人間を蘇らせたのだ。自らの命を捨ててまで。
なぜそんな彼女がこの場所にいるのかわからなかったルーファスが問いかけると、彼女はゆっくりと立ち上がり彼らの方を向く。

「ごめ~ん!!そんなことに答えてる時間も勿体無いの」
「「「は!?」」」

突然両手を合わせたかと思えばいきなりのそんな発言。これには仲間の怒りを納めさせたルーファスも納得できない。

「ただ君がここにいる理由だけ聞ければいい!!それだけで私たちは納得する」
「だからそんなしょうもないこと答える時間もないって言ってるのよ」

余計な時間は一秒だって減らしたいヨザイネ。彼女はいまだに食い下がろうとしているルーファスの手を取った。

「私のお願いを聞いてほしいなぁ」
「!?////」

上目遣いで目を潤ませながら懇願してくる少女。その姿に間近で見ていたルーファスはもちろん、周囲にいたものたちが男女問わず顔を赤らめていた。

「な・・・何をすればいいんだ////」

狙い通りの回答に思わずしたり顔をするヨザイネ。彼女はその周辺にいるものたちにのみ聞こえるくらいの声でこう言った。

「ディマリアとあなたたちの仲間の幻竜・・・あとはあの船を操縦できる人たちを呼んできて。もちろん、ティオスたちにはバレないように」


















ヨザイネがティオス討伐のために動き出した頃、前線では予想外の人物の登場に全員が面を喰らっていた。

「なんで・・・オーガスト様が・・・」

自らの命を賭けてティオスを道連れにしようとした魔導王の登場にアイリーンは口を開けていることしかできない。

「なんだ、仕留め損なったのか?ティオス」

オーガストは古代魔法アルス=マギアを放ちその体ごとティオスを消し去ろうとした。しかしそれはティオスの罠・・・その術中にハマってしまったはずの彼は命を落としたはずなのに・・・今この場に実在しているのである。

「ふぅ・・・やれやれ」

その姿を見たティオスは一つタメ息をついた。しかし、その目からは焦りの色は一切見えない。オーガストを捉えるその瞳は、まるで呆れているような印象を与えた。

「何か君は勘違いをしているんだよね。俺が君に罠を仕掛けたのは片腕を失っていたからだ。万全の状態である今、君程度が足掻こうが一切意味はないんだよ」

この時代のレオンを吸収したことにより通常の肉体とそれ以上の魔力を手にいれたティオス。そんな彼の前に現れたのが魔導王の異名を持っていようが関係ない。彼からすれば取るに足らない存在なのだ。

「果たしてそうかな?ティオス」
「??」

しかし、そんなことは重々承知しているはずのオーガストは不敵に笑ってみせた。それがどういうことなのかわからず、ティオスと天海は目を細める。

「グラシアン」コソッ
「??」

二人の強者の意識は完全にオーガストへと向けられている。その隙に数人の魔導士たちが前線から姿を消していたことに、彼らは全く気付くことができなかった。それが後々大きな意味を持つことを、思い知らされることになるとも知らずに。

「君が何か策を持っていても、それは君の力の範疇でしか実現できない。僕たちを倒すなんて、できないんじゃないかな?」
「そう思うならそれも良い。あとで後悔するだけなのだから」

互いの挑発を皮切りに両者が後方へと飛ぶ。あえて接近ではなく距離を取ったのだ。その理由はもちろん、互いに大きな技を放つための時間を確保するため。

封印の氷地獄(コキュートス)!!」
「天照二十八式」

動きを封じにかかるティオスと初っ端から大技を仕掛けるオーガスト。双方は別々の判断を下したが、ここは魔導の王に軍配が上がった。

魔法陣から現れた黒い柱がティオスから放たれた冷気を押し返す。目の前まで敵の攻撃が来たところで、彼は地面を蹴り宙に体を浮かせる。

「コピーだけじゃない。これだけの魔法も放てるとはな」

長い年月を父の目的のために過ごしてきたオーガストはメインに使用している瞬間コピーの他にも使える魔法がある。その中でも天照魔法陣は、かつて悪魔の心臓(グリモアハート)のマスターハデスも使用していた強力な魔法。それを使えれば、ティオスに対抗することもできる。

「でも残念。僕は一人じゃないんだよ」

ティオスに視線が向いているオーガストの目の前に現れた天海。彼は隙が生まれている敵目掛けて回し蹴りを放つ。

「やらせないわ!!」

だが、それはギリギリでアイリーンが防御する。標的を変え追撃しようとした天海だが、後ろから見えた二人の剣士に気付き、後方へと下がる。

「「ハァッ!!」」

エルザとカグラ、二人の一撃は天海を捉えることをできなかった。その間に地面へと着地したティオスだったが、彼らは感じていた。少しずつ流れが変わっていることに。

「なんか、嫌な感じだね」
「そうだな」

数的優位はフィオーレとアルバレスの連合軍。そこにオーガストが加わったことにより戦力も増したと言えるだろう。だが、それでもこの二人には焦りの色が見えない。

「まぁ、それでも大した脅威にはならないけどね」

そう言ったティオスの目を見てシリルたちの体が一瞬ビクついた。この状況でも決して折れない彼らのメンタルと纏う殺気に、冷静さを保つのが精一杯だった。

「ん?」

必死に心を落ち着けているシリルたちとは対照的に余裕がまだ見えるティオスと天海。その余裕からなのか、天海があることに気が付いた。

「ティオス、あれはあのまま行かせていいのか?」
「あれ?」

天海の指さした方向を見ると、そこには上空へと飛び上がっている青い天馬(ブルーペガサス)のクリスティーナの姿があった。

「へぇ、そういうことか」

その時、ティオスはオーガストがなぜここにいるのか、そして何をしようとしているのかを自分なりに解釈することができた。

「ヨザイネも来てるんだね、オーガスト」
「え!?」

クリスティーナを動かそうと考えた人物が誰なのかすぐに察したがついた。その名前を聞いた時、彼女の息子は思わず反応していた。

「さぁ、どうだろうな」

それに対してのオーガストの返答。その素っ気ない感じから、彼はそれを肯定と受け止める。

「天海、あれは気にしなくていいよ」
「なぜそう言い切れる?」

上空からの攻撃が来るのかと天海はその方向を見ていたが、クリスティーナはそんな気配も見せずにどんどんこの場を離れていく。彼らが何をやろうとしているのか多少は気になる天海は、ティオスにそんなことを聞いていた。

「大方、オーガストを使いながらヨザイネが安全圏に全員を避難させようって魂胆だよ。ただ、バレないように後方の数人しか連れていけてないようだけど」

ティオスはオーガストが時間を稼ぎ、ヨザイネが魔導士たちを自分たちから引き離そうとしているのだと考えていた。しかし、もしそうであっても彼らには何も問題はない。なぜならティオスは、瞬間移動で彼らを見つけることなど造作もないからだ。

(ほう・・・ティオスのこの発想・・・)

ティオスの勘違い・・・これを聞いたオーガストは思わず笑みを浮かべそうになったが、グッと堪える。もし彼らに感づかれたら、作戦が失敗することが目に見えていたからだ。

「大方体勢でも立て直したいんだろうけど、そんなもの全く意味がない・・・」

ティオスはそう言うと頬を膨らませる。それを見てオーガストとアイリーンはそれぞれの魔力を高め、防御に入る。

「次が戻ってくる前に、全員死ぬんだからな!!」

声とともに放たれたブレス。それはオーガストとアイリーン、二人の最強クラスの魔導士ですらあっさりと飲み込んだ。
















「おい!!あれでも大丈夫なのか!?」

上空から地上を見ていたグラシアンは思わず声をあげた。ティオスの強烈なブレスが仲間たちを飲み込んでいくのを見て、とても冷静さを保ってはいられない。

「大丈夫よ。防御に徹しているオーガストを、破ることは、ティオスでも天海でも時間がかかるはずだから」

不安そうなグラシアンたちを見ても冷静なヨザイネ。そんな彼女を見て目を細める数人の魔導士たち。

「俺たちは一体どこに向かってるんですか?」

そう聞いたのは白き竜。その他にもローグやディマリアといった魔導士たちがこの船に乗っていた。

「あなたたちはティオスから聞いたわよね?時の狭間って」
「確かティオスが瞬間移動する時に入る空間のことか」

あながち間違ってはいない解釈のためヨザイネは肯定する。彼女は先頭で舵を切る等身の小さい男と金色の髪をした女性に歩み寄る。

「時の狭間まではどのくらいかかる?」
「今最大速度で向かっているよ」
「たぶんあと2、3分といったところね」

その時間を聞いて何か言いたげな表情を浮かべたヨザイネだったが、一度深呼吸するとすぐに無表情へと戻る。

「ヨザイネ、物事には順序があると思わない?」
「順序?」

アンナの問いかけに疑問符を浮かべたヨザイネだったが、全員からの視線に気付きポンッと手を叩く。

「作戦の内容を聞かせないってことね、ハイハイ」

危機的状況であるはずなのに、まるで緊張感のない少女に苛立ちを覚えたが、なんとか堪える。ヨザイネは全員を見回すと、自らの考えを述べた。

「ティオスが時の狭間を掌握しているのは知ってるでしょ?あれがある限り、この世界に安全圏などないの」

ティオスの瞬間移動・・・その源は彼がこの世界に存在し続けるためにリンクさせた時の狭間だ。これが存在している限り、ティオスはどこにでも現れることができる上に、その力を遺憾なく発揮することができる。

「つまり、時の狭間を閉じるのがお前の作戦なんだな?」

ディマリアが皆が思っているであろうことを言うと、なぜか少女は首を横へと振った。

「時の狭間を閉じるんじゃないの?」
「それのどこに問題があるんだい?」

ブランディッシュとヒビキがもっともな疑問を述べる。それに対し、少女はタメ息を漏らしながら回答した。

「最初はそうしようと思ったわ。でも、それをしてもおそらくティオスは消えない。なぜなら彼はこの時代において何年も存在してしまったのだから」

ティオスは自分で来る時間を決めることができた。その中で彼はあえてこの竜王祭(ラグナログ)の年ではなく、もっと前の時間へと飛んだ。その理由は天海を集めることや自身の身体の成長を待つことだけではないことに気付いたのだ。

「この時代においていくつもの国を滅ぼし、自らの存在をこの時代に刻み込んだ。もし時の狭間を封じることができても、彼がいなければこの世界の時空が歪んでしまい、崩壊してしまう可能性がある。そのために徹底的に無関係の国の民も彼らは殺していたのよ」

ティオスはあらゆる非常事態に備えて準備をしてきた。それは自らが支配している時の狭間でも同様のことが言える。それだけ彼はこの戦いに賭けていたのだ。

「なら!!時の狭間をどうするって言うのさ!?」
「そうだぜ!!封じても意味がないなら、一体何をするつもりだ!?」
「それ以外でレオンを止めれる方法が、あるってことですか?」

イヴ、レン、タクトが鋭い目付きでヨザイネを睨み付ける。それを見ても彼女は焦りを一切見せない。むしろ皆が話しに集中してくれて、嬉しそうにすら見えた。

「落ち着いて。正攻法が通じないなら、逆に考えればいいのよ」
「逆?」

顔を見合わせるスティングたち。何を言っているのかわかっていない彼らを見たヨザイネはニヤリと笑みを浮かべた。

「時の狭間を()()()()()()のよ。あえてね」
「「「「「!?」」」」」

ヨザイネの思わぬ発言に目を見開く。それだけ彼女の言っていることは危険だったからだ。

「バカな!?そんなことしたらどうなると思ってるんだ!?」
「そうよ!!時の狭間を開いたらティオスが強化されてしまうわ!!」

敵の力の源になっているものを逆に開いてみせるというヨザイネの案は、味方ならばよかったのかもしれない。ただ、敵からすればそれはさらなる絶望へと自らが向かおうとしている自殺行為に他ならない。

「えぇ。私の予想でも、ティオスがさらなる力を手にいれると思うわ」
「だったらなおさら・・・」

不安を口にしていく魔導士たちに対し、彼女はなぜか笑みを浮かべている。この馬鹿げた提案をして、なぜこれほどの表情を浮かべていられるのか、彼らには疑問でしかない。

「ではここで問題です!!ダダン!!」

突然の効果音にもはや何が起きているのかわからずキョトンとしているグラシアンたち。その姿が目に入っているはずなのに、ヨザイネは気にする素振りを見せることなく話を続ける。

「ティオスが支配している時の狭間を開くと、なんで彼が強化されるのでしょうか!?」
「「「「「??」」」」」

彼女のクイズに再び顔を見合わせる魔導士たち。彼女のその問いは、あまりにも分かりきっていたからか、逆に彼らは冷静さを取り戻していた。

「そりゃあ、時の狭間の魔力がより多くティオスに流れ込んで・・・」
「それによって奴の魔力が・・・」
「いや・・・待て」

そこまで言うと、青年があることに気が付いた。その違和感に気が付いたのは幻影のドラゴン。

「そもそもあいつは時の狭間を掌握してるんだから、それを解放しようがどうしようが、好きにできるんじゃないか?」

青年の素朴な疑問は的を射ていた。ティオスはそれを元々支配しており、現に使いこなしている。それならば時の狭間の解放度など決して意味はないはずだ。

「じゃあティオスは強くならないってこと?」
「いや・・・でも強くなるってあの()が・・・」

情報量が多すぎてよく分からなくなってきている面々に対し、ヨザイネはようやく見えてきた時の狭間を視認しながら、自身の考えを述べる。

「時の狭間を解放すればティオスは強くなるわ。でもそれは、()()()()()()あるものが原因なのよ」
「あるもの?」

またしてもはぐらかしたような言い方にディマリアは少し機嫌が悪くなってきていた。仲間だったからこそ彼女の子供っぽい性格は知っているが、それでも度を過ぎていると思っていた。しかし・・・

「そうか!!そういうことか!!」

後ろにいる三頭の竜の声で、その考えはすぐに打ち破られた。

「あんたの言いたいことがやっとわかった!!」
「しかしよくそんなこと思い付いたな?」
「さすが俺の嫁の親」ボソッ

三大竜は彼女の意図がすぐに理解できた。スティングとグラシアンはヨザイネに詰め寄る勢いで駆け寄り、ローグは皆に聞こえない程度の声でそんなことを言っていた。

「ずっと納得できてなかったの。私とシリルの想いは一つだったのに、完全にはそれを実現できなかった。それはティオスが時の狭間を掌握していたからなのよ・・・たぶん・・・」

最後の方が自身無さげでやや不安が残るがそれでも構わない。なぜなら絶望を覆す突破口がようやく見えたのだから。

「グラシアンはオーガストに変身して!!ディマリアと二人で時の狭間を開くの!!他の皆は二人に魔力を分貸して!!」

時の狭間が近付いて来たことにより指示を出していく堕天使。この作戦の全てを理解したグラシアンはすぐに変身するが、まだ理解できていないものたちはそれに動けない。

「待てヨザイネ!!まだ何がなんだかわからない!!」
「もう!!ディマリア察し悪い~!!」

地団駄を踏んでいるヨザイネに何か言いたげなディマリアだったが、グッと言葉を飲み込み彼女を睨み付ける。その眼光で怒っていることを察したヨザイネはビクッと体を震わせたかと思うと、冷静に言葉を紡いだ。

「ティオスを止めるにはこれしかない。時の狭間を開いて時間の流れをでき得る限り正常に戻す」
「それをするとどうなるんだ?」
「彼の中にいる存在・・・

















この時代のレオンを生き返らせる」
「「「「「!?」」」」」

三大竜以外の全員がその言葉に驚愕した。そんなことができるのかとも思えたが、ヨザイネの真剣な眼差しに彼女が本気であることを悟る。

「これはギャンブルよ。理論上はうまくいくはずだけど、何が起こるかわからない。でも、それぐらいのことをしないと私たちに勝ち目はないわ」

一か八かの確率論に全てを委ねた堕天使。果たしてそれが吉と出るか凶と出るか、その先は神のみぞ知る。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか。
最近最終局面に差し掛かるからかめっちゃ1話が長くなってる気がする。
次はいよいよ最終局面に入るはずです。また時間かかりそう・・・ 
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