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ヘタリア大帝国

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TURN42 雨蛙その五

「君は幼い頃何かあったか」
「事故で。少し」
「怪我を負ったのか」
「死にそうになりました」
 そうしたことがあったというのだ。
「あと一歩というところで」
「そうだな。だが君は一命を取り留めたな」
「何とか」
「君がその事故を受けた場所は水の傍だったか」
「渡っていた橋が急に崩れて川に落ちました」
「それで死にそうになったか」
「溺れて。危ういところでした」
「その時だ」
 まさにだ。そこでだというのだ。
「君はその神に助けられたのだ」
「蛙神様にですか」
「蛙神は君のことをいつも見守っていたのだ。国民である君をだ」
 この辺りはベトナムと同じだった。国家である彼女と。
「そして君を助ける為に憑いたのだ」
「じゃあ蛙神様は私の」
「そうだ。守護神だ」
 それになるというのだ。
「それで君に何かあるとだ」
「雨が降る様になったんですか」
「蛙神に悪気はない。何しろ雨を司る神だからだ」
 それ故にだというのだ。雨を司る神だからこそ。
「雨を降らせてしまうのだ。しかしだ」
「悪気はないんですね」
「そのことは間違いない。しかし私は今蛙神と話している」
 心と心でだ。そうしてだった。
 そのうえでだ。フェムにこう話したのである。
「これからは君が望む時に雨が降る様にしたいと言っている」
「そうなんですか」
「これまでは君の気持ちを誤解していたらしい」
「誤解?」
「今までは君が感情が昂ぶった時に雨が降っていたな」
「それで困っていました」
「それは君が雨が欲しい時だと思っていたそうだ」
 神も誤解をする。それは蛙神も同じだというのだ。
「だがこれからはだ。君が確かに雨が欲しいと思った時にな」
「その時だけなんですね」
「降る様にするそうだ」
「私、護ってもらってたんですね」
 フェムが今言うのはこのことだった。
「祖国さんだけじゃなくて神様にも」
「そういうことになるな」
「そうなんですか」
 感概を込めた口調でだ。フェムは言う。
「私、雨のことがずっと嫌でした」
「だが今はどうだ」
「有り難いと思いだしています」
 今はそうだというのだ。
「護ってくれてますから」
「そうか。そう思うか」
「私、不幸じゃなかったんですね」 
 次第にだ。フェムの顔が泣きそうなものになってきていた。
「皆さんに護ってもらっている。幸せな娘だったんだね」
「そうなるな。それではな」
「私、もう悲しんだりしません」
 フェムは涙を堪えて柴神に言った。
「これからは楽しく生きていきます」
「私もいる、共に行こう」
 ベトナムもフェムに言う。そうした話をしてだった。
 彼女は自分のことを知ったのだった。そのうえで前を見られるようになった。
 ベトナムもフェムも完全に太平洋軍の一員となった。そのうえでだった。
 太平洋軍は次の戦略目標にかかっていた。その対象はインドだった。
 マレーに戻していた艦隊も修理工場と獅子団の面々の頑張りで早期に修理されてそのうえでだった。
 次々とインドの諸星域に向かう。その中でだ。
 東郷もインドに向かう。彼はセイロンに向かっていた。その中で秋山に言うのだった。
「セイロンはそれ程敵は多くなかったな」
「はい、現地の艦隊が少しいる程です」
「そうだったな。エイリス軍はいないか」
「前まではいましたが」
「今は撤収しているか」
「ベトナムの敗戦を受けて戦力を集結させている模様です」
 そうだというのだ。
 
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