FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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最悪の事態
前書き
今日は7月7日ですね。何の日かご存じですか?
尻冷「「七夕?」」
そうですね!!滅竜魔導士の日ですね!!
尻流「あぁ・・・なるほど」
冷温「無理矢理感半端ないな」
というわけで、今週はちょっと早めに更新です。
それでは・・・どうぞ!!
「全員を探す手間が省けたぜ」
そう言ったティオスの目を見て、この場に集まった全員が鳥肌が立ったのを感じた。この状況でも自らの勝利を信じて疑わない最強の敵に、飲まれそうになった。
「皆さん!!援護してください!!俺がメインで戦います!!」
そんな中、真っ先に手を挙げたのは水色の髪をした少年だった。彼は大切な人を立たせると、ティオスの前へと歩いていく。
「ふざけんなシリル!!俺もやる!!てか俺がやる!!」
しかし、それを聞いて黙っていられないのがこの男。ナツは炎を上げながら前にいる全員を押し退けていく。
「落ち着け、ナツ、シリル」
そんな中、冷静な物怖じで前衛へやって来る男。その魔力に2人の足が止まった。
「こいつに1人で勝つなんて無理だ。だが・・・」
ギルダーツは地面に手を当てると、ティオスの足元が粉々に砕ける。ギリギリで青年は回避したが、その魔力の高さを侮ることはできない。
「俺たち全員でなら、勝てるだろ」
ニッと笑ってみせた彼に2人が・・・他の魔導士たちも同調するようにうなずく。彼らは全員が魔力を次第に高め、敵の動きを一心に見つめている。
「全員でなら勝てる・・・ね」
ギルダーツの言葉を聞いてもティオスの余裕は崩れない。それどころか、彼は勝てると言われたことに少し苛立ちを感じていた。
「お前ら程度が何人集まろうが関係ない。俺が---」
グラッ
「??また?」
自身も戦いのために魔力を高めようと翼を広げた瞬間、先ほどのように体が微かに揺れた。だが、今度は特に風もない。訳がわからずにいると、視界の端に突っ込んでくる人影が入った。
「竜魔の・・・」
「火竜の・・・」
「「鉄拳!!」」
自身の異変に気を取られていたティオスは2人の竜の攻撃に反応が遅れてしまった。その結果、両者の攻撃をまともに受けてしまい、バランスを崩す。
「ポッチャリなめちゃいけないよ!!」
「ネ拘束チューブ!!」
バランスが崩れたタイミングでリズリーが重力変化の魔法を使いさらに追い討ちをかける。それに合わせてミリアーナがチューブで体を拘束しにかかる。
「封印の氷地獄!!」
しかし、ティオスは持ち前のパワーで無理やりに左腕を振るい、チューブと周辺にいた数人の魔導士を凍らせる。その中にはリズリーも含まれており、彼は重力の中から抜け出ることができた。
「竜魔神の・・・」
相手の猛攻が止まったそのタイミングで今度はティオスが仕掛ける。口へと魔力を集めていく彼を見て、全員が一斉に距離を開ける。
ダッ
そんな中、2つの影が他の者たちとは別の行動に出た。ティオスに対して距離を開けるどころか突っ込んでいくのだ。それに音で気がついた青年は、そちらの方向へと体を向ける。
「怒号!!」
三種の属性が混ざり合ったブレス。その絶大なる威力に大地が抉りながら迫る2人へと向かっていく。
「ソフィアが軌道をズラして・・・」
一列に並ぶ形で進む銀髪の少女と黒髪の女性。前にいる少女が向かってくるブレスに手を当て上空へと軌道を変えると・・・
「私が攻撃を入れる!!」
後方にいたリュシーが炎を腕に纏い、攻撃へと転じる。
「ファイアブレイク!!」
ガンッ
リュシーの《オ・マースアル》により周辺に爆風が立ち込める。ソフィアとリュシー・・・ようやく再会できた姉妹による完璧な連携が炸裂した・・・と思われた。
「さすが"破壊の女神"の異名を持っているだけある」
しかし、それすらもこの男には無意味だった。
「そんな・・・」
「お姉ちゃんの攻撃も効かないの?」
爆風が晴れると、リュシーの拳を右腕で受け止めていたティオスの姿が現れる。全くの無傷というわけではない。確実にダメージを与えることはできている。しかし、本来なら致命傷を与えられるだけの攻撃力を秘めているリュシーの魔法さえも、軽傷に止めているのだ。
「竜魔神・・・」
「!!」
自身の攻撃をぶつけるために至近距離に入ってしまったリュシー。そんな彼女目掛けてティオスは拳を振るおうとした。
「永久凍土!!」
放たれたカウンター。だが、それはリュシーに命中することはなかった。理由は単純、ティオスの魔法が炸裂する直前で、ディマリアが彼女の腕を掴み回避させていたのだ。
「助かったよぉ、マリー」
「私の魔法でも、数秒止めるのでやっとだ。次は確実にないな」
ディマリアはアージュ・シールによりリュシーを助けられる距離まで詰めてきていた。ただ、ティオスの魔力の前にはそれも数秒保てればかなりいい方。本来なら発動しても彼の動きが止まることなどありえないほどの実力差があるのだから。
「へぇ、やるじゃん。でもさぁ・・・」
足元で次の行動にいかしにて繋げるか判断に遅れたリュシーとディマリア。ティオスはそんな2人を仕留めようと足を振り上げる。
「その距離で俺に挑むのは無能すぎるよ」
目にも見えない速度で放たれた踵落とし。だが、その攻撃も突然生えてきた木によってあっさり阻まれた。
「大丈夫かね、リュシー」
「ウォーロッド・・・」
彼女たちを助けたのはイシュガルの四天王の1人ウォーロッド・シーケン。彼の魔法によりまたしても攻撃が不発に終わったティオスは、一度体勢を整えるために距離を開ける。
「その・・・さっきは・・・」
助けられた彼女は彼の姿を見て気まずそうな顔をする。2人とも生き返ったとはいえ、一度彼を殺してしまったのは彼女なのだから、それも無理はない。
しかし、ウォーロッドはそれを気にする様子は一切なかった。
「妹に会えてよかったのぉ、リュシー」
「・・・ありがとうございます」
それどころか、妹との再会を喜んでくれた彼に思わず涙が出そうになった。しかし、まだ戦いは終わっていない。それがわかっている彼女はそれを拭い、立ち上がる。
「ったく・・・雑魚のくせに時間をかけさせないでくれよ」
一度間合いを取ったティオスはそういうが、彼には本当はそんな余裕は全くなかった。理由は右肩に受けたダメージにある。
(カミューニの攻撃を受けた右肩がイマイチ動きが悪い。そっちを気にしすぎて反応が悪くなっちまってる)
本来なら問題なく対処できるはずの攻撃に全く反応が追い付かない。自分の能力の高さがわかっているだけに、それがますます歯痒く感じる。
「もう諦めろ、ティオス。この人数相手に1人で太刀打ちできるわけないだろ」
そう言ったのは彼と同じスプリガンの盾となっていたアジィール。人一倍戦いを好む彼からのそんな言葉にティオスは拍子抜けしてしまった。
「らしくないな、アジィール。善の心にでも討たれたのか?それとも・・・」
ティオスは目の前にいるアジィールを一瞥した後、周りにいる多くの魔導士たちに視線を移していく。
「また俺に殺されるのが怖くなったのかい?」
「!!」
最後の情けのつもりだった。アジィールは元々、ゼレフがアルバレス帝国を作るまで、西の大陸にある小さな国の王族の一族。それゆえに、彼に慈悲をかけてやったつもりだったが、それすらも目の前の敵には届かない。
「黙れ!!」
ティオスの言葉に激怒したアジィールは砂の魔法で彼に攻撃を加えていく。
「お前に慈悲の心を与えようとしたのが間違いだった」
「砂漠王と恐れられるお前が慈悲を与えるとは・・・死んで丸くなっちまったのかね」
ティオスは自分の状態が万全ではないことはわかっていた。それゆえに敵を挑発し、形勢逆転の糸口を掴むまでの時間稼ぎをしたかった。なので血気盛んなアジィールが前に出てきてくれたのは好都合といえた。しかし・・・
「氷魔の激昂!!」
「水流昇霞!!」
彼が我を見失う前に、背後から2人の攻撃が繰り出される。
「チッ」
思い通りの展開に持ち込めなかったティオスは舌打ちをしながらグレイとジュビアの魔法を難なく回避する。そちらに意識が向くと、その後ろからさらに2人の影が迫ってきていることに気が付いた。
「でも残念だ。影で俺に・・・」
運良く影で敵の動きに気付けたティオスはすぐさま振り変える。しかし、目に写った人物たちを見て動きが止まってしまった。
「天空甲矢!!」
「天空乙矢!!」
ウェンディとシェリアの連携攻撃。ティオスはそれに気付いていたにも関わらず、なにも対処をすることができなかった。彼は2人の蹴りを受けると、なす統べなく地面に倒れる。
「レオン・・・まだ良心が残ってるよね?」
「だから私たちに攻撃できなかったんだよね」
「っ・・・」
シェリアとウェンディが前に出てこれたのにはある確信があったから。それは、ティオスの中にまだレオンとしての良心があると判断したから。
「あたしはレオンが生き返るのに重要じゃないはずなのに、殺さなかった。それはあなたがレオンだからだよね」
今のレオンを取り込もうとした時、目の前にいたシェリアを殺すことなど彼には容易いはずだった。しかし、あえてやらなかったのだ。ここまで多くの人間を葬り去ってきた彼が見せた甘さ。それに気付いたから、2人は前に出てこれた。
「ラウもサクラも死ななかったよ!!」
「そういえば、ラウルには魔法もぶつけられてなかったのぅ」
ラウルとミネルバにも、2人の意見には心当たりがあった。シリルやローグのように、後々の自身のために残しているのではない。そこから逸れている人物たちも、仕留めきれていないケースが見受けられるのだ。
「やれやれ・・・勘違いも甚だしいな」
ついに敵の弱点を見つけたかに思えたフィオーレ軍だったが、ティオスはタメ息をつきながら立ち上がる。
「勘違い?」
「どういうこと?」
「言葉どおりの意味だ。俺がお前たちを殺さなかったのには、理由がある」
ニヤリと笑みを浮かべながら立ち上がるティオス。彼はシェリアたちを見据えながら、言葉を紡ぐ。
「お前たちは俺が神になる上でお前たちは決して邪魔になるような存在ではない。そう・・・」
ティオスはそう言うと、手をある人物へと向け魔法を放つ。
「あいつらみたいにな!!」
ティオスはそう言って三種の属性の魔法をシリルとナツ、2人のドラゴン目掛けて放つ。しかし、それはあっさりと2人にも・・・周辺にいた魔導士たちにも回避されてしまった。
「動揺が透けて見えるぞ!!レオン!!」
交わしたシリルは速度を上げてティオスへと接近する。彼は水と風を足に纏わせると、勢いそのままに彼の腹部へ飛び蹴りを放つ。
「くっ!!」
それを回避することはできなかったティオスは後方へ体が流れる。しかし、シリルはそのチャンスをみすみす逃すようなことはしない。
「お前は悪魔になんかなりきることはできない!!帰ってこい!!レオン!!」
両手を合わせてそこに魔力を集中させる。それは彼が持つ魔法の中でも、最大の威力を持つ魔法。
「天竜水!!」
目と鼻の先にいたティオスに彼のそれを回避する術などない。あっという間にシリルの攻撃に飲み込まれたティオスは魔法と共に飛ばされていく。
(図星を突かれちまったな・・・ぶっちゃけシェリアたちを最後にどうするかはまだきめてなかったんだよな・・・)
天竜水に飲み込まれたティオスは飛ばされながらも、頭の中では次の策を講じていた。
(ラウルを仕留めきれなかった時に気付いたが、俺じゃあシェリアたちを殺すには至らない。しかしあいつも殺さないと俺の目的は果たせない)
シェリアたち多くの時間を過ごしてきた人物だけは守りたい気持ちと全ての人間を殺したいと言う欲望から来る両刀論。それが彼の心の中にあり、この最後の場面で押される展開を作ってしまっている。
(このままじゃ雑魚共にやられちまう。何か・・・お?)
格下相手にこれ以上の失態は許されない。ティオスはそれを打破する手段がないか考えていると、あるものが目に入る。
「こいつは嬉しい誤算だな」
そう呟いたティオスはその人物へと手を伸ばす。
「これで俺の勝ちだ、シリル」
シリルside
天竜水に飲み込まれ吹き飛ばされていくレオン。それを見送る俺たちは、次の攻撃に備え体勢を整えていた。
「着地したタイミングを狙う。私に続け!!」
エルザさんがレオンの着地のタイミングで一斉攻撃に出るため天輪の鎧へと換装する。
俺ももちろん攻撃に出る準備は整っている。今にでも動き出せるというその時、レオンが何かに手を伸ばしているのが見えた。
「しまった!!」
それを見た途端、カミューニさんが突然叫んだ。訳がわからずそちらを見ると、彼は合図を待たずに飛び出してしまう。
「おい!!カミュ!!」
「おめぇらはそこで待ってろ!!来い!!ジェラール!!」
「え!?」
ラクサスさんが彼を制止しようと声を出すが、すでに魔法の力も使いトップスピードに入っているカミューニさんは止まることなく突き進む。しかも、指名されたジェラールさんも何がなんだかわからずに動き出せないほどの速度で進んでいるのだ。
「さっき言ってた最悪の事態が起きる!!早く来い!!」
「最悪の・・・!?」
その声を聞き、ジェラールさんは一瞬眉間にシワを寄せたが、何かに気付くと流星で急加速。一気にレオンとの距離を詰める。
「なぜ先に言っておかなかった!!」
「言ったらビビって動けなかったろ?」
「それはそうだが・・・」
横並びになりながら突き進む2人。訳のわからなかった俺たちは呆然としていたが、動き出すべきかと2人に続こうとした。
「来るな!!シリル!!」
「!?」
しかし、カミューニさんのその言葉で動くのをやめる。
「お前らは次に備えて待ってろ!!」
「ここは俺たちが何とかする!!」
それだけ言って尚も加速していく2人。彼らが何をしようとしているのか、全く訳がわからない。
「俺がティオスを突き放す」
「俺は奴にトドメを刺す!!」
互いの顔を見て頷いた2人。彼らはレオンにまもなく到達するところまで来た。しかし・・・
ガシッ
伸ばしていたレオンの手を最初に握ったのは、地面に伏していた人物だった。
「君が生きててくれて嬉しいよ、天海」
「無駄話をするな、まずはあの2人を殺ってこい」
レオンの手を掴んだのは俺が倒したはずの天海だった。彼はレオンの手を取った勢いを生かすため、体を半回転させながら迫ってきていたカミューニさんとジェラールさん目掛けて彼を投げる。
「「くそっ!!」」
目の前に飛んできたレオンを見て2人は互い足を出し、それを互いに蹴り出して横へ飛ぶ。双方ともに蹴りを放った形になったため、レオンの攻撃範囲から逃れることができた。
「そんな・・・なんで生きて・・・」
しかし、それよりも俺の中には大きな動揺が走っていた。理由は単純、俺が仕留めたはずの天海が、まだ生きていることに驚愕させられたからだ。
「シリル・・・お前は俺に悪になりきれないと言ったな?」
カミューニさんとジェラールさんを逃したものの、レオンには一切動揺が見られない。その理由は間違いなく、彼の後ろにいる東洋の衣服に身を包んだ男だろう。
「その言葉、そっくりそのまま返してやるよ」
「っ・・・」
ギュッと奥歯を噛み締める俺。天海という圧倒的な存在を前に、フィオーレの魔導士たちに動揺が広がっていた。
後書き
いかがだったでしょうか。
皆さん死んだと思っていたことでしょう、天海さんの復活です。ちょっとシリルvsティオスの邪魔なんで一時的に退散してもらってただけなんですよね。
これでついに最終局面一歩手前にやってきました!!←まだ最終局面ではない
次からはもっと話が進んでいくと思います。ぜひよろしくお願いしますm(_ _)m
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