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レーヴァティン

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第百六十話 伊勢の神託その九

「しかしだ」
「それでもたいか」
「洋酒は違うな」
「あれなのよね、ワインもウイスキーもね」
 奈央がそうした酒の話をした。
「お菓子にも合うのよね」
「そうだな」
「私としては赤ワインが特にね」
 菓子に合うというのだ。
「洋菓子だけれど」
「ケーキやアイスクリームにな」
「こっちの浮島にはないけれどね」
「殆どな」
「氷菓子という名前はある」
 この言葉はあるというのだ。
「その言葉の通りにな」
「あるにはあるけれど」
「殆どない」
 そうした状況だというのだ。
「それは事実だ」
「そうなのよね」
「なければ作る様にするだけだが」
「ワインと同じで」
「だが今はな」
 どうしてもというのだ。
「それはだ」
「まだね」
「牛乳と砂糖と卵が必要でだ」
「凍らせることと」
「この浮島はまだ牛乳が少ない」
 酪農をはじめたばかりだ、それならば牛乳が少ないことも当然のことだ。
「だからな」
「アイスクリームにしてもね」
「ケーキもだ、クリームが必要になるが」
 ただしこれはケーキによるが英雄はおおよそとして話した。
「そのクリームは牛乳から作るのだから」
「牛乳が沢山必要ってことで」
「今は無理だ」
「そっちもこれからね」
「そうだ、ここで俺は言うが」
 英雄はさらに言った。
「俺だけ食う様なことはな」
「嫌いよね」
「そんなことはしないしだ」
 それにというのだ。
「させない」
「そうよね、あんたは」
「誰もが美味いものを食える様になってだ」
 それこそというのだ。
「価値がある」
「そうよね」
「アイスクリームもケーキも然りでな」
「そして他の食べものにしても」
「そうあるべきだ、間違っても俺一人が常に満腹になるまで食ってだ」
 そうしてというのだ。
「民は餓えている」
「そうした国にはしないわね」
「それは問題外だ」
 政としてとだ、英雄は言い切った。
「そうした国もあるがな」
「まあそうした国を反面教師として」
 謙二はうどんを食べてから酒を飲みつつ話した。
「治めていきましょう」
「それがそのまま国の力になるしな」
「若し軍勢が強くとも」
「民が餓えているとな」
「そうした国が満足に戦えるか」
「一戦や二戦は出来るが」
 それでもというのだ。
「痩せた身体で全力で相手を殴る様なものだ」
「筋肉は落ち骨も脆くなっている」
「そんな身体で戦ってもな」 
 英雄は国を人体に例えて話した。
「そうしてもだ」
「長くは戦えません」
「むしろ筋肉が千切れ骨が砕けてだ」
「自滅します」
「そうなるものだ」
「民が餓えていれば」
「論外だ、聖徳太子は民が餓えることを危惧されていた」
 厩戸皇子と呼ばれるこの方はというのだ、英雄はうどんを食べ酒を飲みつつその話を落ち着いた顔でしていった。 
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