問題提起
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第一章
問題提起
この時毎朝新聞の社員達は暗い顔をしていた、そのうえで社内で話をしていた。
「発行部数よりもな」
「そうだ、我々の主張が顧みられなくなっているな」
「革新勢力が弱っている」
「そのことは明らかだ」
「この国は豊かになってだ」
そうしてというのだ。
「資本主義がいいとなっている」
「与党の政策も安定している」
「それにソ連の実態がわかってきた」
「国民は資本主義に馴染んできている」
「だから我々の主張はだ」
革新系のそれはというのだ。
「顧みられなくなっている」
「野党の選挙での敗北も続いている」
「これはまずいぞ」
「この状況が続けば我々は追い詰められる」
「勢力を衰えさせる」
「よくない状況だ」
「何とかしなければならない」
自分達の勢力が衰えている、このことを自覚して言うのだった。
「だがマルクス主義を言ってもな」
「国民は振り向かない」
「これまでは違ったが」
「ソ連の実態もわかってきた」
「元々あの国への反発も根強かったが」
「最近はより酷くなった」
そのソ連への反感がというのだ、国民の中のそれが。
「ソ連への反感が強まるとな」
「我々も困る」
「共産主義への反発が強まっている」
「この状況をどうするか」
「共産主義の美点を語っても効果がない」
「もう国民は振り向かない」
「ではどうすればいい」
共産主義の喧伝、これまでの手法が通用しないならというのだ。
「どうしてこの現状を打破すべきだ」
「与党や保守勢力のさらなる躍進をどう防ぐべきだ」
「我々の勢力回復の為にどうすべきだ」
「何をすればいいのか」
彼等は悩んだ、その中で。
ふとだ、ある社員が言った。
「閣僚や議員のあの神社への参拝はどうだ」
「参拝?」
「あの神社へのか」
「戦没者供養の為のな」
それのというのだ。
「そこを衝くか」
「どう衝くんだ」
「あの神社への参拝について」
「どうして衝くんだ」
「わからないが」
「あの神社には戦犯も祀られている」
その社員はこのことを指摘した。
「戦犯の霊に参拝するなぞいいのか」
「戦争責任のこともあるしな」
「そこを衝けるか」
「そう言えば使えるな」
「与党や保守勢力への攻撃に使えるぞ」
「そして政教分離もある」
その社員はこのことも指摘した。
「これは衝けるぞ」
「よし、与党への攻撃材料にするか」
「保守勢力に対しても」
「社を総動員してキャンペーンをするか」
「新聞だけでなく雑誌でもだ」
「社の総力をかけて行うか」
その神社への参拝、閣僚や議員のそれを戦争犯罪への問題や政教分離の面から問題であると言おうというのだ。
そして実際にやった、新聞や雑誌だけでなく系列会社であるテレビ局まで使ってそうした。自分達に近い知識人や野党の議員達にも言わせた。
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