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戦国異伝供書

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第九十三話 安芸の掌握その六

「どうもな」
「突き進む御仁であられ」
「止まることはない」
「そうした方ですな」
「そして策に弱いであろうな」
 元就は目を光らせてこうも言った。
「少し考えるか」
「と、いいますと」
「ことを構えた時は」
「その時は、ですか」
「前の戦の時と同じくそこを衝くか」
 こう言ってだ、元就は戦の用意に本格的に入った。そしてその後で妻に対してこうしたことを言った。
「また戦になる」
「それではですね」
「うむ、近いうちに出陣する」
 妻にこのことを話した。
「そして家のことはな」
「はい、お任せ下さい」
 妻は元就に確かな声で応えた。
「殿がおられぬ間は」
「宜しく頼むぞ」
「それでは」
「そなたがおれば心配はいらぬ」
 元就は笑ってこうも言った。
「家のことはな」
「私が行うからですか」
「間違うことはないからな」
 家のことでというのだ。
「だからな」
「それ故に」
「うむ、家のことはそなたに任せ」
 そしてというのだ。
「わしは安心して出陣する」
「そしてですね」
「必ず帰って来る、そしてな」
「戻った時はですね」
「また宜しく頼む」
「承知しました」
「その様にな、してじゃが」
 元就は妻にこうも言った。
「子供達であるが」
「皆すくすくと育っていますね」
「それも何よりじゃ、子があってこそじゃ」
「毛利家も栄えます」
「二郎を吉川家、四郎を小早川家に入れたが」
 それに足らずとだ、元就はさらに話した。
「穂井田家にもな」
「入れたいですか」
「そうして他の家をじゃ」
「毛利家に入れていきますか」
「そうする、謀よりもな」
「そして戦よりも」
「その様にしてじゃ」
 他の家に子を入れてというのだ。
「組み入れていくのが一番じゃ」
「だからですね」
「これからもな」
「子供達は欲しいですか」
「何よりも可愛い子達じゃ」
 元就は親の顔で笑って述べた。
「だからじゃ」
「一人でも多くですね」
「欲しい」
 こう言うのだった。
「だからお主にはこれからもな」
「承知しております、元気な子を産んでいきます」
「宜しく頼むぞ」
「それでは」
「まさに子はかすがいじゃな」
「左様ですね」
「その子達が毛利家の柱にもなるしな」 
 それだけにというのだ。 
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