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戦国異伝供書

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第九十四話 負け戦を見据えその四

「しかしな」
「目では」
「そうじゃ、目は容易にはな」
 それこそというのだ。
「嘘は言えぬ」
「目に出ますか」
「心が澄んだ者は目が澄んでおるというな」
 元就は孟子の言葉も出した。
「そうであるな」
「はい、確かに」
「しかし心が歪んでいる者はな」
 その者はというと。
「目が濁っておる」
「目はそこまで言いますか」
「口程ものを言うというが」
 元就はこうも言った。
「むしろ口より遥かにじゃ」
「ものを言いますか」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「それでじゃ」
「こちらについた国人達は」
「皆な」
「心からはですか」
「大内家に従ってはおらぬ」
 全くというのだ。
「誰もな」
「では」
「今は大内家が攻めておってな」
 そしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「そちらが強いので」
「ついておるだけでな」
 それでというのだ。
「若しそれが変われば」
「戦局が尼子家に傾けば」
「それでじゃ」
 容易にというのだ。
「尼子家にじゃ」
「戻りますか」
「わしがこれまで言っておる通りにな」
 まさにというのだ。
「そうなる、当家もそうであったな」
「はい、そのことは」
 その通りだとだ、志道が答えた。
「まさにです」
「そうであるな」
「大内家につくこともあれば」
「尼子家についたこともな」
「ありました」
 その通りだというのだ。
「当家にしても」
「それが同じじゃ、家を守る為にはな」
「強い方につく」
「その時にな、それが戦国の世の常でな」
 そしてというのだ。
「西国でもじゃ」
「それは同じで」
「それでじゃ」 
 まさにというのだ。
「これから月山富田城を攻めるが」
「あの城を、となると」
「この数でもな」
 大内家の大軍、三万に達したそれでもというのだ。
「力推しではじゃ」
「攻めてもですか」
「攻め落とせぬ、険しい山を全て城にした」 
 月山富田城はというのだ。
「西国一の堅城じゃ」
「その城を攻め落とすには」
「三万でもな」
 大軍であるがというのだ。
「力技ではな」
「攻め落とせぬ」
「絶対に攻め落とせぬ城はないが」
 それでもというのだ。
「あの城は兵も多くよき将もおる」
「新宮党ですな」
 今度は桂が言ってきた。 
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