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戦国異伝供書

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第九十四話 負け戦を見据えその二

「主な家臣は誰も離れていませぬ」
「だからであるか」
「はい、直臣は」
 尼子家の彼等はというのだ。
「全く、国人達は常に離れますな」
「何かあればな」
 その通りだとだ、義隆も答えた。
「そうなるのう」
「この西国でも」
 他の場所と同じくというのだ。
「そうなりますな」
「それはな」
「それで、です」
「国人達がこちらについてもか」
「所詮そうした者達です」
 何かあればつく方を変える者達だというのだ。
「ですから」
「あの者達のことは大したことではないか」
「若し我等が不利になれば」
 その時はというのだ。
「簡単にです」
「尼子家に戻るか」
「大内家にもそうでしたな」 
 元就は義隆自身にも話した。
「そうですな」
「それはな」
 義隆も否定せずに答えた。
「言われれば」
「ですから」
「あの者達のことは気にせずか」
「はい、尼子家と戦っていきましょう」
 こう言うのだった。
「そして月山富田城までは」
「あの城まではか」
「攻めずにいましょう」
「そうした方がよいか」
「はい、それでです」
 だからだというのだ。
「然るべき城まで攻め落とし」
「そこでか」
「よしとして」
 そのうえでというのだ。
「下がりましょう」
「あの城までは攻めぬか」
「はい」
 是非にと言うのだった。
「この度は」
「毛利殿、それはです」
 全くとだ、陶が言ってきた。
「なりませぬ」
「あくまで、ですか」
「あの城を攻め落としましょうぞ」 
 月山富田城をというのだ。
「何としても、この数と士気なら」
「出来るからこそ」
「必ず」
 まさにというのだ。
「そうしましょうぞ」
「そう言われますか、陶殿は」
「慎重に進まれるのもよいですが」
 それでもというのだ。
「今の我等はです」
「攻めてよいと」
「そうかと」
「そしてあの城もですか」
「攻めましょうぞ」
 陶の考えはあくまでこうだった。
「そうしましょうぞ」
「しかしそれは」
「どうもですか」
「それがしとしては」
 元就はこう返した。
「どうも」
「そうですか」
「はい、どうしても」
「あの城は」
 月山富田城はというのだ。 
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