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楽しく働けど

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第五章

「じっくり休みなさいよ」
「えっ、何で休むの?」
「あんたお正月もゴールデンウィークもお盆もないでしょ」
 そうした時期もというのだ。
「いつも働いてるじゃない」
「お店いつもやってるし」
「それでも正社員だし有給あるでしょ」
「そんなの使わないし」
「使いなさい、とにかくね」
「有休をなの」
「取って」
 たまにはというのだ。
「それでよ」
「休めっていうの」
「本当に身体壊すわよ」
 そうなることを言うのだった。
「本当にね」
「そうなるからなの」
「幾らお仕事が合っていて楽しく出来ても」
 それでもというのだ。
「いいわね、たまにはね」
「休むことなの」
「そうよ」
 絶対にというのだ。
「若くても無理は禁物よ」
「ちゃんと身体にいいもの食べてるよ」
「お野菜もお肉もよね」
「お魚もね」
 麻衣は好き嫌いが殆どない、ブルーチーズは匂いが駄目だがそれ以外は殆ど食べる。大好物はサラダと鮭のムニエルそれに豆腐だ。
「食べてるけれど」
「それでもよ、ずっと身体動かして寝てなかったら」
 それならというのだ。
「疲れが溜まる筈だから、本当によ」
「たまには休めっていうの」
「時々よ、いいわね」
「心配し過ぎよ、大丈夫よ」
 麻衣はこの時も明るく笑って言うだけだった、そして。
 この日は寝たが次の朝だった。
 優子は朝起きてリビングに行くと母にこう言われた。
「麻衣ベッドから出られないって言ってるのよ」
「遂に過労が来たの?」
 優子は言わんこっちゃないと思いながら母に言葉を返した。
「昨日言った途端じゃない」
「身体がしんどいって言うから風邪かって思って体温計で測ったらね」
「風邪ひいてたのね」
「熱が三十九度あるのよ」
「それすぐに病院連れて行った方がいいわよ」
 優子は言わんこっちゃないという感情を顔にも出して言った。
「全く、今日私休みだから」
「病院に連れて行ってくれるの」
「車でね、放っておいたらあの娘行かないか自分で運転して行くから」
「寝てたらすぐに疲れ取れるとか言ってね」
「それか自分で行くから」 
 妹の活動的な性格から言った。
「すぐにね」
「連れて行ってくれるのね」
「そうするわ、朝のうちに」
「お母さんが行こうと思ったけれど」
「いいわよ、私が行くわ」
 こう言ってだった。
 優子は麻衣を午前中のうちに病院に連れて行った、妹は普段の元気さはなく完全に打ちのめされていた。そして。
 診察の結果わかったことは。
「あんた五日間ずっと絶対安静だからね」
「インフルエンザなんて」
 妹は後部座席から運転する姉に言った、診察から帰る車の中でのことだ。
「まさかね」
「だから言ったでしょ、無理するとね」
「身体壊すのね」
「インフルエンザも危ないけれど」
 下手をすると死ぬ病気であることから言う。
「もっとね」
「酷いことになるのね」
「あんた今かなり辛いでしょ」
「もう死にそうよ」
 高温と咳と全身のだるさによってだ。
「ずっと風邪一つひかなかったのに」
「だから丈夫でもよ」
「無理し過ぎたらいけないのね」
「そうよ、これに懲りたらね」
 それならというのだ。 
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