燻製にしてみる
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第一章
燻製にしてみる
妖怪達の中でも捻くれ者として知られている天邪鬼だがこの妖怪にも趣味があり鉱物がある、それは何かというと。
燻製作りであり燻製が好物だ、それで肉や魚はやたらと燻製にする。
それで今は釣った鮎達を燻製にしている、彼の友人である河童は彼が自分の家の燻製焼き器で鮎を燻製にしているのを見つつ言った。
「鮎も燻製にするのかい?」
「これが美味いからな」
それでとだ、天邪鬼は河童に燻製焼き器の前で答えた。
「だからだよ」
「それでかい」
「何でも燻製にするといいだろ」
天邪鬼は河童にこうも言った、山の中の彼の家の外れの燻製焼き器の前で。
「保存も利くだろ」
「それはそうだな」
河童も納得することだった。
「長く保てるな」
「だからおらもな」
「燻製を作ってか」
「いざという時に備えていてな」
そしてというのだ。
「それで食べてもな」
「そうしてもかい」
「美味いからな」
「それでかい」
「そうだよ、おらは燻製だよ」
こう言うのだった、少し意地悪そうな顔をして子供の着物を着た小鬼の姿で。
「それをいつも作ってるんだよ」
「そうしていざという時にも備えて」
「食べてるんだよ」
「成程な、ただな」
「ただ?どうしたんだい?」
「あんた最近人間の世界で出て来た食いものにもそうするのかよ」
河童は腕を組んで天邪鬼に尋ねた。
「缶詰とか冷凍食品とかな」
「何か人間も色々食う様になったよな」
「ああ、そっちもかよ」
「冷凍食品は溶かしてな」
「そうしてかい」
「燻製にするさ、缶詰のものはな」
そちらはというと。
「そのまま開けてな」
「食べるのかい」
「おらだってな」
「何だ、燻製以外のも食うんだな」
「当たり前だろ、インスタント食品もな」
こうしたものはというと。
「ちゃんとお湯に入れてな」
「粉のだし汁の素を入れてだな」
「スープっていうらしいがな」
「それで食べてるか」
「煮てな」
「何でもそうする訳じゃないか」
「だから燻製に出来るものならだよ」
そうしたもの限定でというのだ。
「常識の範囲でな」
「成程な」
「おらだってそうさ、じゃあ鮎の燻製が出来たらな」
「食うんだな」
「ご飯によく合っていて美味いぜ」
「鮎は塩焼きにして柚子の汁かけるのがいいだろ」
「いやいや、燻製だよ」
そこは譲らない天邪鬼だった、彼はとにかく燻製に出来るものなら何でもそうした。そしてその中でだった。
味噌や沢庵を人間の街で買って手に入れた時に彼は満面の笑みを浮かべて一緒にそれを人間の店で人間に変装して共に行った河童に話した。
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