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ロックマンZXO~破壊神のロックマン~

作者:setuna
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第七十話 海底火山

アルバートのアジトに到達したアッシュ達。

位置を確認したら海底火山付近であることが判明した。

もし、外に出ることになったら水中を迅速に移動出来るモデルLかクロノフォスのどちらかに変身しなければならないだろう。

しかし、今気になるのはそれではない。

「…分かるか、アッシュ、グレイ」

「ええ、この先から凄いプレッシャーを感じる…モデルVに違いないわ…!」

取り敢えずトランスサーバーから出て、外の様子を伺う。

「……アジトだけあって守りが固そうだな。敵を分散させよう。俺は別ルートを進むからお前達は俺とは違うルートで進んでくれ」

外に飛び出したヴァンが先に進み、アッシュとグレイも言われた通りに別ルートを進んだ。

水の中に飛び込んでモデルLに変身し、シャッターを潜り抜けて海底火山の噴火に巻き込まれないようにダッシュとウォーターダッシュで突き進む。

降り注ぐ火山岩をかわしながら、立ちはだかるイレギュラーを二人はハルバードで薙ぎ払いながら進んで奥のシャッターを潜り抜けた。

次の海底火山地帯を抜ける前に息を整えて、再びシャッターを潜り抜けてウォーターダッシュで突き進む。

そして奥にある施設に繋がる入り口を発見し、そのまま降りていきながら施設のシャッターまで移動して中に入る。

「ようやく火山の噴火にビクビクしなくて済むわ…アルバートの奴…何でこんなとこにアジトなんか作るのよ…」

「それだけここが重要な場所なんだと思う…アルバートにとって…」

「そうね…行くわよグレイ」

モデルLのサーチ能力を使って進み、此方に向かってくるイレギュラーを返り討ちにしながら進んでいくと、プレッシャーが更に重く感じてくる。

「凄いプレッシャー…そろそろかしら」

「あの扉の奥かもしれない」

二人はロックマン・モデルAの姿に戻り、シャッターを抉じ開けて中に入ると、信じられない光景が広がる。

大型のモデルVが大量に保管されていたのだ。

「まさか…これ、全部モデルVなの…!?」

「フッフッフッ…驚いたかい?アッシュ君、私がこの計画にどれだけの時間をかけたと思っているんだ。君達がモデルVを一つ二つ壊し、多少の想定外が起きたところで、私の計画は揺るがない」

驚くアッシュとグレイにアルバートは歪んだ笑みを浮かべながら転送によって現れた。

しかし次の瞬間、プロメテとパンドラが出現する。

「それはどうかな?」

「「プロメテ…?パンドラ…!?」」

「回収されたモデルVをこんな所に溜め込んでいやがったか…まさかお前達がここを見つけ出してくれるとはな」

「…礼を言うわ…ロックマン・モデルA…」

「こうして会うのは何百年ぶりだろうなぁ!?マスター・アルバート!モニターで見るより遥かに間抜け面じゃあないか!」

鎌を構えてアルバートに向けて狂気の笑みを浮かべるプロメテに対して、アルバートは険しい表情を浮かべていた。

「…お前達…どういうつもりだ?」
 
「こういうつもりさ…!」

「ぐっ!!」

プロメテが鎌でアルバートを斬りつけ、アルバートは力なく床に倒れ伏した。

「フフッ…フハハ…!ハーッハッハッハッハッ!自分が作った最初のロックマンに倒される…か!屑には相応しいフィナーレだ!」

「何だ…!?何がどうなってるんだ!?」

あまりの急展開についていけないモデルA。

それはアッシュもグレイも同様で、何も言えずにいる。

「お前らは利用されてたんだよ、俺達にな。俺とパンドラは、目覚めた時からロックマンとして戦い合う事を運命づけられていた…この男の…究極のロックマンを作るという下らん計画のためにな」

数百年にも渡る戦いの時間、そして短く設定された寿命によって束縛されていた日々はプロメテとパンドラを狂気に走らせるには充分過ぎた。

「だから…私達は決意した…アルバートへの…復讐を…」

「復讐だって…!?」

パンドラの言葉にグレイは目を見開く。

それを嘲笑いながらプロメテは話を続けた。

「俺達は何人ものロックマンを見つけ出しては、この戦いに巻き込んでいった。計画が進めば、アルバートは必ず姿を現わすはずだからな。そしてお前達はアルバートを追い詰め…俺達は復讐を遂げる事が出来たってわけさ」

「まさか…こんな形で戦いが終わるなんて…」

「フッフッフッ……何を言っている…まだ終わっちゃいない…!まだ残ってるじゃないか…!屑に作られた…屑の塊…俺達ロックマンが!」

「私とプロメテは…元の体には…戻れない…この運命は…変えられない…だから…滅びの運命を終わらせる…私達が…終わらせる…」

「アルバートの作った物、その全てを滅ぼす!それが俺達の復讐だ!さあ…楽しもうじゃないか…!最後の宴を!」

プロメテが鎌を構え、パンドラも杖を構えて戦闘体勢に入ったのを見て、二人は無意識に最も戦闘力が高いモデルZXに変身して身構えた。

「あんた達がアルバートを憎む気持ちは何となく理解出来たけど…だからって無関係な人達を巻き込んでいい理由にはならないでしょ!?」

「無関係?無関係な奴など誰一人いない!」

プロメテが火柱を発生させてアッシュとグレイを灰にしようとし、二人はダッシュでかわしながらZXバスターを同時構えてチャージバスターを発射する。

パンドラが前に出て槍型の電撃を出してチャージバスターを防ぐ。

「この世界で生きている限り…アルバートと無関係な存在はいない…」

「だからって自分達の目的のためにたくさんの人を傷つけていい理由にはならないだろ!」

バスターが効かないならZXセイバーによる接近戦を仕掛けるグレイだが、電撃によって弾かれる。

「ふん、正義のヒーローを気取るな。お前も自分のことを知るために他のロックマンとフォルスロイドと戦い、倒してきた。自分の目的のために他人を傷付けるならお前達も同じだろう!!」

プロメテが割って入り、グレイを衝撃波で吹き飛ばす。

「それでもアタシ達はあんた達みたいに憎しみに駆られて戦うようなことは絶対にしないわ!」

アッシュがセイバーを振るうが空振りに終わり、パンドラが杖に乗って縦横無尽に動き回り、プロメテが鎌を構えて急降下してきた。

「偽善者ぶるなぁ!」

「きゃあっ!」

パンドラの突進に気を取られていたアッシュがプロメテの斬擊をまともに受けて吹き飛ばされる。

「アッシュ!!」

「この世界はアルバートが作った玩具箱だ。あいつに関わる全てを滅ぼしてやる!!」

「ええ…滅ぼす…全てを…」

プロメテの髪が硬化して床に突き刺さると、床から飛び出し、そしてパンドラが射出したビットも電撃を繰り出してくる。

「「トランスオン!」」

モデルHに変身してエアダッシュで猛攻を潜り抜けるアッシュとグレイ。

次にロックマン・モデルAに戻ってホーミングショットをプロメテとパンドラに叩き込む。

「っ…やるわね…」

「少しは強くなったようだな」

ライブメタルと一体化したロックマン特有の自己修復能力で即座に回復していくプロメテとパンドラ。

「(あいつらを倒すには自己修復を上回るダメージを叩き込むしかないようね。あいつらにそれくらいのダメージを与えられるのはギガクラッシュだけだけど。あいつらが大人しく受けてくれるはずもないし…何とかあいつらの動きを止めないと!)」

グレイに視線を寄越すと、アッシュの考えをグレイも理解してくれたようで頷いた。

「トランスオン!」

グレイがモデルZXに変身してプロメテとパンドラにZXセイバーで斬り掛かる。

「接近戦か?それで俺を相手にするとは正気とは思えないな!」

グレイを嘲笑いながらプロメテはグレイの攻撃を容易く受け流して逆に痛烈な一撃を加える。

「あぐっ!?でやあっ!」

体に傷を負いながらもセイバーを振るうが、腕を掴まれてしまう。

「お前程度の剣の腕で俺に敵うわけがないだろう!!」

「ごふっ!」

蹴りを鳩尾に叩き込まれたグレイはあまりの威力に蹲る。

「滅びなさい…」

そしてパンドラがビットを射出し、雷撃、氷擊を発射してきた。

アッシュがグレイを抱えてダッシュとジャンプを駆使してかわしていく。

「アッシュ…ごめん、助かったよ」

「良いわよ…本当に強いわ…」

今まで戦ったロックマンの中でもエールと同じくらいに強く、恐らくはヴァンとも渡り合えるくらいには強いはず。

今の自分達では勝てる見込みはあまりないだろうが…。

「諦めるわけにはいかない…あいつらは僕達を倒したら世界を滅茶苦茶にするつもりなんだ…」

プロメテとパンドラの気持ちも理解出来なくはない。

アルバートにモデルVのロックマンとして作り出され、寿命は短く設定されて何百年もアルバートに束縛されていたのだ。

それでは気が狂うのも当然とも言えるし、あの二人に同情出来る。

「ええ、そうよ。負けられないわ…あいつらがどれだけこの世界が憎くてもアタシ達の大事な人達がこの世界にいるんだもの」

大事な仲間、自分を助けてくれた人々。

それらを守るためにここで倒れるわけにはいかないのだ。

「しぶとい奴らだ。そのしぶとさだけは認めてやろう」

「それはどうも、でもあまり調子に乗ってると痛い目に遭うわよ」

アッシュはモデルFに変身し、グレイはモデルHに変身した。

「喰らいなさい!!」

ナックルバスターを構えてショットを連射するアッシュ。

「ふん!今更そんな攻撃が…何!?」

叩き斬ろうとした直前に軌道が変化し、プロメテに直撃する。

ナックルバスターのショットの軌道変更はプロメテもパンドラも理解しているものの、敵からすれば唐突に軌道が変わるので理解はしていても対応が難しい攻撃だ。

「喰らえ!」

ショットの直撃を受けて動きが止まっているプロメテにダッシュジャンプからのエアダッシュの超加速で擦れ違い様にダブルセイバーで脇腹を深く斬り付けた。

「っ…失敗作が…!」

「消えなさい…」

ダメージを受けたプロメテの代わりにパンドラがビットを操りながら杖に乗って突進してくる。

エアダッシュとホバーを上手くかわしていき、そしてグレイに気を取られていたパンドラにアッシュが割って入り、メガトンクラッシュを叩き込む。

「吹っ飛べ!」

「うっ…」

突進中にナックルバスターのパンチをまともに受けたパンドラは勢い良く吹き飛ばされる。

「たあっ!てやあっ!」

ダブルセイバーの手数の多さを活かしてプロメテに連続攻撃を繰り出す。

「貴様…!」

鎌で防ぐが、修復を終えていない脇腹の傷と手数ではグレイが有利なためにプロメテの体に傷が出来ていく。

「プラズマサイクロン!」

「調子に乗るなぁっ!」

放たれた竜巻をプロメテが両断すると、いつの間にかモデルZXに変身していたアッシュが真上から襲い掛かる。

「それっ!!」

回転斬りからの三連擊、追撃のライジングファングの怒濤の連続攻撃。

「ぬっ!?」

「滅びなさい…」

アッシュに向けて電撃を発射しようとするパンドラだが、グレイがモデルLに変身してチャージ攻撃を繰り出す。

「フリージングドラゴン!」

氷龍を召喚し、パンドラに向けて繰り出すグレイ。

「っ…」

「させないわよ!」

咄嗟に雷属性から氷属性に切り替えようとしたが、アッシュがチャージバスターを発射して妨害。

氷龍がパンドラに直撃し、弱点属性を受けたパンドラは全身が凍結して落下し、グレイはハルバードで追撃を加える。

そしてクロノフォスに変身し、チャージを開始する。

「させるか!」

クロノフォスの特殊能力を理解しているプロメテとパンドラはグレイのタイムボムの発動を妨害しようとするが、アッシュが割って入り、モデルPに変身するとクナイを投擲してプロメテとパンドラの妨害を阻止する。

「タイムボム!!」

「っ…しまった…!」

「体が…思うように…動かない…っ」

「これで終わりよ!」

ロックマン・モデルAに戻ったアッシュが二丁のレーザーを構えてショットを乱射した。

ギガクラッシュがプロメテとパンドラに直撃し、自己修復を遥かに上回るダメージを受けたことでついに二人は倒れた。

「(こいつらがアタシ達を見くびってなかったら、負けてたわ)」

正直勝てたのはグレイとの連携だけでなく、プロメテとパンドラが自分達を侮っていたからと言うのが大きかった。

もし再戦したら今度は油断せずに叩き潰してくるのは容易に想像出来た。

「(起き上がるんじゃないわよ…アタシ達も結構キツいんだから…)」

アッシュもグレイもそれぞれの武器を構えながら倒れているプロメテとパンドラに向ける。

しかし、二人の願いも虚しく、プロメテとパンドラは起き上がった。

しかし、受けているダメージの影響でまともに戦えるまで回復するまで時間がかかりそうだ。

「くそ…馬鹿な…俺達がこんな屑と失敗作に…!」

「…実力じゃあ、あんた達の方が圧倒的に上だったわ。でもアタシとグレイを見下し過ぎていたのがあんた達の敗因よ」

「ふざけるな…!まだ負けてはいない…!まだ俺達は戦える!!」

「いい加減にしろ!自己修復出来るからって無理をしたら死んでしまうぞ!それに、こんな戦いをこれ以上して何になるって言うんだ!!何の意味もないだろ!」

無理をして立ち上がろうとするプロメテとパンドラにグレイは思わず叫ぶ。

「…そうさ…この戦いに…この世界に…意味など無い!お前達も見てきたはずだ!」

「…イレギュラーが人々を襲い…その苦しみを…モデルVが吸収する……アルバートは…レギオンズを隠れ蓑に…適合者を選びだす…ロックマンを…生み出して…殺し合わせて…アルバートを…満足させるためだけの世界…」

「世界の全ては…アルバートが自分の計画のために用意した作り物だったって事なのさ!ロックマンが人々の進化した姿だと!?ふざけるなぁっ!作り物の英雄など…狂ったこの世界ごとぶっ壊してやるのさっ!」

プロメテの今まで内に封じ込めてきた激情を孕んだ怒声が響き渡った直後だった。

モデルVが反応し、プロメテとパンドラから負の感情のエネルギーが飛び出し、吸収されていく。

「「!?」」

「ぐああああああああっ!」

「きゃああああああっ!」

プロメテとパンドラの負のエネルギーは他の人々の比ではなく、この部屋に存在する数えるのも馬鹿らしいと感じる数のモデルVを全て覚醒させる程の物であった。

そしてモデルVに負のエネルギーを吸収されたプロメテとパンドラは倒れ伏してしまう。

「お…おい…これって…もしかして…!」

同じライブメタル…正確にはモデルVのテクノロジーが使われている関係でモデルVの変化を敏感に感じ取ったモデルAの声が震えている。

「全てのモデルVが…覚醒した…!」

アッシュの言葉と共に赤い髪の男が姿を現した。

「………プロメテ…パンドラ……君達の数百年分の怒り…悲しみ…苦しみ…憎しみ…そして…狂気…様々なロックマンと戦ったこのデータ…!確かに頂いたよ…!」

男の声にはアッシュ達には聞き覚えがあり、即座に男の正体を見破ることが出来た。

「「その声…まさか…!マスター・アルバート!」」

「じゃあプロメテ達が倒したのは…!?」

「あれはダミーだ。三賢人として働いてきた私のダミーボディだよ。私はDAN-000:オリジナル…この私こそ正真正銘、本物のマスター・アルバートだ!全て計画通りだ…!間もなくモデルVが融合を始める…!私が究極のロックマンとなって、この計画は完成する!」

衝撃の事実に誰もが唖然とする中、モデルVの共鳴のエネルギーによってアジトが崩壊を始めた。

「おい、ここも保たないぞ!早く脱出しようぜ!」

「「だけど…プロメテたちが…!」」

嫌いな二人だが、利用されるだけされて終わりというのがあまりにも哀れなのか、アッシュとグレイは脱出を躊躇する。

「何言ってんだ!そんな体でプロメテ達を抱えてなんて無理だろ!ここでお前らが死んじまったら誰がアルバートの野郎をぶっ飛ばすんだ!?」

「うっ…うう……プロメテ、パンドラ…!……ごめん…!」

「そ、そうだ!ヴァンは!?ヴァンはどこに!?」

「あいつなら大丈夫だろ!今はここを脱出するんだよ!」

アッシュ達が部屋を飛び出し、トランスサーバーのあった場所へと急いで逃げていくのであった。

「フッフッフッフッ…ハァーッハッハッハッハッ!」

「随分と楽しそうじゃないか?」

「何!?」

計画の達成とアッシュ達が逃げていく姿を見て高笑いをしていたアルバートが目の前に広がった紅によって吹き飛ばされていた。

「テレビで見た姿とは随分違うけど、テレビで見た姿より遥かに間抜け面だな。」

足を突き出した状態でアルバートを睨むのは、アッシュ達と別ルートで進んでいたヴァンである。

最も自分の計画の障害となる存在の登場にアルバートは少々の焦りを感じながらも立ち上がる。

「君は…破壊神のロックマンか…初めまして、君に会えて光栄だと言っておこう」

「そいつはどうも…」

少しの間だけ睨み合う両者だが、先に沈黙を破ったのはアルバートだった。

「そろそろ私は失礼させてもらうよ」

「逃げるつもりか?」

「計画の達成を目前にして君を相手にするような無茶はあまりしたくはないのでね。ウロボロスならばともかく、流石にモデルVの状態では君には勝てないのは今までのデータから承知済みだ。そこの二人は君に任せよう、私がいなければ究極のロックマンとなれたであろう君への御褒美だ。プロメテとパンドラを煮るなり焼くなり好きにするといい」

アルバートは転送の光に包まれて部屋を後にし、ヴァンは倒れ伏しているプロメテとパンドラの元に歩み寄る。

「話は途中から聞いていたけど…自業自得とは言え、お前達らしくない惨めな最期だな」

今まで自分達の前で狂気に身を任せて暴れていた二人がこんなに容易く倒れていることにヴァンは怒りもしなければ嘲笑もせずに二人を見下ろす。

「……何しに来たんだ…お前は…復讐どころか…それさえアルバートに利用されていた俺達を嘲笑いにでも来たのかぁ!?」

アッシュ達から受けたダメージと負のエネルギーを吸収されたことで身動き出来ないプロメテがヴァンに憤怒の形相を向けるが、それで動じる程に短い付き合いではないのだ。

プロメテとパンドラとの付き合いなど、ヴァンからすれば不本意極まりないが。

「そんなことするわけないだろ、お前ら兄妹みたいな性悪じゃあるまいし……これで最期になるからな。何だかんだで四年間もの付き合いだ。最期くらい憎たらしいお前達の顔を良く見てやろうと思っただけさ…俺もここを脱出する。お前達は俺達の家族やプレリーの姉さんを含めた…自分達の復讐のために傷付け、そして殺してきた人々の罪と一緒にこのアジトと運命を共にするんだな」

冷たく言い放ちながらヴァンはプロメテとパンドラに背を向けて部屋を出ようと足を一歩前に出した。

「待っ…て…」

「ん?」

「…っ…パンドラ…!?」

部屋を後にしようとしたヴァンはパンドラの制止の声に立ち止まって振り返る。

プロメテもまた、パンドラの行動に驚くが、次の言葉に更に驚くことになる。

「助け…て…」

「ほう?」

「パンドラ…何を言ってる…!?」

「死に…たく…ない…お願い…助けて…!」

意外そうにパンドラを見るヴァンと驚愕するプロメテだが、パンドラを見下ろすヴァンの目は氷のように冷たい。

「“助けて”…“死にたくない”…か…お前達は数百年の間、それを言ってきた相手をお前達の目的のために何人傷付けて殺してきたんだ?自分達が同じ立場になったら言うなんて虫が良すぎると思わないか?」

「プロメテ…お兄ちゃんだけでも…助けて…!」

「パンドラ…こいつに…そんなことを言うな…!」

冷たい目で二人を見下ろすヴァンと、せめて兄のプロメテだけでも助けて欲しいと懇願するパンドラ、そんなパンドラを止めようとするプロメテ。

三人の空気が重くなる中、部屋の崩壊が激しくなろうとしていた。 
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